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マイナンバーカードを利用した電子投票制度導入の提言


はじめに.

今回は、"誰でも、自宅に居ながら、スマホやパソコンから国政選挙の投票が行える"ような電子投票制度について、その制度設計がどうあるべきか?等を考え、提唱されていただきたいと思います。

現状では、2020年の新型コロナウイルス蔓延を契機に、在外者を対象に、スマホやパソコンから投票出来る電子投票システムについての実証実験が、総務省によって既に行われているため、政府の後押しがあれば、実装に漕ぎつく事自体は、そう難しくはないと考えられます。


1.海外の電子投票制度の現状

表1.電子投票制度を利用できる国一覧

現在、国政選挙レベルでの電子投票制度が存在する国としては、エストニアが有名です。

そして、上部の表1にある通り、エストニア以外にも、電子投票制度を導入している国が存在しておりますが、その大半が、新興の民主主義国家であるとの事です。

そういった新興の民主主義国家において、電子投票制度が率先して導入されている理由としては、それらの国々においては、汚職賄賂の影響が払拭出来ておらず、地方の選挙管理委員会のメンバーが国民から十分信用されていない事から、"汚職をするかもしれない人間よりは、機械の方が信用出来る"と考えられているのが主な理由のようです。

そして、それとは対極的に、民主主義国家としての歴史が長く、紙方式による選挙が上手くいっている先進国においては、電子投票制度の導入が憚られる傾向があるという事です。


2.具体的な制度設計

① 比例代表制・小選挙区制に電子投票制度を導入する場合

やはり、日本国内においては、従来の紙方式での投票が十分機能しているため、現地の選挙所に足を運び、投票している国民については、当然、従来通りの投票を行えるべきであると考えます。

その一方で、電子投票を解禁すれば、電子投票と従来の紙による投票で、二重に投票出来てしまう可能性がありますから、

① 電子投票を既に行った場合は、従来の紙による投票を行えない
② 従来の紙による投票を行った場合は、電子投票を行えない

という仕組みを作る必要があります。

その場合、事前に、投票所入場券一枚一枚に専用のバーコードを貼り付ける必要があり、投票所に赴いた国民一人一人に対し、現地の地方選挙管理委員会の方々が、持ち前の機器で、そのバーコードを読み取り、既に電子投票を行っていないかを確認し、電子投票を既に行っていない国民だけ、紙による投票を許可し、更に、紙による投票を行った旨を、データベースに書き込むという作業を要します。

補足:
データベースのカラムとしては、ID(マイナンバー)・選挙区ID・電子投票の有無・紙方式の投票の有無・投票先の候補者というものを想定しております。


また、機器やネットワークの不調が起きた場合は、電子投票を排した上で、完全に従来通り方式に限った再選挙を行うべきであると考えます。

更に、電子投票を既に行った場合でも、現地での紙による投票を行った場合は、電子投票の投票を無効にし、現地での紙による投票行為を優先するという事も行っても良いと思います。

とにかく、電子投票制度は、"投票所に行くのが面倒くさい"という人達に向けたような、従来の方式の補足的な役割を果たせれば良いという事です。



更に、電子投票制度を考える上で、従来通り地方の各選挙管理委員会が、電子投票事務を取り仕切るのか、それとも、全国の電子投票事務を司る一個の中央選挙管理委員会を新設するのかについて、意見が別れると思います。

ですが、個人的には、従来通り、電子投票についても、地方の各選挙管理委員会が取り仕切るべきであると考えております。

と言うのも、各地方自治体の選挙管理委員会のメンバーは、各自治体の議会によって選任されているため、実質的に、各選管は、その地域に住んでいる方々で構成されていると言えるからです。

つまり、"各地方の選管が選挙を取り仕切るからこそ、公平な選挙が担保されている"と考えられる訳です。

何故なら、自分の選挙区で、不正選挙が行われ、その結果望まれない議員が当選してしまえば、自分やその地域に不利益が生じてしまう可能性がありますし、同時に、一人一人の選管の方々は、"自分の地域では、絶対に不正は起こさない"と、プライドを持って、仕事をされていると考えているからです。


