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『国会制度改革案』何故、日本の国会は機能しないのか?



はじめに.

まず、今の国会議員は、昔の国会議員に比べ、全く改革を行わない処か、改革を志す者すら、少なくなってしまったと言えるでしょう。

通常の政策立案業務においては、全て官僚が実務を担っている点から見ても、改革を行う事こそ、政治家の本分であり、その観点から見れば、小泉内閣以降の全内閣は、全く政治を行っていないと言えると思います。


そして、それだけではなく、政治家のレベルが全体的に下がっている事も、問題と言えるでしょう。

例えば、海外諸国の議員と比べても、"とにかくもっと国債を刷れ!"と言うような、財源も示さずに、国民に財政出動を約束するような、幼稚な政治家が多数存在しております。

では、何故、小泉内閣以降、まともに政治をする国会議員がいなくなってしまったのか?、それと同時に、どうすれば、今の国会を改革出来るのか?、本noteでは、その点について、論述しようと思います。


1.何故、国会は機能しないのか?

理由1.政党主導の政治への転換

まず、小泉内閣前後で行われた大きな改革としては、1993年8月9日から1994年4月28日に誕生した細川内閣が行った、政治改革四法が挙げられます。

この改革は、かつて、自民党に横行した現代の長老制とも言える派閥政治の是正や自民党による一党独裁が当たり前とされる55年体制の是正のために行われたものです。

主な改革内容としては、中選挙区制から小選挙区、比例代表制への転換政党交付金の導入でした。

そして、その狙い通りに、自民党の派閥の力は弱まり、自民党以外の政党の党勢が強まったのですが、それと引き換えに、これ以降、国会議員としての活動を続けるためには、党の援助が必須となってしまい、実質的に、議員個人の命運を、政党が握るような体制になってしまったのです。

その結果、昔のように、党議拘束も弱く、各議員が、主体的に政策議論を行っていた頃の国会の光景は消えてしまいました。


政党政治の問題点

政党政治の問題点の一つとしては、国会議員の活動内容が、国益を考えるよりも、党の利益を増やす事に終始してしまいがちになるという事が挙げられます。

例えば、一部の文系学者の方々は、"今の国会議員は、サラリーマン型だ"という指摘をしておりました。

何故なら、戦後の日本にあった政治家個人主義から、現在の政党主義に転換される事により、政治家が個人として意見を発するより、政党の方針に右に倣えで従い、政党の利益を伸ばす事こそが、議員個人の利益にも繋がる最優先事項になってしまいました。


また、歴代の内閣総理大臣や各国会議員の無責任さについても、政党政治が原因だと言えるでしょう。

何故なら、政党主義がはびこる事によって、"意思決定をするのも政党であり、責任を取るのも政党である"といった、悪い意味での株式会社のような責任転嫁が蔓延り、政治家個人としては、誰も政治責任を取らなくなってしまったからです。


理由2.政策立案スタッフが足りない

まず、諸外国に比べ、日本の国会議員は、政策立案をほとんど行わない事で有名です。

その主な理由として、政策立案スタッフが、ほとんど存在しないと言える現状が挙げられます。

例えば、アメリカでは、下院議員は20名前後上院議員は30~60名のスタッフを抱えており、その人件費は公費によって賄われております。

その一方で、日本の場合は、公設秘書は3人しかおらず、私設秘書の人数に至っては、平均5~6人しかいないとされています。

全体数で比較した場合は、下図の通り、アメリカの下院7200名、上院4122名に対し日本は、衆議院1395名、参議院795名となっております。

欧米主要国の議員秘書制度【第 3 版】

ですから、日本においては、秘書や専属スタッフ自体が少ないですから、政策秘書と言う肩書であっても、現状、選挙活動に特化した業務を行う秘書と化しているようです。

そのため、一部の元弁護士などの法律のプロを除き、専門的な法的知識に基づいた込み入った政策議論が行えず議員立法もほとんど自力では滅多に行えていないようです。

海外のように、元法曹や法律の研究者の国会議員自体をより多く当選させる方法もありますが、それでは余りにも効率が悪すぎますし、民意も反映出来ません。


また、アメリカの場合は、連邦政府の役割が極めて限定されておりアメリカ国民は、中央政府の政策にはあまり大きく作用されませんが、全く地方分権が進んでいない日本においては、日本国民全員が、中央政府の政策に大きく作用されます

そんな状況があるにもかかわらず、日本の政策立案スタッフの総数が、アメリカの政策立案スタッフの総数を下回る現状を放置していて良い訳がありません。

是非、官僚本位で、官僚達に都合の良い立法を防ぐためにも、国会議員が協力を仰げる政策スタッフを増やす事は急務だと思います。


2.改革案

①政党の政策立案スタッフを増やす制度導入

王道で言えば、アメリカのように、国会議員一人当たり20人や40人の公設スタッフを抱えられるような法整備をすべきでしょう。

議員定数を削減すれば、より実現可能になると思います。

ですが、現在の日本では、社会保障費の膨張等財政的な事情によって、国会議員のための新たな予算の確保が難しいと言える状況もあるため、別の方法を提示させていただきます。


