見出し画像

言うべきか、言わざるべきか

この世界情勢を受けて、ガス電気が値上がりするというので、ガス屋さんに電話して見積りをとることにした。

あれこれ話し、最後に資料を送るからと名前を聞かれる。


「アビカ・イトダ」

これ、大概一回では聞き取られない。

何とかわかりやすいように、
「イトーダ」と
ちょっとアクセントをつけて言ったり、

「 I(アイ)、T(ティー)、O(オー)…」
とスペルで言ったりするが、

アルファベットでさえも、

私「T(ティー)」
相「P(ピー)?」

私「NoNoNo, T(ティー)」
相「Yes,P(ピー)」

とか言われ最終には
「トマトのT!」と言ったりする。

『イポダ』てそんなおかしい名字があるか、と思うが、そんなもん、イギリス人にわかるわけがないのでしょうがない。

そんなことだから、今回も何度も聞き返されることを想定しつつ、

まずはサラッと言ってみた。

「アビカ・イトダ」

「OK」


お、オッケー?

まさかの一発OK。
この20年で初と言っても過言ではない。私の発音も、とうとうここまできたか。うふふ、うふふと悦に入りながら郵便を待った。


で、届いた郵便物。

宛先の私の名前は

『アビィ・カーンヌ・イッツダイン』

と、セメダインみたいな名前で送られてきた。

長くなっとる。
勝手に3部構成になっとる。

もちろん、これは本名ではないので、
実際は違うが、実は本名の方が100倍面白かった。本名を公開しようかと思ったほどに。

でもまぁ、良い。

こんなことは慣れている。
今まで、いろんな名前で呼ばれてきた。
一文字も正解が入ってないこともあったし、
間違った名前を刻んだトロフィーももらったことがある。

けれども、身分証などの、後々困るものでなければ、いちいち訂正や修正などの指摘はしない。

しかし、

そんな大雑把な私が、唯一「や、コレはちょっと」と思う『間違い』が2つある。

それは、イギリス人ではなく、
日本人からの『間違い』なのでありまして。


まずは、

夫が勝手に「櫻井よしこ」と呼んでいる、日本人マダム。

年に1回ある、日本人の集まりで毎年お会いする。逆に言えば、毎年この会でしかお会いしない。

いつもスーツにヒールを着こなされる学者で、著書も多数。知性溢れる櫻井よしこ似の美人で70歳ほどだろうか。


当然ながら記憶力も抜群で、年に一度しかお会いしないのに、うちの子供の年齢や習いごとなどをきっちり覚えていてくださり、毎年進捗を聞いてくださる。

彼女との会話はすごく緊張する。
じっと目を見られると、私のバカ具合を採点されているような気になって勝手に怯えてしまうのだ。


とはいえ、その緊張は差し引いても、
実は毎年、会話に何だかの違和感があった。

何だろー、何だろなー、

そう思いながら、何年も経ってしまったが、

それが、前回の集まりで判明した。

直立不動でお話していると、

「あびかちゃんも大きくなったわね」
「毎年伸びかやに成長されて」



伸びやか…
ワタクシめが…

と、ここでやっと気がついた。
どうも、娘の名前が「あびか」だと思っておられるよう。

確かに私の本名は、私の年代にしたら少しモダンかもしれない。
公務員のクソ真面目な父が「キャバレーにおりそうな名前で善き」とよくわからない理由でつけた。

「いえ、『あびか』はワタクシです」

とすぐその場で言ったら問題なかった。
でも気づいたのは会話の後。

わざわざ「違いますよ」と言いに参じるのもどうかと思う。

えー、でも。
気づいちゃった以上、お伝えしたい。


ままよ‥‥

わざわざコーヒーを受け取ってらっしゃる櫻井氏の横へ並び、「あびかはぁ、コーヒーはぁ、ブラックなんですぅー」


とアホみたいに言ってみたけれど、
「あらそう」で終わった。

うーん。

どうしよう。
言いたいけれど、何年もの思い込みに、どうお伝えすべきか悩むのである。


と、1つ目がムダに長くなってしまったので、続きます…


続きでございます↓

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?