それとは反対に、中央の選挙管理委員会が、電子投票を取り仕切ってしまえば、前述したような地域住民による選挙管理が行われなくなってしまい、何より、中央政府の影響を受けやすくなってしまうと思います。

その証拠に、北朝鮮等の民主主義が保証されていない国々においては、分散的な選挙管理委員会は存在せず、中央政府が影響を及ぼしやすいように、中央が一括で選挙管理を行う傾向があるという事です。


② 比例代表制・小選挙区制に並列する第三の枠として電子投票制を併設する

①の案では、従来の比例代表制・小選挙区制について、電子投票制度を導入する場合の話をいたしましたが、従来の比例代表制・小選挙区制には一切手を付けず、"電子投票制"という第三の枠を設け、10人~20人の定数を割り当てるという試験的な方法を採っても良いと思います。

この方法であれば、①で思考したような面倒臭い配慮する事無く、定数が10人~20人であれば、問題が起こっても大した影響が出る事はないと考える事が出来ます。

やはり、現在の比例代表制・小選挙区制の投票制度は、"公正な選挙"が保障されるような良い制度であり、変更する必要性はないと思いますので、"どうしても、インターネット投票を行いたい"という方に向けた制度である事を考えれば、10人~20人の議員を選定するための別枠という制度であっても、合理性を欠く事はないと思っております。


3.導入に向けた課題等

各地方の選管委員にアンケートを取った所、電子投票制度に対する懸念点としては、コストがかかる、機器やネットワークのトラブル、セキュリティの問題が主に挙げられたそうです。


まず、コストについては、電子投票制度の導入によって、投票率が上がる事は、大いに意義があるため、多少の国庫負担はやむ負えないと思います。

そして、一番の懸念点としては、"ハッキング等によって、投票結果が改善されてしまうのではないか?"という点が挙げられると思います。

なので、その対策として、先ず、電子投票を行った場合は、各国民が、自身の投票先を、選挙後しばらくの間は確認出来るような仕組みを作れば良いと思います。

そうすれば、第三者に、投票先のデータを書き換えられた場合、自分自身で、それを発見する事が可能となります。


また、それと同時に、民間において、電子投票者向けに、各選挙区における投票先を集計するようなウェブサイトを作れば良いと思います。

そして、そのウェブサイトの結果と、現実の選挙結果が大きく異なる場合等は、住民訴訟を提起して、再選挙の訴えを起こすなど、地域住民の方々の尽力が必要になる事も予想されます。


4.国民の納得度を高めれば、消費税増税等の国民に受けない政策も行える

電子投票の解禁により、"各国民が、自分も政治に参加出来ている"との実感を持つ事が出来るため、政治への信頼が上がる事が予想されます。

そうする事で、消費税の増税等、国民に不利な政策も、多少は受け入れられるようになるのではないでしょうか。

逆に、こういった政治への信頼を高めるような取り組みをしていかなければ、消費税の増税等、国民に一見不利な政策が一向に実施出来ず、当然、憲法改正も実現不可能となるでしょう。


5.自民党では電子投票は実現出来ない!

一般的に、電子投票が実現されるか否かは、現政権にとって都合が良いか否かによって大きく左右されるとの事です。

なので、必然的に、高齢者からの支持で成り立っている自民党が、電子投票を邪魔する事はあっても、推進する事は無いと考えられます。


まとめ.

やはり、投票率の低迷が続いており、政治不信が高まっている日本においては、電子投票制度を導入する意義は大いにあると感じております。

一章で述べたように、地方の選挙管理委員会が発達していない新興国家程、電子投票制度が発達している事からも、運用方法によっては、従来の投票方式よりも、信頼が得られるような投票制度になる可能性も秘めていると言えるでしょう。

また、三章においては、懸念点等について、簡単な対策を述べましたが、現実に生じる問題や課題については、"実際にやってみないと、何も解らない"と思います。

なので、電子投票制度を磨き上げ、完成に近づけるためにも、"一日でもはやく実装し、実際にやってみる"事が、何よりも大切であると考えます。


参考文献.

・電子投票と日本の選挙ガバナンス:デジタル社会における投票権保障


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