VPPとは何か(4)「FIPって何だ」
前回の記事はこちら。
前回まででVPPの基本と電力の市場化の内容についてご紹介しました。今回からはさらに踏み込んで、直近の電力事情や再生エネルギー電力の価格決定の仕組みについて学んでいきます。
直近の電力事情
直近の電力事情のポイントは以下の通りです。
①世界的な環境意識が高まっています。さらに日本はフクシマを経験しました。
最近目にすることも多いSDGs。持続可能な開発に必要な要素が脱炭素社会です。地球温暖化を促進するとされるCO2抑制は、その社会的な要請が日々高まっています。日本は原発によってCO2を発生させる火力発電の使用量を抑えてきましたが、フクシマの事故によって戦略の見直しを迫れられることになりました。
CO2抑制策としては再生可能エネルギーの活用があり、一番有名なところでは太陽光パネルの活用があります。
②太陽光パネルの利用には優遇制度がありましたがまもなく終了を迎えます。
この市場価格よりも高く固定の価格で電力を買い取ってくれる仕組みをFIT制度と呼びます。この制度があるので多くの人が高い太陽光パネルを購入しても、後から売電で取り返すことができました。国としてもそういう優遇策を導入することで太陽光の普及を目指し一定の成果がありました。
③電力自由化が進み誰でも電力を売れる時代になりました。
ここが一番重要なポイントです。電力自由化とは、「売る」が自由化されました。つまり電力小売事業に誰でもなれるようになったのです。ガス会社や通信会社が参集しているのを見たことはあると思います。
ちなみに上述したFITは市場原理が働かない固定買取価格の制度でした。そして、この余った電力を買い取っていたのは旧来の電力会社です。この電力会社が買い取った電力を需要家に売っていました(当然ながら電力会社が電力小売事業として電力を売っていた)。
この制度が終了して、そして電力自由化で誰でも電力小売業者になれるとうことは、誰でも電力を自由に売買できるということです。
この自由に売買できる市場についてもう少し詳しくやりたいと思います。
FIPって何だ?
①この新しい市場制度を理解する上で欠かせないのがFIPです。
FIP制度は補助自体はしてくれます。しかし価格は市場価格に連動させて、プレミアムを載せる形で補助します。なぜこのような仕組みに変えるかは、この後で説明を行っていきます。今はこういう制度に変わることだけ覚えておいてください。
②市場のプレイヤーにFIP認定業者とアグリゲーターが加わる
まずFIP認定業者というものがおかれます。これは発電会社ということです。旧来の電力会社は実は既に市場を通して市場価格の運用がなされています。FIP認定業者はこれの再生エネルギー版です。ただし、再生エネルギーの促進策としてプレミアムがついており優遇されます(ちなみに、前回の記事で書いたアグリゲーターとはまた別の位置で活動するアグリゲーターです)。
いったんFIP認定業者が直接電気を市場に卸す場合は図表の上の流れです。
そして電気を買いたいプレイヤー、つまり小売電気事業者が値段をつけて電気を買います。このようにして市場原理を導入するわけです。
ただし、このFIPが集めてくる電力量は単位が小さいです。前回説明した通り小規模電源、分散電源と呼ばれていたのを覚えているでしょうか?
一方で小売電気事業者はプレイヤーも多く、一回に取り扱う量も大きいです。つまり市場に入ってくる需要と供給の単位の差が大きく、市場がうまく機能しないリスクがあるのです。
そこでFIP認定業者と市場との間に調整役としてアグリゲーターの設置が検討されています。種々のFIP認定業者から電力をかき集めるのがアグリケゲーダーです。
東芝が狙うのはこのアグリゲーター両方のポジションだと思われます。
③市場価格はデマンドレスポンス(DR)が大事な要素になります。
需給という概念は当然FIPでもあります。受給のバランスとはデマンドレスポンスと呼びました。当たり前ですが受給は市場価格に大きな影響をもたらします。なのでDRが市場価格に影響を与えることになります(なお、(こうしたDRによって市場で扱われる取引は、ネガワット取引とも呼ばれます)。
先ほど説明しなかったFIPを導入する「理由」がこれです。FITで価格を固定すると発電業者(FIP制度で言うFIP認定業者)が、需給を気にしなくて済んでしまいます。いつ電力を販売しても同じ価格で買い取ってくれますので。
この電力価格を市場と連動させるということは、需給バランス=デマンドレスポンスを発電業者は意識せざるを得なくなります。
少し補足しますと、旧来の電力会社はBG(バランシンググループ)でインバランスしないよう配慮していましたが、同じことを再生ネルギー発電業者にも要求するとうことです。そのインセンティブとして、価格がそれに連動するような仕組みとなるわけです。
こうすることで、需給のバランスを再生エネルギーにおいても保つ狙いがあるのです。ただし、そんなに簡単に発電事業者側で調整できないので、アグリゲーターを挟んで調整役をやらせようとしているわけです。
FIPについて詳しく知りたい方は、資源エネルギー庁のホームページをご参照いただければと思います(僕もここを見ながらこの記事を書いています)。
以上が直近の電力事情のざっくり整理した内容でした。次回からはこうしたVPPを支える技術や規格の部分について触れていきたいと思います。
ということでまた。
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