芥見下々『呪術廻戦』展(-8/27) -作品世界という[領域]を愉しむ
某日夕方、渋谷。
大変遅ればせながら、芥見下々『呪術廻戦』展へ。
会場は渋谷ヒカリエ。作中で2018年に勃発した「渋谷事変」の舞台の地でもある。
時間予約制、入場まで30分
予約は時間制で、さらに3グループに分けての入場となる。入場できるまでに30分ほど待った。
子どもたちが多いのかと思いきや、時間帯もあってか、入場待ちをしている来訪者はほぼ全員大人、しかも20~60代といった幅広さの方々で、ちょっと嬉しくなる。
入場記念のステッカー。
写真撮影はNG、撮影スポットあり
会場内は原則撮影不可で、スマホ取り出しも禁止。代わりに、いくつか、作品の背景の前で記念撮影できるスポットが設けられていた。
本展にあわせ、ヒカリエでもコラボ企画が登場している。それらの写真も挟み込みながら、展覧会のようすを振り返っていきたい。
領域之壱 プロトタイプ&ネーム
本展のエリアは、作中の術である「領域展開」にちなんで「領域之壱、領域之弐……」という呼び名が付いていた。監視員の方が「領域之壱では……」などと言っているのを聞くと、やはり気恥ずかしかった。
本作はデジタル制作されており、かつての漫画のような「下絵」は存在しない。その昔、駆け出しの編集者だったころ、漫画担当の友人がいて、その作業をみながら、原画の美しさを知った。
それが存在しない、ではどこでひきつけるのか? 本展では「デジタルで制作する漫画」の工程が、詳しく説明されることになる。
領域之壱では、かなりの量のネーム・下書きが展示されていて読みながらゆっくり進んでいく、という感じになった。
映画『呪術廻戦0』の原型へとなっていく、『東京都立呪術高等専門学校』が発表されたあとのプロトタイプ『呪術匝戦』(要は、ボツ企画)の貴重なネームも展示されていた。
「当初はこんな設定だった」ということを知り、また、主人公がどこか存在感がない理由が推測できもしたりして……、あれこれ突っ込みをいれる声が、背後から漏れ聞こえてくるのも楽しかった。
領域之弐 デジタル作画メソッド
次のコーナーでは、デジタル制作の漫画に焦点があてられ、作家が構想を得てからどのように作画し、アシスタントと具体的にどんな作業を分担するのか、といった、デジタル作画のプロセスが紹介されていた。
ほかの展示会場も含め、アシスタントの仕事がクレジット入りで紹介されていたのが印象的だ。彼らが手がけた仕事を名前入りで紹介するコーナーもあり、アシスタントの仕事に敬意が払われていることに、こちらからもリスペクトを。
領域之参 連載原稿 総力解説
ここからは、ストーリーの紹介だ。物語を追いながら、QAで作家が、素朴な疑問に答えるパネル展示もある。雑誌の欄外に設けられた、作家からの小さな書き込みを読む感じだろうか。
今まで作中で明かされた事実を呼び起こしつつ、「あのキャラクターの死亡が、そんなに前に決まっていたなんて」「そうか……なら、あのキャラクターはもう生き返らないのか」と落胆したり(本作では、主役級のキャラクターが、思い切りよく退場していく)。
あれ?と思ったのは、アニメに先行して、すでに連載終了間近を迎えている漫画のほうでの、「かなり重要な展開」が、ぼかされていることだった。知りたいことも多かったのだが……。
ふしぎに感じていたのだが、アニメのほうのファンも多いので、そうか、最新の展開を知らないファンへの配慮なのかも、と合点がいった。
本作のコミックスは現在のところ27巻+0巻の合計28冊。それだけの量の内容を追っていくので情報量は相当なものであるし、詳しく観たいところは観たいので、さらに時間がかかる。
ふと時計をみたら、あっという間に2時間が過ぎていて驚いた。
領域之肆 カラーイラスト
あたかも、コミックスの中を彷徨い、28冊を一気読みしたような状態で(まるで子どものように、1枚ずつ、じっくり読んでいった結果だ)、喉も乾いてふらふらになりつつ、最後の「領域」にたどりついた。
そこは「週刊少年ジャンプ」表紙用カットや、巻頭カラーなどで使われたイラストの特大パネルの展示コーナーだ。
ここにも一工夫があり、作家自身が、それぞれの作品に容赦ないコメントを付けている。
いわく、この構図は失敗だった、このときは時間がなさすぎて~~結果、後悔しているとか。もちろん、ここを工夫したんだよね、的なコメントもあって、作家の生の声を聴いている楽しさがあった。
作品「領域」で遊ぶ楽しさ
ギフトショップに着いたのはクローズ時間の10分前で、会場に2時間半は居たことになる。あっという間だった。
本展で味わったのは、作品世界とという「領域」のなかで、存分に遊ぶ楽しさだ。他人ではあるが作品のファンである人たちとストーリーを今一度振り返りつつ、知らなかった宝を発掘し、ときには突っ込みながら、時間と空間とを共有する。作中で「領域」内は呪術の必中必殺エリアとなるわけだが、まさに作品の魅力を最大限に浴びた感じだ。
何より、ここは渋谷。しかも「渋谷事変」勃発の地である、駅の真上なのだ。芥見下々先生、企画者の方々に感謝を。
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