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自分が創った作品。質より楽しむ事がモットー。ショートショート・短編小説
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#シロクマ文芸部

布団から 【シロクマ文芸部】

布団から 【シロクマ文芸部】

布団からポン!と音をたて、何かが飛び出した様な気がした。

「ヒャッ」その音に思わず声を出し飛び起きたが特に変わった所はない。寝ぼけていたのだろうかともう一度布団に寝っ転がった。

「え?」

熱が下がったばかりで目が霞んでいるのかと、ゴシゴシこすってみるが確かにそれはある。天井に白いものが浮いているのだ。それは雲や綿菓子の様で、ただふわふわと浮いている。

「なんだ?」

訝りながらも、ただもこ

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誕生日がキライ #シロクマ文芸部

誕生日がキライ #シロクマ文芸部

誕生日、だれにとってもハッピーな1日、のはず。

でも私はこの日が嫌い。

0時過ぎると、競う様に送られてくるおめでとうメッセージ

バカみたい、本当におめでとうなんて思ってるの?

私も最初の頃は送っていたよ、面白かったし

だけど段々、誰が一番遅かったとか、誰はくれなかったとか、みんな文句言われない様に、今日は誰かの誕生日じゃないかって必死になって。

くだらない、それが目的じゃないでしょ

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りんご箱の妖精 #シロクマ文芸部

りんご箱の妖精 #シロクマ文芸部

「りんご箱の妖精がもうすぐきてくれるわ」
「ハイハイ、そうですねー」
部屋の中から声が聞こえてくる。

「こんにちは」
ドアを半分開けて挨拶すると、看護師がテキパキと仕事をしていた。
「もう終わりますから待っててくださいねー」
そう言われしばらく部屋の外で待っていると、看護師が出てきて声をかけてくれた。
「お待たせしました。春子さんのお孫さん?」
はいと答えるとニコッと笑って話し始めた。
「おばあ

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月めくり #シロクマ文芸部

月めくり #シロクマ文芸部

「月めくり」表紙にそう書かれたノートが古い鞄の中から出てきた。「日記か何かだろうか?」最初のページをめくってみると、そこには詩のようなものが書かれていた。

「これもよろしいですか?」浩二は急に声をかけられ、慌ててノートを自分のリュックにしまい、お願いしますと返事をした。数年前に亡くなった大叔父、祖父の弟には家族もなく、住んでいたマンションは父親が管理していた。どうやら変な死に方をしたようで、気味

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【短編小説】凛とした秋の空

【短編小説】凛とした秋の空

「秋が好き‥‥」

後ろの席で机に突っ伏して寝ている秋に向かって、聞こえるか聞こえないか位の小さな声で空がささやいた。

「2人とも、まだいたの?」空が驚いてドアの方を見ると、隣のクラスの凛がのぞいていた。
「あ、うん、秋が寝ちゃって‥秋、凛が来たよ」そう言って肩を揺すると、秋は体を起こし眠そうにあくびをした。
「もう部活始まってるよ」凛がそういうと秋は伸びをしながら立ち上がった。
「今日は外走る

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ヒマワリへ

ヒマワリへ

2028年に打ち上げられた「気象衛星ヒマワリ10号」には、AI.人工知能が搭載された。

運用が開始されてから10年近く経った頃、地球に向かう彗星が発見された。衝突を避けるために、ミサイルや核兵器などで消滅させる方法が検討された。

そのときに名乗りをあげたのが、気象衛星ヒマワリ10号だった。

『私がやりましょう。その代わり、決められた軌道を外れること、運用終了予定の日まで仕事を続けることができ

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