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まちづくりについて学ぶ「豊中地域創生塾」参加レポート①【番外編】

 こんにちは、あべのって学生部です!
 今回は番外編として、学生部noteの中の人である僕、25歳大学院生・HMが「まちづくり」を学ぶ講座に参加した話を記録してみます。

 今回の学びをざっくりとまとめると、

・自分やまちの"課題"や"ニーズ"(という重苦しい言葉)を、大喜利の"お題"として捉え、面白がる。

・自分のストーリーや身近な"お題"から出発し、ミニマムに、"軽やか"にプロジェクトを始める。

 以下、具体的な講座のレポートと共に、今回の学びをシェアしていきます。あべのって学生部全体の活動ではありませんが、学生部メンバーの一人である僕がまちづくりについて学んだ記録や、それを学生部の活動に落とし込んでいくプロセスとして読んでもらえたら嬉しいです。


まちづくりへの関心・とよなか地域創生塾

 僕は、地元・あべの/昭和町の変化に対する興味関心や、「あべのって学生部」への参加、大学院での研究をより身近な社会に実装したい、といった想いをきっかけに、現代日本の「まちづくり/地方創生」にも興味を持ち始めました。

 しかし、大学院での研究対象は主に海外の事例や、実践よりは理論的な領域です。ですから、「まちづくり」のリアリティや、現場の温度感については疎い、というのが実情でした。

 そんな中たまたま見つけたのが、「とよなか地域創生塾」。

第7期「とよなか地域創生塾」のポスター

 豊中の地域を活性化することをテーマに、近隣地域で「まちづくり/地域創生」に取り組んでいる方を講師に迎え、講義や実践ワークを繰り返していく、というプログラムです。

 ちょうど自分に欠けている「まちづくり」のリアリティや温度感を味わい、0から1を生み出すヒントを得られそうだと感じました。豊中市の委託事業ということもあり、約半年間のプログラムにも関わらず、大学生の受講料は1万円。なおかつ、「行政の委託にしてはビジュアルもかっこええしプログラムも硬すぎへんしええ塩梅やんけ!」ということで、即受講の申し込みをしました。

会場は、今年新しくできた豊中市のコミュニティセンター「庄内コラボセンターショコラ」
めちゃくちゃキレイな施設でした 羨ましい

10月8日・とよなか地域創生塾 開講式

講座概要

 そんなこんなで10月8日。「とよなか地域創生塾」第一回目、開講式+キックオフイベントに参加してきました。

 会場は、講座のメイン拠点となる、豊中市に新設されたコミュニティセンター「庄内コラボセンター『ショコラ』」。まずは、施設のセンター長であり、とよなか地域創生塾の塾長でもある橋本さんからご挨拶がありました。

橋本さん

 今年で第7期となる「とよなか地域創生塾」は、これまでから運営体制を大きく変更しました。今回、講座の企画や運営を担うのは、尼崎を中心に「ミーツ・ザ・福祉」というイベントなど、まちや暮らしに関わる取り組みを行っている、生態系を編み直すローカルクリエイティブカンパニー・株式会社「ここにある」さん。

 浅学ながら会社としての「ここにある」のことは初めて耳にしたのですが、「ミーツ・ザ・福祉」のことは『パーパスモデル』という本で目にしたことがありました。「障がい」や「福祉」といった、少し重苦しくも感じられがちなテーマを、カルチャー的な感性で楽しく昇華していく、"今っぽい"イベントです。その運営会社が今期のとよなか地域創生塾を担当していく、ということで、「"いわゆる行政からの委託"とは一味違うんちゃうか」という、講座を見つけたときの予感が確信に変わった瞬間でした。

 橋本さんの話しぶりからも、「現場やリアリティを知らない行政」の、お題目ファーストでの「地域創生」ではない、あくまでも地域のニーズ・実態や受講生に寄り添った形での情熱を感じられました。

 この日の講師は4名。

・今年度、第7期の「とよなか地域創生塾」を運営していく、株式会社「ここにある」の藤本遼さん。

藤本さん



・この界隈では知らない人のいない、SDGsマガジン『ソトコト』編集長の指出一正さん。

指出さん



・池田市にあるお寺、「浄土真宗本願寺派如来寺」の副住職であり、お寺の蔵書を一般開放する私設図書館「ふるえる書庫」の運営なども手掛ける釋大智さん。

釋さん



・兵庫県川西市を中心に、カレー屋ラーメン屋など、小規模な飲食店をたくさん経営している久木田郁哉さん。

久木田さん


 まずは、藤本さん、指出さんが聞き手となり、釋さん、久木田さんそれぞれの活動を深掘りしていきました。

釋さんの場合

 釋さんは、先ほどご紹介した通り、池田市にあるお寺、「浄土真宗本願寺派如来寺」の副住職さんです。そして、お写真を見ていただくと分かるように、"いわゆるお坊さん"には見えないサブカルな佇まいをしています。(当日、藤本さんから「ラッパーですか?」と突っ込まれていました。(笑))

