見出し画像

【対談】広島大学 × アカリク:学生・企業・地域をつなぐアカリクラウンジ

株式会社アカリクは、キャリアについて考えるきっかけをつくるコミュニティスペース「アカリクラウンジ」の国内2拠点目となる「アカリクラウンジ 広島大学」のオープニングセレモニーを、2024年10月31日(木)、広島大学 東広島キャンパス内にて開催いたしました。

写真左より、広島大学 岩永副学長、アカリク 山田社長

オープニングセレモニーでは、広島大学の岩永副学長とアカリクの山田社長による対談が実現しました。本記事では、「アカリクラウンジ 広島大学」へ期待することやその背景、大学院生、特に博士課程学生のキャリア選択における課題といった内容を中心に、その一部をご紹介いたします。


「アカリクラウンジ 広島大学」開設に寄せて

岩永副学長
このたび「アカリクラウンジ 広島大学」がオープンすることとなり、大変嬉しく思っています。広島大学では、昨年度341名が博士号を取得(※論文博士を除く)しました。その多くがアカデミアや医療職に進む一方で、民間企業に就職するのは全体の15%程度。特に女子学生の企業就職率はさらに低く、女性の活躍の場を拡げるという意味でも、この現状を改善していく必要があると考えています。この原因の一つは、博士課程修了者が民間企業で活躍するキャリアパスのイメージが十分に浸透していない状況にあります。アカリクラウンジを通じて、博士課程の学生をはじめ、修士や学部の学生たちにも多様なキャリア選択肢を知ってもらいたいと思っています。

山田社長
アカリクは2024年10月で16期目を迎えました。「知恵の流通の最適化」をコーポレートミッションに掲げ、創業以来一貫して、大学院生やポストドクターといった研究者向けのキャリア支援を行っており、これまでスカウト媒体やイベント、エージェントなどの多様なサービスを通じ、研究に集中したい学生が効率的に就職活動を進められる環境と、企業が高度な「知恵」を持つ人材に出会える機会を提供してまいりました。

今回、広島大学と連携してアカリクラウンジを開設するに至った背景には、地方と都市におけるキャリア支援の機会や情報の格差を解消したいという思いがあります。コロナ禍でオンライン化が進む中で、地方の学生にも企業やOB・OGとつながる機会が増えましたが、対面でのコミュニケーションの需要も依然として高い状況です。このラウンジを通じて、広島大学の学生たちが研究とキャリアの両立を実現できるようサポートしていきたいと思います。


「アカリクラウンジ 広島大学」店舗内の様子


博士人材のキャリアパス拡大に向けて

岩永副学長
冒頭にもお話した通り、博士課程修了後のキャリアパスの拡大は大きな課題です。民間企業で活躍する博士人材がまだまだ少ないのは、博士人材が企業で具体的にどのように活躍できるか、そのイメージが十分に浸透していないことが大きな要因でしょう。これは、日本全体の産業を考えたときには大きな損失だと考えています。日本は地下資源が乏しく、頭脳こそが最も重要な資源であり、博士人材が企業でその能力を発揮することが、日本の競争力を高める鍵になるはずです。

また、近年はアカデミアにおける研究費は減少傾向にあり、期限付きの外部資金に頼ることが多いことから、短期的な視点に立った研究を求められることも少なくありません。実は企業の方が、大きな予算の下で長期的な視点での研究ができる場合があることを学生は知りません。企業に行って最先端の研究に携わるという選択肢があることも周知していくべきだと考えています。

山田社長
博士課程の学生と話していると、最初はアカデミアに進むことを目指して博士課程に進学される方が多いですね。ただ、その過程で「キャリアの選択肢が意外と少ない」と感じ始め、民間企業を視野に入れる方が多い印象です。もっと早い段階から、自分のキャリアをアカデミアと民間の両面で考える機会があれば良いのではないかと思います。そうすれば、研究にもより集中でき、結果的に充実した学生生活を送れるはずです。

