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介護制度改革案

まず、老齢年金は、高齢者福祉における柱のような存在であり、それがしっかりしていなければ、医療制度や介護制度が、如何に優れていても、全く意味を成さないと思っております。

実際、年金の支給額が足りないため、医療や介護を利用する事も出来ない程、貧困に陥っている高齢者は数多く存在するようです。

なので、前回のnoteに引き続き、本noteにおいても、年金支給額を向上させる事に重点を置くような改革案を提示させていただきます。


また、詳細は後述しますが、スウェーデンは、120年の歴史を誇る介護大国であり、紆余曲折を経て、現在では、在宅介護を重要視しております。

なので、そのスウェーデンに倣い、日本においても、在宅介護に重点を置くべきと考えております。


以上より、本noteにおいては、老齢年金の支給額を増やし、尚且つ、在宅介護に重点を置くような介護制度改革を考え、提唱させていただきます。


1.スウェーデンの介護史

1940年代のスウェーデンでは、介護と言えば、"高齢者達を、老人ホームに入居させる"ようなものであったそうです。

しかし、その実情は、非常に惨いもので、高齢者だけでなく、精神障碍者や知的障碍者を一緒に入居させ、事実上監禁するような、言わば、"当時の老人ホームは、厄介者を、社会から隔離する"ものでしかなかったそうです。

ですので、そういったスウェーデンの介護体制に対して、国際的にも批判が高まっていた事から、1950年を界に、スウェーデンは、老人ホーム型から在宅介護型への転換を図り、現在まで、在宅介護に重点を置いた介護制度を維持しております。


しかし、その一方で、現在の日本に目を向けてみると、"診療報酬や介護報酬を得るため、高齢者の人権を顧みず、高齢者を監禁している施設が一定数存在する"という告発を、時折目にする事があります。

ですので、今の日本の社会保障制度は、一部においては、1950年当時のスウェーデンのように、人権を軽視したような制度となってしまっており、他人事ではないと言えると思います。


2.在宅介護中心の欧州各国の特徴

図録▽介護サービス受給高齢者比率の国際比較

イタリアスペイン等、在宅介護を受ける高齢者の割合が高い国の特徴として、"現物給付の代わりに、現金給付を行っている"というものがあります。

"現物給付"と言うのは、現在の日本のように、介護サービス自体を、高齢者に提供するものであるのに対し、"現金給付"とは、文字通り、国が、介護サービスを提供する代わりに、現金を給付するというものになります。

なので、必然的に、現物給付の代わりに、現金給付を行えば、在宅介護の比率を高める事が出来ると考える事が出来ると思います。


3.具体的改革案

①原則として、介護費用は現金給付を行う

やはり、冒頭で申し上げた通り、今の日本の高齢者は、年金支給額が足りず、困っている状況であり、少しでも、現金を給付すべきであると考えているため、日本においても、介護の現物給付を行うより、介護費用の現金給付を行うべきであると考えております。

また、そうする事で、自ずと、公的扶助に頼る高齢者の数は、減っていくのではないかと考えております。

更に、現在では、"ヤングケアラー""老々介護"等、介護者の負担に起因する社会問題が話題となっておりますが、現金給付方式にする事で、高齢者が、そういった介護者に対し、直接報酬を支払う事が出来るようになり、それに加えて、介護施設に入居したり、別の介護者に介護をお願いしたりといった、高齢者の裁量が大幅に増加いたしますから、高齢者のみならず、介護者にとっても、大変メリットの多い仕組みなのではないかと考えております。


②ただし、認知症の方々については、現物給付を行う

ただ、認知症の方々については、自身で、様々な意思決定を行う事は難しいと思われますので、従来通り、国や自治体が責任を持って、現物給付を行うべきであると考えております。


4.高齢者福祉を考える上で、最も重要な事

高齢者の社会保障を考える上で、最も重要な事は、"高齢者自身が、納得しているか"という事に尽きると思います。

現在においては、他分野においてもそうですが、政治家や官僚達が、民意を無視して、自分達の都合の良いように、勝手に政治を進めてしまうため、それも相まって、高齢者が納得のいくような社会保障にはなっていないと思っております。

やはり、何度も述べておりますが、今必要なのは、"年金の支給額を上げる事"に尽き、それを優先的に実行する事で、高齢者の納得感も向上する事は間違い無いと思います。


5.全世代が納得するような改革が必要である

今の社会保障制度に対しては、"高齢者も納得しておらず、若い現役世代も納得していない"ような状況であると思っております。

私は、国が、最も上手く機能し、最も高い生産性を発揮するための条件は、"国民全員が、自分の人生に納得感を持っている"事だと思っております。


最近の政治情勢では、少子高齢化対策のため、子育て世帯に対して、社会保障を手厚くしようとする動きが活発化しております。

勿論、少子高齢化を解消しなければ、国家の存続自体が難しくなってしまう事から、対策する事は重要ではありますが、"高齢者の貧困を放置した状態で、いくら少子化対策を行った所で、何の効果も無いのではないか"と思っております。


