ファネル最適化における多能工の役割(後編)
前回の記事はこちら。
https://note.com/abcdefghe/n/n46851a4aa2f2
前回は多能工について、専門職との比較によって、その内容を理解するとともにファネル最適化には多能工の存在が重要であることを述べました。
今回は、多能工がもたらす弊害について言及するとともに、ファネル最適には多能工に何を加える必要があるのか?をまとめていきたいと思います。
KPI管理が苦手な多能工たち
多能工は、KPI管理が大の苦手です。ファネルも嫌いです(笑)
なぜなら自分たちの仕事の成果を正確な数字では出せないからです。勿論、多能工な営業は売り上げをしっかり確保しますが、そのプロセスを細分化したKPIは闇の中で、なぜ売り上げがいったのか?についての説明は下手くそです。
困っている隣の部署がいれば、平気で応援をしてしまうし、自分達が破綻しそうになったら、他の部署からのヘルプを受け入れてもしまいます。
勿論、これは多能工の甘えの部分もあります。
本来なら誰にどれだけのリソースを貸したか、借りたかをしっかり記録すれば、数字で表現できるはずなので、そこは多能工がサボりがちであるよくない習慣、悪習とも言えます。
多能工の致命的欠陥は、経営判断にも及びます。例えば、本来はもっと人を割かねばならない部署があるのに、周りの部署の多能工がその部署を助けてしまうと、経営者は投資判断を誤ることになります。
その部署にとっても、助けている部署にとっても長期的には、不幸を招きます。本来であれば、投資を受けて人が増えたかもしれない部署に人が回ってこないとなれば、その部署は慢性的に人手不足になり、周りの部署が応援し続けないと成立しない状態になります。応援している部署も他部署を助けながら自分の仕事をすることになり「生産性が低い」とのレッテルを貼られて不当な評価を受けることになりかねません。
ですので、多能工が多能工として組織にいるだけでは、ファネル最適化には結びつきません。それどころから、ファネル最適化の阻害要因になりえてしまうのです。
多能工が時代遅れになった理由
多能工が時代遅れになった理由は、ここです。
かつて高度成長期には、働いた分だけ会社も組織も大きくなりました。つまり兵站はいつでもあったのです。人は入ってくるし、金は回ってきた。どの部署もまがいなりにも人がいるし、自部署の中で助け合うこともできた。要するに本業に集中できたのです。自分を磨き、部下を磨くこと、そのことだけに集中できた。
しかし、今は違います。選択と集中を行い、必要なところに必要な予算を充てるという考え方が中心の時代です。この「必要なところに必要な予算を充てる」ことに関する説明が多能工は苦手です。そういう考え方を持つ訓練が少なくても、今までは生きていけたからです。
ここの訓練もできている多能工がいる会社はとても強いと思います。或いは、自分たちが今まで接点が少ない部署と手を取り合える多能工も強いと思います。例えばIT部門、例えば経営企画(大体こういう部署とは普通は話が噛み合わない)と、話をすることができるどうかです。
予算を取るのが上手い部署(=本社部門)とタッグを組むのは、多能工部門だけでなく、声をかけられた部門にもメリットがあります。実務を知りたい本社部門と、予算を得るための会社ルールを知っておきたい多能工部門。そこが結びつけば、お互いがお互いの足りないピースを埋めれくれるはずです。
第三の道 アウトソーシング
もう一つ大事な要素があります。それは選択と集中で、人も予算も削られた多能工は、後進の育成をすることが難しくなった点です。先程の通り、部門を超えて人を融通するくらい人が足りません。人を育ててる暇もないのです。
しかし、先ほどからお伝えしている通り、多能工がいないとファネルの最適化は維持できませんので、多能工は一定割合で輩出し続けなくてはなりません。そのためには、アウトソーシングの使い方も多能工は身につける必要が出てきます。
それは、自分たちが自分たちを多能工たらしめているコア(スキルなり、伝統なり、美徳なり、理念なり、技術なり)が何かを見極めるということです。おそらくこれらの要素を全てできることが自分たちたらしめているという結論に、最初はなるでしょう。
しかし、ここを乗り越えないといけません。全部できることと、全部を実際にやることは別です。コンビニの店長はレジ打ちも棚卸しもできるかもしれませんが、普段はそれをやっていないかもしれません。それはバイトにやらせた方が経済的だからと判断しているかだと思います。
同じように、全部できるし、後輩にも全部できるように指導はした方が良いでしょうが、自分がすでにできることを、実際に全部自分でやる必要はありません。自分でやらず外に出すという知恵を身につけるべきです。
ここを意地張って内部でこなし切ろうとすると、大きな負荷をチーム全体に強いることになり人を育てるリソースがなくなります。コアでない部分を見極めて、仕事を外に切り出し、自分たちの仕事に磨きをかけるべきなのです。
まとめ
ということで、多能工は「何もわかってねー本社部門」と嘆かず手の内を見せてあげましょう。
本社部門はネタに困ったら多能工に聞き、彼らを楽にさせることに投資枠を使用することです。
そうして互いに敬意を持ち、信頼し、ともにプロジェクトを進め、ファネル最適に尽力することが必要だと思います。
ということで、また。
現在サポートは受け付けておりません。