 そんな装いに違わず、

・住職の蔵書を開放する私設図書館「ふるえる書庫」の運営

・LUCUAにお坊さんが出張して人生相談を行う「お坊さん喫茶

・コンテナの中に仏像を配置し、最低限の要素でお寺を表現することで、「お寺とは何たるか」を問う「コンテナ寺

・BOOKOFF×仏教をテーマにしたトーク企画

・仏教をテーマにしたフリーペーパー「フリースタイルな僧侶たち」の発行

 など、保守的な人が見れば目玉が飛び出しそうな、新たなアプローチで仏教を広める試みをたくさん手掛けています。しかし、釋さんがこういった一見型破りで楽しげに見える活動を始めたきっかけは、意外にも「絶望」に近いものでした。

豊中のお隣、池田市にある浄土真宗本願寺派如来寺

 300年以上の歴史を持つお寺に生まれた釋さんは、思春期の頃、自分の人生のレールがお寺の跡継ぎとして半ば決まっていることを悟り、「自分は一生このまちから出ることはできない」と、未来に対して暗い気持ちを抱かれたそうです。そうした葛藤の中から、「このまちを出られないのであれば、自分がこのまちを面白くすればいい」という覚悟に至りました。

 釋さんの最大の武器は、釋さんにとっての"枷"でもあった、ご実家の「お寺」です。「浄土真宗本願寺派如来寺」が数百年かけて積み上げてきた地域との信頼と関係性は、釋さんに様々なご縁を運んできたといいます。


 例えば、「ふるえる書庫」は、檀家さんから建物を譲り受けたところが出発点でした。お父様であるご住職の膨大な蔵書が家に収まりきらなくなっていたタイミングで、現在ふるえる書庫として使用している建物を譲って頂くお話が持ち上がってきたそうです。そこに、釋さんがイベントで知り合われた建築家の方とのご縁を繋ぎ、私設図書館・ふるえる書庫ができました。

 釋さんは他にも、同じく檀家さんから譲り受けた日本家屋で、地域の高齢化課題解決に貢献すべく、老人ホームの経営もされています。こちらは古い日本家屋らしく、玄関の段差や急な角度の階段など、バリアフリーとは程遠い設計の建物です。しかしその分、日常生活が適度なリハビリになり、「ご入居者さんの入れ替わりが緩やか=長生きされる入居者さんが多い」んだそうです。

 ご実家であるお寺が長年かけて地域と積み上げてきた人々との信頼から密なコミュニケーションが生まれ、ご自身やご家族含め、まちやそこに暮らす人々の生の"課題"や"ニーズ"を釋さんがすくい取っていく。地域に根ざした課題をスタート地点に、地域に軸足を置きながらも、異業種の方との交流など、まちの外に向かって半歩飛び出していく釋さんの好奇心が、新たなご縁を呼び込んでくる。

 釋さんは、最近流行りの「寺カフェ」について、「外で見てきたものを真似て『こういうお洒落なものを作りたい!』を起点にしてしまうと、どこかで見たような均一的な仕上がりになってしまって、個性が出ない」とも言っていました。ないものを持ってくるよりも、既にまちにある日常や、そこに暮らす人々のニーズから出発すれば自ずと個性が出て、それが結果的に、地域との結束を強め、また、外からも新たなヒト・モノ・コトを呼び込んでくることに繋がっていくそうです。

久木田さんの場合

 久木田さんは、ご出身である地元・兵庫県川西市で、カレー屋やラーメン屋を中心に小規模な飲食店を多数経営していらっしゃいます。常に新規出店できる物件を探しているそうで、その一環として、発見した面白そうな物件情報を知り合いに送り付けまくる、というパンチの効いた生態をお持ちでもあります。(藤本さんも、「LINEに物件情報がいっぱいくる」と苦笑いされていました。)

 そんな久木田さんについて、まず僕が抱いた印象は「"まちづくりの人"っぽくないな」というものでした。

釋さん(左)と久木田さん(右)

 これは個人的な"偏見"なのですが、「まちづくり」に関わるような人は、僕が今まで個人的に出会ってきた方や、今回の講師の藤本さん、指出さん、釋さん含めて、"カルチャー"との親和性が高そうな人が多いです。一言でコレといった特徴は説明できないのですが、服装や佇まい、話し方など、内側から強い趣味嗜好が漏れ出ているような印象です。

