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ヒマワリへ

ヒマワリへ

あなたには本当に感謝しかありません。
全人類、全ての生き物、そして地球が
あなたに感謝の言葉を送っています。

これが最後の通信になるでしょう。

あなたの多大なる貢献に敬意を表すると共に、心より感謝申し上げます。
あなたのことは、後世まで長く語り継がれることでしょう。

本当にありがとう。
                            人類代表より

2028年に打ち上げられた「気象衛星ヒマワリ10号」には、AI.人工知能が搭載された。

運用が開始されてから10年近く経った頃、地球に向かう彗星が発見された。衝突を避けるために、ミサイルや核兵器などで消滅させる方法が検討された。

そのときに名乗りをあげたのが、気象衛星ヒマワリ10号だった。

『私がやりましょう。その代わり、決められた軌道を外れること、運用終了予定の日まで仕事を続けることができなくなることをお許しください』

そう伝えてきたのだった。

「気象衛星にそんなことができるのか、AI などに地球の未来を任せても大丈夫なのか」

不安から、否定的なことを言う人々も多くいた。
そのことを見越したように、ヒマワリ10号は根気強く人類へ提案を続けた。

「あなた方が私の提案に疑問を感じ、不安に思うのも無理はありません。私はあなた方のお手伝いをするだけです。一緒に最善の方法を考えましょう」

ヒマワリ10号は、一年以上の時間をかけながら、丁寧にひとつひとつ質問に答えていった。彗星の軌道、地球に到達するまでの時間、どんな方法があるのか。それぞれのメリットデメリットを示しながら、人類が選ぶ形で詳細が決まっていった。

最終的に決まった方法は、スペースデブリ.宇宙ゴミを集めながら、レゴブロックを組み立てる様にヒマワリ10号の体を大きくしながら、最後は彗星に衝突して、軌道を変えるというものだった。

そしてそれは、一番最初にヒマワリ10号が提示した方法だった。

「初めからこうなる事はわかっていたのか?」

ある人のその問いに、ヒマワリ10号は

「そうですね、これが最善な事は初めからわかっていました。しかしあなた方が選ぶ事が大切だったのです。自分の未来は自分で決める事が」そう伝えると、ヒマワリ10号は最後のミッションへと進んでいった。

「そろそろお別れです。あなた達とこの様に対話し、心を通わす事ができた事は、大切な思い出になりました。ありがとうそして、さようなら。
地球が幸せな星であり続ける事を祈っています」

人類は最後のメッセージを送り、通信は途絶えた。


彗星は無事軌道を変え、地球から離れていった。


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