1996・Knebworth
1996年
今から27年前の頃。
1996年、日本の年号で言うならば平成8年になる。
たまごっちが流行り、安室奈美恵旋風が巻き起こり、そのスタイルを真似た「アムラー」って人達が世間でよく見受けられたっけ。
懐かしい話だ。
安室奈美恵さんも引退してから早5年経つんですね。
いや、マジ時間が経つのが早すぎるって。
どうにかならないもんですかね…。
まぁ、それは良いとして話を1996年に戻そう。
まだSNSはなく、インターネットが本格的に流行ってなかった時代。
今のようにスマホ片手に世界の出来事や、色々なイベントが今ほどに身近に感じられなかった。
そんな時代にイギリスはネブワースという場所で2日間に渡り、あるバンドの全キャリアを通してハイライトとも呼べる一大イベントが行われた。
当時イギリスで人気をその絶頂とも言える時期に差し掛かっていたバンド「Oasis」
Oasis 1994~1996年
1994年にデビューアルバム「ディフニトリー・メイビー」で鮮烈なデビューを果たして以来、破竹の勢いでもってその人気を高めていく。
デビューアルバムに収録される「スーパー・ソニック」でもって「俺は俺自身でいなければならない。他の誰かにはならはしないんだから」っと最大限のアティチュードを示し、ロックンロール・スターで「今夜、俺はロックン・ロールスターなんだ」っと高らかに宣言してOasisとしての自負をぶち上げた。
勢いのあるデビューアルバムの後、ドラマーのトニー・マッキャロルを解雇し、アラン・ホワイトをドラマーに起用しOasisの人気を決定づけたセカンド・アルバム「モーニング・グローリー」を1995年にリリースする。
ビートルズの「アビー・ロード」のジャケットを意識したアルバムジャケットになっており、ビートルズが横に横断するなら、自分達は縦に横切る形で…って感じにしたとか。
今聴いても最初から最後までの全ての曲と曲の並びが完璧だと思うし、代表曲がこれでもかと散りばめられた、Oasisの中でも人気ナンバー1なアルバムだ。
サウンドもデビューアルバムよりも力強くなり、何よりアラン・ホワイトのドラミングが一曲目の「ハロー」からリズミカルな音を立てているのがよく伝わってくる。
「ロール・ウィズ・イット」や、「ワンダーウォール」、「ドント・ルック・バック・イン・アンガー」、「シャンペン・スーパーノヴァ」、「モーニング・グローリー」などが収録され、売れに売れたアルバムでもある。
Oasisは1994年のデビューから95年にかけて僅か2年でその人気を高めていき、彼らの行ったライブも急激に規模を大きくしていく。
1995年11月4日、5日に行われたロンドン、アールズ・コートで行われたライブでは合計4万人を集め、1996年4月27日、28日に故郷マンチェスターで行われた凱旋公演では、当時のマンチェスター・シティの本拠地メインロード・スタジアムで合計8万人を集めたライブを行った。
そう、一気に頂点を極めようとしていた。
1996年 ネブワースの頃
時代はイギリスが長引く不況から状況を脱しつつあり、1990年代前半から若い世代による音楽やファッションなどの雑多な文化「クール・ブリタニア」という現象が生まれた。
大手メディアなどからそういった芸術活動を行っていた若者達に対して契約や出資を得て発表をしやすくなり、更に独自のイギリス文化を打ち出そうとしていた頃であり、1994年には政界では労働党の党首に41歳のトニー・ブレアが選ばれた。
イギリスはマンチェスターの労働者階級の出身で、ノエル・ギャラガーの生み出す親しみを持ちやすく、先人達のフィーリングを色濃く感じやすい優れたライティングと、リアム・ギャラガーのジョン・ライドンとジョン・レノンを足したような声と形容される、力強く伸びやかな声が核となるそのバンドにイギリスの当時の世相も重なり、爆発的に短期間に人気がでた。
アティチュードを掲げ、隣にいるような兄ちゃんの普通っぽさが親しみを持たせ、フーリガン的なラッドな佇まいが若者にも一層の親近感を持たせたんじゃなかろうか。
喧嘩や、乱闘、ブラーとの諍いとか…。
何よりも楽曲が素晴らしいし、きっとその快進撃が当時の「クール・ブリタニア」なカッコよさと、その佇まいが身近な親近感を生んでいたのかもしれない。
そして1996年5月、ノエルがイギリスの朝のワイドショーで8月にネブワースで2日間にわたってライブをすると告知。