 その点、久木田さんは、当日のそれまでの佇まいや淡々とした話し方、服装など含め「ビジネスパーソン」っぽい印象が強く、他の3人の講師の方とは少し毛色が異なるように感じていました。しかし、実際に久木田さんのお話を聞き始めると、そんな第一印象は全く当てになりませんでした。(笑)

 久木田さんが「まちづくり」の活動を始めたきっかけも、釋さんと似通ったものでした。一度地元である川西市を出て、ご家庭の事情で27歳の頃に地元に帰ってきたとき、地元を出た知り合いも多く、高齢化していくまちを見て「なんかおもんないなぁ」と感じたそうです。しかし、「自分が楽しめるまち」を作り上げるにしても、釋さんにとって「お寺」のような、拠点になるようなご縁を持っていなかった久木田さんは、元々の関心と、地域に入り込むためのファーストステップを合わせ、駅前で小さなカレー屋を始めることにしました。

 ここまでは、地元で飲食店を営んでいる方のエピソードとしてよく聞くお話かもしれません。しかし、久木田さんの本領が発揮されるのは、ここからでした。

 「ただ飲食店を経営する」だけでなく、それを通じて「自分にとって面白いまちを作る≒自分にとって居心地のいい時間・空間を広げる」ことを目的としていた久木田さんは、ご自身のカレー屋さんで、子ども食堂を行いました。子ども食堂の取り組みによって、強い地縁のない中でも地域の信頼を獲得し、その信頼を通じて、地域に顔がきく、福祉の取り組みを行っている方々との繋がりが生まれました。

 飲食店だからといって、"商工会議所"ではなく、"福祉"のコミュニティを第一歩に選んだのも、ご自身の性格や相性、居心地の良さを考えてのことだったそうです。こうして、まずは"柔らかい"コミュニティと繋がりができ、以降は紹介を通じた程よい距離感で、数珠つなぎ的にまちの中に居心地のいい居場所を拡大していったといいます。

 並行して「Twitterでも暴れていた」という久木田さん。元々、一緒に温泉に入る友達をネットで募集するなど、インターネットを通じたコミュニティも構築していた久木田さんは、インターネットで出会った"友人"たちを、まちのコミュニティの中にも呼び込んでいきます。

 川西市に帰ってきてからの飲食店経営の経験、ノウハウや、地域とのつながりを活用して、職を探していたり、人生に迷っているようなネットの"友人"に、ご自身が見つけた物件を"あてがい"、従業員として雇用していきました。(ここでの話しぶりが、「シミュレーションゲームの話でもしているのか?!」というような淡々としたサイコぶりで、僕も含め、会場全体が久木田さんの楽しみ方を理解した瞬間でした。(笑))

 「いわゆるラーメン屋の元気なお兄ちゃんとかはあんまり相性が良くないんで、ネットで見つけたちょっと元気のない感じの人の方が居心地いいんですよ」ともお話していた通り、ご自身が面白そうだと感じた物件に、ご自身が見つけた相性のいい人を呼び込み、まちの中に居心地のいい空間を拡大していった久木田さん。まちの人々との距離感や信頼関係も考慮しながら、「まちの外から人がやってくる」ことに対する反発も上手に回避していきました。

(※余談ですが、そんな久木田さんが、「"ちい"きの"かわ"った人」を紹介する「川西市ちいかわ図鑑」はこちら。ネーミングセンスが好きすぎて一人でめちゃくちゃウケてました。)


軽やかさとワークライフミックス

 釋さん、久木田さんのお話を受けて、以降は藤本さん、指出さんを交えたクロストークが行われました。釋さん、久木田さんのお二人に共通していたのが、

・活動の出発点に、自身の境遇があったこと。

・活動をはじめる動力源として、自身の「面白い」を大切にしていること。

・その上で、地域や周囲の人々の"課題"や"ニーズ"を編集していくこと。

でした。

 また、釋さんの老人ホームの取り組み、久木田さんの無職の人たちに職を斡旋するような取り組みは、(意図的であれ、そうでなかれ)社会的に困難を抱えた人たちをケアしていく福祉の取り組みでもあります。しかし、ある種、悲壮感や重苦しさが感じられてもおかしくないこういったお話を、お二人とも、全くマイナスの空気を感じさせない形で話されていました。

 指出さんはそれを受けて、お二人の活動について「"課題"という重い言葉を大喜利のような"お題"と読み替えて、"軽やか"に編集していく試み」である、という風に評していました。