なので、王道とは逸れた方法として、"政党自身が、政策立案スタッフを抱える"という方法もあると思います。

議員一人一人に大量の政策スタッフを専属させるやり方では、公費の無駄が生じてしまいます。

ですから、政党が主体となって、常勤や非常勤の形式を問わず、弁護士や法学研究者など、各界の人材と、委任契約を結び、政策立案スタッフとして、大量の人材を抱えるシステムを導入すれば良いと思います。


スウェーデンの事例

ちなみに、スウェーデンにおいては、RUTと呼ばれる制度があり、議会が政策立案に携わるスタッフを雇っているという事です。

議会が、政策立案にかかわるスタッフを直接雇い、政党に関わらず、中立的な機関として、各議員に立法サービスを提供する事で、各議員に専属の秘書を就けずに済み、税金の節約を行っているとのことです。


また、スウェーデンと同様に、日本においても、議院法制局という同様の機関が存在し、衆議院(参議院)調査局という補助的な機関も存在します。

なので、それらのメンバーが不十分であるならば、新しく現役の法曹や、大学教授等の法律の専門家達を、議院法制局のメンバーに新しく加え、人員を増やすという改革も良いと思います。


②供託金を下げる

今の日本においては、小選挙区で300万円比例代表で600万円(小選挙区と比例の同時立候補で300万円に減額)かかる程、供託金は高く設定されております。

ちなみに、アメリカやフランスにおいては、供託金は一切かかりません

下図は、供託金の国際比較になります。

日本370人、イラン約7500人! 国会議員選挙立候補者数の違いから考える「供託金」問題

供託金が高すぎる事によって、金銭的に余裕が無い、若者・女性・貧困層の人々などが、立候補出来なくなっていると言っても過言ではないので、そういった政治的なマイノリティーの人々に、国会議員になる機会を付与するためにも、供託金は100万円以下に抑える改革が必要だと言えます。

ましてや、実質賃金が下がり続け、金銭的余裕が無くなっている国民が増えている今こそ、供託金を減らす法改正は必要だと思います。


③政治家個人の権力を強める改革(党議拘束の撤廃)

単純に考えれば、党議拘束を禁じるような法律を導入すべきでしょう。

ですが、国民が、党議拘束を行い、議員の発言権を奪っているような政党に投票しない事で、党則の変更を促す事で、各党に自主的に改革させる道もあるでしょう。

現在の政党の中では、自民党・公明党・日本共産党が、強い党議拘束をかけているそうです。

いずれにせよ、国会議員個人の発言権や権力が奪われる事で、活発的で意味のある、各法案に対する議論が無くなっている事は事実ですので、そういう改革は実行すべきでしょう。


④女性議員比率を上げる法律導入

「共同参画」2019年6月号

日本における国会議員の女性議員の比率は、国際的に見ても酷く、各党による自主改革も望めないので、女性議員比率の低さについては、法律によって、強制的に女性議員比率を高めるような法整備が必要です。

実際、海外でも、クオータ制と呼ばれるような、候補者・議席・政党幹部を少数派に割り振る仕組みがあるそうです。

例えば、韓国では、比例名簿の女性比率を50%以上にして、尚且つ、比例名簿の並び順を男女交互に並べる事を強制する法律があります。

ですから、日本もそれを見習い、韓国同様の法律を導入するなど、強制力を持って、女性議員の比率向上に努めるべきだと思います。


⑤被選挙権の年齢引き下げ

被選挙権 18、21、25歳が世界の主流

まず、現在の日本においては、被選挙権が与えられる年齢については、衆議院が25歳で、参議院に至っては30歳となっております。

現在の日本では、高齢者の数が多いですから、それとバランスを取る意味でも、被選挙権を、衆参共に、若者に有利なように、年齢要件を18歳まで下げるような改革は必要だと思います。


二章のまとめ

まず、国会議員の政策立案スタッフがほとんどいない現状については、早急に改革すべきだと思います。

地方分権が全く進んでいない日本において、海外諸国に比べ、政策立案スタッフの人数が大幅に下回っている事は、大問題だからです。

さらに、社会的にも弱い立場にある若者・女性・貧困層の人々に、政治への参加の機会を更に与える事により、世襲議員を減らしたり国会を活性化出来る事は間違いないので、そういった政治的マイノリティー層に配慮した法整備も必要だと言えます。


まとめ.政権交代が起こらなければ、国会改革は実現しない

歴史的に見ても、大きな国会改革や選挙制度の改革は、野党が実現しております。

更に、2009年の政権交代が起こった際にも、それを機に、自民党が率先的に党改革を行い、脱世襲制のための改革が行われたり、定年制の導入されるなど、自民党内が改革された事もあります。

ですから、国会や政党の大幅な改革を促す意味でも、政権交代や、各野党の議席数が増える事は、大きな意味を持ちます

そして、現在、日本維新の会国民民主党など、まともな野党が増えてきております。

ですから、国民の皆様には、自民党に反省を促し、自民党を自主的に改革させる意味でも、そういったまともな野党の方々に、一票を投じていただいた方が良いのではないかと思います。

参考文献.

欧米主要国の議員秘書制度【第 3 版】

諸外国の選挙権年齢及び被選挙権年齢

・日本の国会議員 政治改革後の限界と可能性 (中公新書)

・日本の国会 審議する立法府へ (岩波新書)


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