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ファネル最適化における多能工の役割(前編)

多能工を知っていますか?

多能工とは、いろんな仕事ができることを言います。ユーティリティプレイヤーとでも言いましょうか?

ことメーカーのマーケティングや営業サイドで言えば、今時の言葉で言うと、マーケティングファネルを一人でこなせる人材です。

つまり、新規開拓訪問を行い自分を知ってもらい(認知)、相手が食いつきそうな分野を察知し提案活動を行い(興味)、購買に結びつけ(購入)、買った後のメンテやトラブル対応も行いながら通い続ける(ファン化)という一連のサイクルを行える人です。

ファネル一人回し人材の良し悪し

こういう人材のメリットは、少なくとも自分が食べていけるだけの金額は稼いできてくれる、どの職能にはめても大体対応できる使い勝手の良さ、弟子を与えて時間をかけることを許せばパワフルな人材を育成してくれる、と言う点があります。さらにこうした人材が経営感覚も身につけることができて、幹部から見染められれば、現場が分かる頼もしいリーダーにもなり得ます。

一方で、デメリットとしては、自分一人の力でやるので一定の金額以上は伸びない上に、大量に画一的には人材を育てられない、現場が好きすぎてリーダー候補にはなりにくい、優秀すぎて他社に引き抜かれる、と言う点が挙げられます。

ところで、多能工の対局に専門職というものがあります。例えば、営業という職務の場合、多能工と専門職では、どのような違いが生まれるでしょうか?

多能工な営業は、自分で顧客を開拓〜アフターまで全部自分でやりますが、専門職の営業は、勿論ファネル上の領空侵犯は良くも悪くもしないので、「購入」の領域に特化して対応します。

彼らにとっては、ファネルの上流である「認知」や「興味」の部分は、マーケや別の組織が行い、そこから流れてきた商談を決め切ること(「購入」に集中する)が自分の役割だと認識して進めます。下流の「ファン化」についても、カスタマーサクセスの仕事との認識でしょう。

多能工は必要なのか?

それで今の時代に、こうした多能工は必要なのか?ということですが、結論から言えば、多能工こそが現時点の日本社会には必要だと思っています。

なぜか?それはファネル全体を最適化できる人材があまりに少ないからです。

例えば、デジタルマーケティングの専門家、プログラミングの専門家は、目指すべき設計図が描かれていれば、最適なアーキテクトはできるでしょう。

しかし、現時点で理想の設計図を描くには、よほど優秀なマーケターや経営企画(ここでは通称:「本社部門」と呼びます)がいるか、もう一つは多能工によってファネル設計を行うかの2つだけのように思います。

専門職としての営業と専門職としてのプログラマーが集まって話し合いをすれば、営業業務の最適化は実現するかもしれません。しかし、ファネル全体の最適化は難しいでしょう。

だからといって、全職能を集めてファネルを最適化できるかといえば、これは至難の業でしょう。利害関係が一致しない部署もあり、議論は紛糾することになります。限られた予算の中では、ファネルの最適化はどこから手をつけるべきか、合理的な決断を難しくします。

何よりも結局誰がリードしてファネル最適化を進めるのか?という意味においては、専門職集団だけでは、誰もそのリーダー的な役割を担えません。

なぜなら、営業はどれだけ売ったかが指標であり、ファネルの最適化はミッションには含まれないからです。他の部署も同様に自分のKPI実現に必死なはずです。

先程の通り、ここで優秀な本社部門がいて、しっかりと音頭取りができてプロジェクトをリードできれば、ファネル最適化は実現できると思います。しかし、そんな優秀な本社部門がいるのは稀です(本社部門に限らず、どの部署においても、優秀な人材とは稀なものです)。

しかし、多能工がいれば、話が変わってきます。他の部署がどれだけ仕事が大変か分かるからです。どこに一番の問題や課題が潜んでいるか、経験的に理解しています。また、最初にどこに手をつけるべきかも、本当は知っています。ファネルの全体最適のヒントは多能工が持っている可能性は高いです。

しかし、それくらい柔軟な故に、実は、多能工は大きな問題を抱えており、ファネル設計最適化を却って阻害する理由にもなりるのですが、その説明は次回行います。

今日はここまででです。

次回は、多能工のファネル最適の阻害要因について言及するとともに、ファネル最適には多能工に何を加える必要があるのか?をまとめていきたいと思います。

ということでまた。


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