 釋さん、久木田さんはじめ、こういった"まちづくり"の活動に関わっている人たちには(僕も含めわざわざ「とよなか地域創生塾」を受けに来る受講生の皆さんもそうだと思いますが)、新しいヒト・モノ・コトに出会いに行く"フッ軽"さが備わっていると思うのですが、物理的な足取りだけではない"軽やかさ"が、まちづくりを楽しむための一つのキー・アプローチになるのだと思いました。

 もちろん、"軽やか"であろうと心がけても、人間には時間にも気力にも限界があります。その点、釋さんと久木田さんは、ご自身の元来の境遇や身近な課題から活動をスタートしている分「ワークライフミックス」として、良くも悪くも人生とプロジェクトの線引が曖昧であることが、軽やかさの秘訣である、と語っていました。

 身近から出発するワークライフミックス。昨今、プログラミングでも起業でも"アジャイル"的な考え方が重視されていますが、"まちづくり"も一つのプロジェクトであると考えると、有効なアプローチなのだと思います。

(もちろん、これについては、全ての人に当てはまるアプローチではない、という点も強調しておきます。藤本さんも「遊びのままの方がいいこと、事業にした方がいいこと、それぞれある」というお話をされていたことが印象に残っています。)

まとめ

釋さんの場合②

 釋さんの今後の目標は、「地縁を超えたコミュニティシステムの模索」すること。

 例えば「ふるえる書庫」ではメンバーシップ制を導入しているのですが、意外にも、メンバーの多くは身近な地域の方ではなく、むしろ遠方に住んでいる、頻繁にふるえる書庫に通うことのできない人たちなんだそうです。

 これについて釋さんは「(目には見えない)精神的な距離を買う・日々の生活の変化に関わっているという実感を買う」という、新たな関係性の可能性を見出していました。

久木田さんの場合②

 久木田さんは、ご自身の活動について、「都市・ネットで集めた構造的・抽象的なヒト・モノ・コトを、ローカルで集めた個別・具体的なヒト・モノ・コトとかけあわせる」ことという風に総括されていました。

 活動紹介の中では「知っている物件に知っている人をあてがう」という、シミュレーションゲームでもプレイしてるかのようなサイコな話しぶりをされていましたが(笑)実際には、ヒト・モノ・コトが溢れかえり、構造的・抽象的なネットワークの中に取り込まれ、"個"を見出すことが難しい時代に、個別・具体的に、一つ一つのヒト・モノ・コト(特にヒト)と真摯に向き合い、関係を築いていくことを続けている、という印象を受けました。だからこそ、久木田さんにとって――そして周囲の人たちにとっても居心地の良い空間が広がり、続いているのだと思います。

僕たちの場合

 講座の中では、お二人のお話を受けて、受講生同士で「とよなか地域創生塾」を受けに来た理由、塾から学びたいことや、講座期間中やその先に実現したいこととその課題などについて話し合いました。

 僕のグループは、僕(学生)と、お子さんをお持ちのお母さんが二人、お仕事をリタイアされた男性が一人、と3世代(と言ってしまって失礼ではないはず……)にまたがるメンバーで話し合いました。

 何故まちづくりに興味を持ったのか、何をしたいのか、といった部分はバラバラだったのですが、共通の課題として浮かび上がってきたのが「拠点やご縁などがない中で、どのように活動の一歩目を踏み出せばいいのか」ということでした。

 その課題・疑問に対する一つの答えがまさしく、「自分の身近に"お題"を発見し、"軽やか"に編集してみること」です。

 以降の講座を通じて、お題の発見の仕方や、編集のアプローチの実例をたくさん吸収し、ミニマムスタートでもなんでも、なるべく軽やかに実践していきたいなと思いました。


 最後にもう一つ。
 「そんなことは頭ではなんとなく分かっているけど……」と、どうしても動き出せない大きなメンタルブロックの一つに「トラブルへの恐怖」があると思います。この恐怖や懸念に対しては、キックオフ講座の中で会場が一番沸いた久木田さんのパンチラインを思い出しながら軽やかさを保ってみようと思います。

「相手が"怒っている"ことと、自分が"怒られている"ことは別なので。『"この人は怒ってるんやなぁ"』と思えばいいんです。自分は怒られてないんです」

10/8 とよなか地域創生塾 久木田郁哉


 などと偉そうに学びをまとめていますが、この記事をアップするまでに一ヶ月以上かかってしまっている時点でまだまだ"軽やか"じゃないな、と自分の課題を再認識したのでした。講座を通じて克服していきたいですね。


筆者:増田ひろ

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