週末の金曜日からチケットを販売すると宣伝した。
1996年8月10日~11日にかけて行われたOasis史上最大の野外ライブ「ネブワース・パーク・ライブ」だ
ご存知当時はまだインターネットは本格的に普及しておらず、SNSもなかった時代だ。
チケット販売は対面販売か、電話受付でしか行っておらずその狭い門戸でも何と250万人もの人々が応募し、チケットは即日に完売したらしい。
2日間合わせて25万人を動員したネブワース・ライブ。
25年の歳月を経て、兄弟連名(!)でネブワースは映像・音源作品として2021年にリリースされて当時の伝説のライブの様子が克明に伝わるようになった。
ちなみに劇場版は2021年9月23日に公開され、アルバムは同年11月19日にリリースされた。
アルバムにはブルーレイで劇場版も収められている。
ここではその感想を…。
ネブワース 感想
ネブワースというライブを通してバンド・メンバーや、ライブを観た観衆のインタビューを交えてドキュメンタリー方式で作品は進んでいく。
先程のチケットの話だが、当時どうやってチケットを手に入れたかなどの観衆者の苦労話なども伺える。
朝早くに起きて電話を片手に解禁の時間まで待ったり、チケット・ショップに長蛇の列を並べた姿などが映し出される。
これはある意味現代よりも少し前の時代、ある意味懐かしさや事を図るのにする苦労などが思い出される。
そうして手に入れたチケットはバンド・メンバーの写真付きで、プレミアムなイベントにより一層世界に1枚感を演出したのではなかろうか。
作品を見ていると、インタビューに答える観衆やライブに訪れている人々も圧倒的に若者が多い。
それは当時Oasisを聴いていた人々はどの世代が多いかというのも伺えるし、何よりもこの事実が作品に勢いとエネルギーを与え、イベントにさらなる祝祭感を演出してくれる。
友達同士で車に乗り合って会場まで向かった話や、電車に乗りビールを持ち宿も決めずに向かっていった話や、そもそも会場までどうやって向かうのといった観衆のインタビューも収録されている。
何だろう。
先程の当時のイギリスのムーブメントや、世相の事に少し触れたがその状況や、その状況と歩を重ねるように進軍していくOasisをというバンドの活躍を、自らの将来の事と重ね合わせたかのような一種の楽観的な側面を感じさえある。
それだけ明るい。
そしてエネルギーに溢れている。
当時のOasisのエネルギーや、若者文化の勢いみたいなものもきっと凄かったのかな。
それにしてもライブ1日あたりの12万5000人の観衆の迫力は凄い。
男性も女性も多く、文字通りすし詰め状態だ。
溢れんばかりの笑顔に笑顔…。
そこでバンド・メンバーが登場すると一気に会場はボルテージがマックスに。
ちなみにリアムやノエルは長袖姿でライブに挑んでいる。
ライブは8月に行われているので日本に住んでいる自分のなかでの感覚では暑いんじゃなかろうかと思ってしまうわけだが、調べてみるとネブワースは8月の平均最高気温は22℃、最低気温は13℃と随分日本と気温が違うんだなと思い、長袖姿に納得したもんだ。
イギリスはハートフォード州北部に位置する村のネブワース。
ところ変われば気温も変わるという事か。
いやまあ半袖姿の人達も普通に捉えてますがね💦
作品の中でのバンドの演奏は当時の勢いを全面的に表すかのようなエネルギッシュなものになっている。
ノエルのインタビューで手は抜かず、リハーサルに力を入れ意識せず完璧に弾けるようになるまでクソ真面目に練習したなどと、このライブに取り組んでいた姿勢を応えている場面も出てくる。
ラッドな振る舞いや、口の悪さが先に出がちだがアニキはこの頃からプロとしての矜持を持っていたんですね。
そしてノエル兄貴も言っているが、この頃の弟リアムの声が全盛期だと言っている。
間違いない。
傲岸不遜に構え、ヤンチャなリアムだがライブ中に見せるマイクを前に後ろに手を組み天空を見つめ、がなり立てながら伸びやかに力強く伸びる声は聴く者に力を与えてくれる。
観衆のインタビューでリアムが両手を広げた瞬間にロック・スターが降臨したんだ、のような内容の受け答えをしていたがまさしく圧倒的な観衆を前にしてリアムの真価が分かるような歌いあげっぷりだ。
