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病んでる発達障害って本当こんな感じだよね |「ボーはおそれている」感想

ミッドサマーをヒーリング映画だと思っています。
そんな私が観てきました。
「ボーはおそれている」


まず思ったのは、公開直後に騒がれたほど狂気的ではない。ということ。
発達障害とうつ病とか併発したら普通にあんな感じだよね、という感想だった。

正直「懲役3時間」だの「狂気の原液」とか言われると、正常な精神で羨ましいな〜という感じだ。いや本当に。お世辞抜きで。
私にとっての世界は(特に酷かった時期を思い出すと)大体あんな感じだ。

その上で、これが「狂気」とされるなら、やっぱり発達障害の見えてる世界って文字通り苦行なんだと思う。


そして、そんな「(精神的に不安定な)発達障害の見えている世界」を表すため、主観と客観の境目が意図的に曖昧にされていると感じた。
どこが現実で、どこからがボーの妄想なのか。
厳密には、ボーという主体から見た誇張した現実というのが正しいだろうか。
流石にボーの父親の正体をあんなCG丸出しで出されると「これは現実じゃないねw」と笑ってしまったのだが、それまではギリ「ありそう」な描写ばかりだったので、結局どっちなんだ?と思いながら終始鑑賞していた。


特に印象に残ったのは、ボーの母親が「家族を蔑ろにしていることはわかっている」「お前のことなんて全部お見通しだ」「なのに本当に帰ってくるとは思わなかった」と捲し立てるシーン。


現実の私も「あなたは何考えてるか分からない」「行動に一貫性がなくて不気味だ」とよく言われる。
私にとってはちゃんと一貫性があるのだが、それを見抜かれることは中々無い。

ボーにとっても「帰省しようとしていた」というのは本当で、それなのに己の精神的症状とそれによる不幸のために全く帰るのが難しくなっているのだ。
正直、私も「こいつ帰るつもりあるのか?映画の宣伝文は合っているのか?」と旅する劇団あたりでは思っていた。
が、急に彼はヒッチハイクを成功させ本当に実家へ帰宅したのだから、他者から見るとあれくらい不可解な行動を己はしているのかもしれないという気づきを得れてよかった。

アリ・アスター監督の作品は「ミッドサマー」しか観たことが無かったので、この作品で「振るい落とされる側の観客」になったらどうしようという不安がずっとあった。
でも実際に見終わってみると、精神疾患によるどうしようもない不安を分かりやすく映像化してくれてありがとう!という気持ちだ。

私個人は非常に親近感が湧いたが、やはり「この映画を狂気的だと言い切れるような幸福な状態」になりたいなと思う。

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