秋の…
「秋の夜」
俗に言う「秋の夜長」
静かに、まったりと。
辺りを休息の気配が支配する。
季節によって冷やされた暗闇は、思考を浮かべるのにちょうど良い。
静寂の読書…
やはり何かを行おうという意欲が湧いてくるのは優しさのおかげでもあろうか。
このまま確かに秋の気配が深まっていけば良いのだが…。
今年は何かにためらうように、季節は行ったり来たり。
日中は夏の陽気を思わせる。
街を歩くと…
長袖の人
半袖の人
かくいう自分は半袖を。
まだまだ半袖を手放せない。
消えそうで消えない薄暑。
どうやらやり残したことがあるのだろうか。
四季の境界線を越えていっても、「名残り」の残像は消えそうにない。
そうすると本当に急に冬が訪れそうだ。
それまでひょっとしたら日中は半袖でもいけるのではないか…。
少しは「秋」の気分を味あわせてほしい。
なので余計に「涼しい秋の夜」は貴重な時間と感じてしまう。
「秋の雨」
雨が降る。
山から立ち上る白靄
その様子はあたかも何かしらのためらいを表しているかのよう。
進むべきか
消えるべきか
その一粒一粒が大地を潤し
色濃く滲んだ暑さの記憶を拭い去る。
清々しく濁りのない空気。
一呼吸するたびに冴えた「季節の迷い」は体内を巡っていく。
もう、迷いに居場所はない。
ためらう必要もない。
朝の空気の清浄さのように
一夜のしてその迷いを吹っ切ってくれればいいのだが…。
「雨上がりの秋の夜」
柔らかく、ゆったりと。
秋の夜は優しい。
自然と聴く音楽も変わってくる。
暑い夏には何となく刺激的な音を。
涼しくなってくる季節には静かな音を。
それはまあ人それぞれではあるが…。
こんな優しくゆったりとした秋の夜にはジャジーで、生音の柔らかいニュアンスをまとった曲を聴きたい。
ピアノ音。
ピアノの鍵盤をたたくと、鍵盤につながったハンマーが動いて、それぞれのピアノ線をたたくことで音が出るという仕組み。
ピアノの調べは一種の温もりのようなものを感じる。
何となく秋とピアノって合っているような…。
雨が止んだある秋の夜。
ピアノの音色が響く。
「Please Call Me,Baby」
恋人と相反する思いを抱え、ケンカなどを繰り返しつつも
それ以外の、それだけじゃないことを歌い
矛盾する気持ちを静かに綴る。
出て行った恋人に「Call me baby」。
「電話をくれよ」
外は寒く、冷たい雨が降りしきる。
そんな中を彷徨ってちゃ風邪をひいてしまうよ…。
トム・ウェイツの弾くピアノと、味わい深い声が正反対の思いを抱えた一人の人間を歌う。
お前にはどこかに行ってほしいと思う。
だけどそれと一緒くらいにそばにいて欲しいとも願う…。
土曜日の夜「The Heart of Saturday Night」に収録された一曲。
季節の迷いを感じる秋の夜。
雨が上がり静かに流れる夜の闇。
「雨」や「今夜」というキーワード、そして矛盾した思いや態度に悩みつつも、一緒にいることを願う…。
まさしく今にピッタリなんて思ったり。
秋夜のプレイリストとして聴いていきたい一曲だ。