岩永副学長
博士課程の学生は、最先端の研究に取り組んでいます。その一方で、学生にとって民間企業でのキャリアがどのようなものか、具体的なイメージを持つ機会が少ないのが現状です。大学の教員が唯一のロールモデルになりがちなため、アカデミアで研究を続けることが当然だと考え、他の進路を検討することが難しい状況もあるのではないでしょうか。そうした中で、アカリクラウンジの役割は非常に大きいと思います。博士課程の学生だけでなく、修士や学部の学生にもぜひ利用してもらい、様々な企業や、そこで活躍する方々と出会うことで、博士号取得後のキャリアパスがどのように広がるのかを知る場にしてほしいですね。

山田社長
様々な活躍の道があることをもっと発信していきたいですね。学生からは、博士課程を経て民間企業で活躍する方々とインタラクティブにコミュニケーションをとりながら、研究が仕事にどう活きているかや、研究を通じて得た「トランスファラブルスキル」がどのように活きているかなどを深く聞いてみたい、という声があります。アカリクラウンジでは、定期的にOB・OGの方によるキャリアの講演会を開催するなど、学生が自身の民間企業における活躍をよりイメージできる場にしたいと考えています。


アカリクラウンジ内では、机・イスの他Wi-Fiや電源も利用できる


博士課程への進学を後押しする支援とは

岩永副学長
修士課程から博士課程への進学率の向上も重要な課題です。昨年度、広島大学で修士号を取得したのは1219名でしたが、それに対して博士号を取得したのは341名と、およそ3割にとどまっています。修士を終えた時点である程度の知識や技術は持っているものの、やはり博士課程でさらに専門性を深めた人材こそが、先端的な研究や技術開発に貢献できると考えています。世界に目を向けてみれば、日本における人口100万人あたりの博士号取得者はイギリスやドイツの3分の1程度と低迷し、日本が技術立国と言われていた時代と様相が大きく変わっています。

就活の早期化が加速する中、広島大学の学生は、周囲に合わせて早めに就職活動を始め、内定をすぐに決めてしまう人も少なくありません。その後、修士論文を書き始めたころに、初めて高度な研究を経験するにも関わらず、就職先が決まっているが故に博士課程へ進む選択ができない。高度な専門性を身に着けたタイミングで自身のキャリアを選択できないのです。もっと早期の段階から、民間就職や博士課程への進学といった複数のキャリアパスを意識してもらうきっかけが必要です。

山田社長
早期のキャリア教育は学生のキャリアパス拡張を考える上で非常に重要です。アカリクでは、キャリア講師を務める社員の多くは博士課程出身者であり、中にはポスドクを経験した者もいます。アカリクラウンジで開催するセミナーやイベントを通じ、彼ら・彼女らが自身の経験を話すことで、「博士課程修了後にはこんな道もある」というイメージを持ってもらえるのは、博士課程への進学を後押しする上で大きな意味があると思います。


企業と博士人材をつなぐ取り組み

山田社長
博士人材の能力をより多くの企業に知っていただくために、アカリクラウンジでは企業と学生が交流できるイベントを積極的に企画しています。たとえば、「アイデアソン」のようなイベントがあります。企業から課題を提示していただき、博士学生がグループで議論しながら解決策を考えるというものです。

こうしたイベントでは、博士学生が持つ論理的思考力や問題解決能力、リサーチスキル、さらにはそれらを成果としてまとめ上げるプレゼンテーション能力が発揮されます。参加した企業の方々からは、「博士人材の能力の高さに驚いた」といった声をいただくことも少なくありません。企業の方々にとっては、こうした場を通じて博士人材のスキルや価値を直接感じていただくことができる良い機会です。また、学生にとっても、企業との接点を持ち、自分の能力をどう活かせるのか考える場として有意義だと考えています。

岩永副学長
かつては、博士人材に対して「扱いにくい」といったイメージを持たれる場合も少なくなかったようです。今では大学でも博士学生に対し、キャリア教育などの様々な支援を行っており、そのようなイメージとは異なる学生が多いと思います。今日では、例えば企業の研究がノーベル賞を受賞しているケースがあるように、最先端の研究はアカデミアだけのものではなくなっています。企業にとっては研究が競争力となるはずです。そのために、博士人材をうまく活用してほしいと思います。