例えば、高齢者の年金支給額が、全高齢者が納得する水準まで引き上げられたと仮定します。

そうすると、自身の人生に納得感を持つ高齢者が増える共に、自発的に社会に貢献しようとする高齢者が、増えていくと思います。

そして、そういう社会になれば、高齢者の方々が、子育て世帯の支援を行ったり、ボランティアや就労等の社会貢献を率先して行うようになるのではないかと考えております。


逆に、高齢者の貧困を放置したまま、子育て世帯に手厚い社会保障を提供した場合は、言い方は悪いですが、当然、高齢者達は、社会の事を考えない行動、つまり、万引き等の行動を起こしてしまうと思っております。

また、国民間の分断と対立が深まってしまう事から、様々な場面で、社会コストが増大してしまう事は間違い無いでしょう。


6.財政的な観点から

財政的な視点になりますが、私の以前の記事で申し上げた通り、"全ての病院や介護施設を、原則として国営化"する政策に加え、医療や介護に対する財政支出を、現金化して、高齢者に給付する事によって、歳出に上限を設ける事が可能となると思っております。


現状の制度においては、実質的に、医療や介護の歳出に制限が設けられておらず、いくらでも歳出が拡大するような制度となっております。

そうなってしまうと、全世代の税金や社会保険料の支払額が増えてしまい、高齢者の方々に支給出来る年金も減ってしまう事は、間違いありません。

また、長期的に見ても、日本の財政状況が悪化すれば、"大規模な円安"を引き起こしてしまったり、国際問題が生じ、結果的に国民生活に大打撃を与える形となってしまうでしょう。

仮にそうなってしまった場合は、もはや、社会保障を維持する事も、出来ない状況となる事は、間違いありません。


ですので、社会保障費の上限を設けられるという事は、日本国家を存続させる上において、重要となる事は間違いありませんので、財政的な観点から見ても、私の改革案は意義があるのではないかと思っております。


7.高齢化社会の到来は、チャンスである

私は、高齢化社会の到来は、色々な意味でチャンスであると思っております。

例えば、現在のように、世界各国において、高齢化社会が到来している状況は、人類史上初である事は間違いありません。

なので、高齢化社会でなければ、起こせないイノベーションや新たなビジネスが産まれる可能性は十分考えられる訳です。


戦前の日本においては、"姥捨て"と言われるように、自分の住んでる村に飢饉が発生した場合、食糧難解消のため、高齢者や子供を、山に捨てに行った逸話が存在いたします。

しかし、私は、より豊かになった現代においては、そういった非人道的な手段ではなく、人道的な手段で、高齢化社会を乗り越えられると思っており、そうでなければ、"人類の進歩はここで止まってしまう"事でしょう。


あとがき.

現代の社会保障の大部分は、"高齢者のためにある"と言っても過言では無いと思うので、高齢者が納得するような制度でなければ、全く意味が無いのではないかと思っております。

ですので、どんな制度にするにせよ、政治家や官僚達が一方的に制度設計をするのではなく、予算に上限はあると思いますが、高齢者の要望を汲み取り、それに沿った制度にするべきであると思っております。

なので、現状のように、医療や介護に金を掛ける一方で、年金支給額が少ないため、貧困に苦しんでいる高齢者が多数存在するというのは、全くもって本末転倒であると思います。


そして、個人的に、人生に納得感を持つために重要な事は、"自己決定権を持っている"事、あるは、"裁量がある"事だと思っております。

なので、そういった点を考慮し、現金給付型の方が、自分の裁量で、お金の使い道が自由に決められる事から、高齢者の満足感が高まるのではないかと思い、本記事を執筆いたしました。


最後に、今後、様々な社会保障の改革案が出てくると思いますが、年金支給額の引き上げのような、高齢者の自尊心を尊重し、尚且つ、納得感を得られるような改革でなければ、自民党が掲げるような、"公助から自助・共助へ"という目標は、絶対に達成される事は無いと思っております。


参考文献.

・ヨーロッパの介護政策: ドイツ・オーストリア・スイスの比較分析 (MINERVA社会福祉叢書 35)

・スウェーデンにおける社会的包摂の福祉・財政

・スウェーデンにみる高齢者介護の供給と編成


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