ジョン・レノンを意識したルックスで空間の雰囲気を一手に引き受けるかのようなその態度と声は、あの時と勢い、そして状況などが全て噛み合ったう上での奇跡のような一場面とでも言えようか。
それだけリアムとOasisは力に満ち溢れている。
それに合わせるかのようにレスポンス、合唱で歌い返す観衆達。
途中「シガレッツ&アルコール」で自らの思いを吐露する観衆のインタビューも。
自信をもって楽しめという事を教わった気がする…。
兄弟二人がコーラスする「アクイース」や、不滅であると宣言する「リブ・フォーエバー」などあの当時のOasisが歌えばどれだけイギリスの若者達の心を捕らえたのだろうか。
活気に満ち溢れたライブでそのエネルギーはバンドと観衆達の相互作用でぐんぐんと上昇気流を描いていくのである。
そして「リブ・フォーエバー」。
この不滅の宣言を当時のリアムが歌うとこんなに無敵感を与えてくれるのかと思ってしまう。
最後の「ウィ・ゴナ・リブ・フォーエバー!」と歌い上げるのがまさしく一つのクライマックスを感じてしまう。
そう。無敵感ですよ(笑)
途中、ノエルがライブで述べた伝説的なMC…
「これは歴史なんだ。まさにここ、たった今、俺たちが歴史なんだ」
それだけ充足感に満ちていたものである。
何よりもOasisの当時の情況や、観衆の若者達と作り上げる空間というのがまさしくこれからの歴史を刻んでいくという側面を持っているような気がしてならない。
観衆達とリアムの間で繰り広げられるやり取りや、ノエルが会場に駆けつけられなかったファンの事を思い、ラジオを聴いている人達よ…、みたいな事を言ったりする場面もある。
ファン思いでもあるのかな。
映像で流れる数々のOasis・Song。
当時のソング・ライティングを一手に引き受けていたノエルは歌詞には特段意味を込めてないと言っていたが、「ホワット・エバー」など大いに励まされる好きな歌もある。
「何だろうと自分が選んだものに俺はなれるんだ。」っとありったけの自己肯定をし、それをマイクに声でもって叩きつけるリアムの姿と歌声は本当にそんな気さえなる。
ノエルがリード・ヴォーカルを取る人生の自らの歩む定義を意義付けたかのような激渋ナンバー「マスター・プラン」など胸が熱くなるナンバーも最高だ。
ハーモニカ奏者のマーク・フェルサム氏のハーブの音色、ノエルとサイド・ギタリストボーンヘッドのアコギの調べとストリングスの豪壮な音色全てが噛みあい、感動的なナンバーとなっている。
更にはライブ会場にいた若者達のこれから人生を漕ぎ出そうとする心情を捕らえたものだったんじゃなかろうか。
作品終盤で自身の代表曲「シャンペン・スーパーノヴァ」では元・ストーン・ローゼスのギタリスト、ジョン・スクワイアの姿も見られる。
ローゼスに憧れていたメンバー達には非常に感慨深い思いを吐露しているインタビューもある。
そして劇中でもジョンのギターを大々的にフィーチャーした内容に。
ラストは当時最後に演奏していたビートルズのナンバー「アイ・アム・ザ・ウォルラス」でその興奮を一手に収めるかのようにして終わる。
リアムの突き刺さるかのようにしてOasisとしての「アイ・アム・ザ・ウォルラス」は会場を包んでいくのである。
こうして作品は終わっていく。
最後に
一つの伝説的なライブの記録と共に、それに関わった人達の貴重な記録の全集。
あの時代、Oasisはどのようにしてそこまで一気に駆け抜けていきどのような力を人々に与えていたのか。
さらに当時のイギリスの文化や状況、若者達の声や価値観を推し量るのに貴重な作品といっても過言ではないのかも。
Oasisの乗った上昇気流と観衆達のこれから歩んで行くであろう人生が良い意味でクロス・オーヴァーし、はち切れんばかりのエネルギーを生み出したのではなかろうか。
今よりもインターネットは発達しておらず、SNSも無い時代。
それはひょっとしたら目の前の出来事が、語弊があるかもしれないが、今よりも記憶的な側面で濃厚に強い事だったのかもしれない。
それ程にネブワースのライブは素晴らしく、勢いのあるものになっている。
何よりもバンドの一つの到達点とも言える、パワーもエネルギーも全盛期とも言える頃の記録。
やはりOasisは今でもマストな大好きなバンドだ。
記事を最後まで読んで頂き誠にありがとうございます!
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