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政治にヒーローを期待してはいけない理由


はじめに.

たまに、カリスマ政治家に登場してもらい、その政治家一人に全てを任せ、国を良くしてもらおうという意見を目にする事がありますが、日本国憲法は、構造上、独裁者が単独で国を運営できるような憲法になっておらず、また、歴史上から考えても、カリスマ指導者に政治の全てを丸投げしてはならないという事を、改めて、本記事で述べさせていただこうと思います。


1.今日までの政治界の英雄たち

政治界のヒーローと言えば、19世紀のフランスの英雄のナポレオンナチスの独裁者ヒトラーが挙げられます。

ナポレオンについては、ナポレオン法典と呼ばれる民法典がフランスに残ったり、良い影響もありましたが、ナポレオン失脚後は、結局、王政に回帰し、ナポレオンの政治が直接的に、その後のフランス国民の生活を豊かにしたとは言えない訳です。

ヒトラーに関しても同様で、確かに、ヒトラーの登場やその後の第二次世界大戦が、今の豊かなドイツを作り上げるきっかけにはなった点もある事は否定出来ませんが、ヒトラーの政治が直接的に、戦後のドイツ国民の生活を豊かにした訳ではありません

一方で、現代では、シンガポールのリー・クアンユーなど、優秀なのおかげで、豊かになった国があるのも事実です。


しかし、彼等は事実上の独裁者です。

そして、仮に、日本に彼等のようなカリスマが登場したとすれば、最大限彼らの力を発揮するためには、今の日本国憲法を、独裁者のための憲法に変更する必要が出てしまうのです。


2.先人の日本人が勝ち取った民主的憲法

戦前の日本人には、事実上、人権は一切保障されておりませんでした。

その代表例が、治安維持法特高警察であり、国家批判や国家に都合の悪い言動を行ったと疑われた者は、何の根拠もなく、特高警察に連行されたり、拷問を受けたりしていたようです。

特高警察による拷問の様子は、"暴行、暴言、天井から吊るす、水攻め、石攻め、うっ血させる、窒息させる、鉛筆を指に挟む"など、現代では考えられない事が行われ、拷問の末に、殺害される日本人は、多数いたとの事です。

つまり、戦前では、表現の自由が、一切許されていなかった訳です。

一方、現代の警察官達は、今の日本国憲法に則り、刑事訴訟法の制限に基いた上で職務を行っていますから、逮捕から起訴、刑罰の執行まで、国民の人権に配慮した上で、各公権力の行使を行っております。


そして、1934年の大凶作で言えば、日本国内で大飢饉が起こっていたにもかかわらず、当時の日本政府は、戦費の拡大と満州鉄道などの海外のインフラ開発を優先したため、国内では、大量の国民が餓死し、年々悲惨な状況に直面していったようです。

勿論、戦費の拡大や海外のインフラ開発に文句を言ったら、その時点で、反逆者と見做され、逮捕や拷問を受ける可能性もあったでしょう。


また、戦前の内閣総理大臣は、元老と呼ばれる一部の政治家の一存で決定されておりました。

なので、現代のように、国会から多数決で選出された議員が内閣総理大臣になるのではなく、当時の帝国議会の議員達が認知をしていないような人物が当然登場し、総理大臣になっていたりした訳です。


そして、戦時中では、310万人以上の大量の日本人が、餓死や戦死で亡くなった訳です。


確かに、今の日本国憲法は、GHQが草案作成に主体的に携わり、日本国民が自主的に国から勝ち取った憲法では無いかもしれません。

しかし、1947年の日本国憲法までには、数多くの先人の日本人達の犠牲があり、戦後から今日にいたるまでも、先代の日本人達が、一部の官僚や政治家から、民主的な日本国憲法を守ってきたのは事実です。


3.日本国憲法が機能するためには?

結局、18世紀~20世紀の欧州では、どの国も、王政と言う名の独裁体制を敷いていました。

しかし、産業革命以降、独裁体制では、国際競争に勝つ事が出来なくなったために、独裁体制を捨て、各国は、共和制や立憲君主制など、民主体制へと転換した訳です。

そして、王と言う名の独裁者がいなくなった代わりに、国民一人一人が、政治に参加し、国家を動かす必要性が出てきた訳です。


さらに、アメリカ合衆国は、建国当初から現在まで、住民による自治によって、ずっと運営されており、一度も、独裁体制になった事がありません。

ですから、終戦後、ドイツや日本に導入された憲法は、住民による自治に基いて国家が運営される憲法だった訳です。

つまり、日本国憲法が上手く機能するためには、国民一人一人が、政治について考え、政治に参加する事が必要という訳です。


まとめ.

結論として、政治界のヒーローが登場し、そのヒーローに政治を一任させ、十分に活躍させるためには、その対価として、今の憲法を捨てる事、つまり、我々日本国民の人権を、国家に差し出す必要が出てきてしまう訳です。

ですが、それは、先人の日本人達の努力を無碍にする行為であり、絶対に行ってはならない事だと思います。


確かに、現代にも、シンガポールや中国など、独裁体制で上手くいっている国は存在します。

しかし、独裁体制では、昨日まで天国のような状態でも、明日からはいきなり地獄のような状態になる事もあり得る訳で、全ては独裁者の気分次第で全てが決まってしまいます。


また、独裁体制が仮に上手く行くのだとしたら、18世紀から現代に至るまで、欧州やその他先進国においても、独裁体制が残っていてもおかしくはないはずです。

ですが、実際に、独裁体制で失敗した歴史の積み重ねがあり、独裁体制では上手くいかないと解っているから、民主体制になっているんです。

結局、人間たった一人の力では、1億2000万人全員の知力や尽力には敵わない訳です。



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