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倉俣史朗のデザイン―記憶のなかの小宇宙@京都国立現代美術館
確かに、倉俣史郎の『硝子の椅子』は、
「座っても大丈夫なものか」
「割れやしないか」
「座りやすいのか」
「そもそも椅子なのか」
などと、見るものに何らかの感情を抱かせる。
ガラスという材質もそうだが、直線的で直角的なラインという形状からしても、むやみに人を寄せ付けようとはしない緊張感があるため、その距離感をもって、人間はオブジェと自然と対峙せざるを得ない。
デザインというのは、人間をある目的に向
メルカリの不思議さ、定点化するインターネット
メルカリで4000円で緑色のソファを買った。スマホの液晶上に写っていたソファが今自分の家にあるというのは何か違和感がある。スマホの向こうの世界には、自分の家の中とは断絶しているように見えたけど、それが今接続しているのだ。そのソファ、一点だけが、この家の中でどこでもドアのような時空の歪みとして、どこかにつながっているようにさえ思える。そもそも受け渡しにしたって、大阪のおしゃれなエリアの中心地のレトロ
もっとみるアントニオーニの『夜』が愛の不毛三部作に数えられる理由について
鏡像はアントニオーニ作品によく登場する手法らしいが、本作ではオープニングから、ビルの窓の鏡面を用いてミラノの街を映す。これを見ただけでは、どうしてこのような撮り方をしたか分からず、ただただ純粋に美しい映像としか見えない。しかし、これがどういう効果をもたらそうとしていたのかは、後になって知ることになる。
ジョヴァンニとリディアの関係は冷え切っている。基本的に二人の視線が交わることがない。黒人がレス
『寝ても覚めても』のラストシーンの応答となった『ドライブ・マイ・カー』
音の浮気現場に遭遇しても、介入することなく気配を押し殺すようにそっとドアを閉める家福。その後タバコに火をつけようとするがなかなかつかない様子、そして成田空港のホテルの一室でタバコの吸い殻が溜まっている様子からは、音の不貞に動揺を隠せないでいることがありありと分かる。しかし、その成田のホテルで、音からテレビ電話がかかってくると、吸っていたタバコをすぐさま消し、何食わぬ顔で話す。動揺を表に出さない。自
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