5/12まで【写真】Playground Becomes Dark Slowly@日比谷公園
「日比谷公園で、粋なアートイベントが開催中」アート好きの友人からメッセージが入り、某日の夕刻、訪れてみた。
ほんとうに粋な、心が動くイベントだった。その記録を手短に写真で。
某日、夕刻、日比谷公園
銀座方面から、日比谷公園へ。
公園入口すぐに、地図による作品案内がある。
「はなの灯籠」永山祐子(土曜日開催)
まず、地図「C」の作品へ。土曜日のみ開催のため、ただ池を観るだけになったけれど、
水面に花々が浮かぶようすを思い浮かべる。
「余白史」細井美裕
ふと、ふしぎな音が聞こえて、上を見上げる。スピーカーから聞こえてくるのは、「公園の音」だ。風の音、子どもたちがはしゃぎまわる声。それらが増幅されて、ふたたび公園に放たれていく。
音を放つと同時に録音も行っている。過去と今の音が混ざり合い、収集されていく。スピーカーは、いろいろな場所に。
「はなのハンモック」永山祐子
人目を引いていたのは、
芝生の広場に設置された、この作品。
注意事項を確認して、作品へ。
ハンモックに寝てみれば
せっかくだから、少し寝ていくことにした。
なるほど、ハンモックの下は、花畑なのだ。
網は、体重をかけても、ぴんとしっかり張られている。
見上げれば、日比谷ミッドタウン。
寝転んで、左右を眺める。
こんなふうに公園を眺めるのは、もちろん初めてだ。
もう一度戻ってくることにして、次の作品に歩を進める。夕闇が迫り、花壇から漂う花々の香りが、少し強く感じられるようになってきた。
「Gravity and Grace」大巻伸嗣
遠くに、それは見えてくる。
シモーヌ・ヴェイユの箴言集、『Gravity and Grace(重力と恩寵)』に由来する本作。シモーヌ・ヴェイユは哲学に詳しい人からその名を訊いて、作品を何作か読んだ。30代で、おそらく自死に近い形で世を去ったフランスの思想家だ。純心、ストイック、という浅い言葉でしか表現できないけれど、著作を読んでいると身をただすとともにせつなくもなる。そのなかでも『重力と恩寵』には、どうしようもないところまで堕ちたあとの、期せずして差し伸べられる恩寵が語られていて、その微かな光が好きだ。
もちろん、常に激痛ともいえる頭痛や身体の不調に苦しめられながら、才を発揮して哲学教授資格者となり、自ら求めて苦難のほうを常に選び、のちに信仰に目醒めた著者が絞り出した言葉の数々を、それらの基礎知識すらない自分が理解できているなどとは、とても思わないけれど(それより悪いのは、誤読を誤読と自覚していないことだけど)。
それはともかく、本作のGravity and Graceは、巨大な壺が放つ光と影が織りなす「美しさ」という恩寵の背後には、巨大なエネルギーに伴うリスクもまた見え隠れする、ことを意味する。
ハンモックに、再び
ハンモックに再び、戻ってみれば
ビルの窓明かりとともに、
作品も、夜景の一部となっていた。
1日の終わりの、時間にしたらわずかなひととき。でも、長い長い旅を終え、帰途に着く気分に包まれながら。
闇の中で、花が強く薫っている。
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