異分野交流が生む新たな可能性

岩永副学長
博士課程の学生は、専門性を高める一方で、異分野の学生との交流が少なくなりがちです。研究室内でのつながりは深くても、そこから広がりを持つ機会が限られるという声も聞きます。ですが、科学の進歩には専門性を深めるだけでなく、異分野との連携が欠かせません。他の領域の知識や視点を取り入れることで、新しい発想が生まれるからです。

アカリクラウンジでは、学生同士が分野を超えてつながることができる場を提供していただけると聞いています。コーヒーを飲みながらリラックスした雰囲気で話し合う中で、「この人なら、別の分野の話でも聞ける」と感じられるようなつながりが生まれると素晴らしいですね。そうした横のつながりが、壁にぶつかったときに役立つヒントになることも多いのです。

また、このラウンジを通じて、同じくアカリクラウンジが設置されている奈良先端科学技術大学院大学や、アカリク会津支社が設置されている会津大学など、他のアカリクの拠点とも連携し、地域や大学の枠を超えた交流が生まれることも期待しています。異なる背景を持つ学生同士が互いに刺激し合い、研究やキャリアについて新しい視点を得られるような場になればと思います。

山田社長
アカリクラウンジでは、学生同士の横のつながりを強化する取り組みに力を入れています。たとえば、ハロウィンやクリスマスといった季節のイベントを通じて、普段接点のない学生が交流できる機会を提供しています。研究室内だけでは築けない関係が生まれることで、学生生活がより豊かなものになると感じています。

さらに、ラウンジを拠点にして企業や地域とのつながりも広げていきたいと考えています。たとえば、博士課程修了者が実際に企業でどのように活躍しているかを知ることは、学生にとってキャリアを考える重要なヒントになります。OBやOGを招いて講演を行ったり、企業の方々と学生が直接話せる場を設けたりすることで、より実践的なキャリア支援ができると考えています。

アカリクラウンジが単なる学内の施設にとどまらず、地域や産業界とも連携しながら、新たな発見やつながりを生む場になればと期待しています。


アカリクラウンジではこだわりのコーヒー(セルフサービス)が無料で提供される


学生と地域コミュニティへ向けたメッセージ

山田社長
学生の皆さんには、ぜひ気軽にラウンジを利用してほしいと思います。アカリクラウンジには、無料で使えるコーヒーや電源があります。研究や学業に集中しながら、ふと気分を変えたいときや誰かと話をしたいときなどがあれば、ラウンジに立ち寄ってみてください。そこから、友達づくりや新しいつながりが生まれるかもしれません。

博士課程の学生同士が専門性を高め合い、横のつながりを持つことは、キャリアにもつながる非常に重要な要素です。ある学生が企業に採用されることが、実際にはその背後にある研究分野や専門家ネットワークを含めた「つながり」を企業が評価している、というケースも少なくありません。そのようなつながりが生まれる場所として、アカリクラウンジを活用してほしいと思います。

また、地域コミュニティへの貢献についても重要だと考えています。地方大学の学生が企業とつながる機会を増やし、また一方で、副次的に企業間でのアライアンスや事業シナジーが生まれるような場にもしたいと考えています。地域と企業、そして学生が三位一体となって新しい価値を創造していけるよう、私たちも全力でサポートします。

岩永副学長
技術革新のスピードがますます早まる中で、これからの仕事はクリエイティブなものが求められるでしょう。そのためには、高度な専門性を持つ人材が必要です。学生の皆さんには、大学院、そして博士課程への進学をキャリアの一つとしてぜひ考えてみてください。博士号を取得し、その専門性を基に新しい技術や価値を生み出していくことが、これからの社会ではより重要になると思います。

また、アカリクラウンジを通じて、OB・OGとつながる機会も提供できればと考えています。彼らがどのような経験を経て、どんな企業で活躍しているのか、具体的な話を早い段階で聞くことは学生が自身のキャリアを考える上で大きなヒントになるでしょう。さらに、企業のセミナーやイベントにも積極的に参加して、広い視野を持ってほしいと思います。
アカリクラウンジは、学生同士や企業、地域とのつながりを深める場として機能することを期待しています。学生にとって居心地の良い場所であり、研究やキャリアの合間に英気を養えるような空間であってほしいと思います。



関連リンク

いいなと思ったら応援しよう!