オリジナル小説

3

梨が、すっぱかった

君の家。君の部屋。君の机で。君の切ってくれた梨を僕は君と食べていた。
一切れつかんで、一かじり。じわりと口の中にたっぷりの水分と酸味が広がる。

(ああ、おいしい)

僕も君も思ったことは同じだったようで、すぐにまた一かじり。二口、三口ほどで一切れを食べ終えれば、僕の手も君の手も、透明で平たく丸い皿に乗った次の一切れへと伸びた。

元より会話の少ない僕たちだけれど、おいしいものを食べているときは

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クールビューティーな彼女と、僕

向かい合ってソファに座る君の強気なつり目がちの瞳に今、映されているのは僕――じゃなくて単なるファッション雑誌。そんな流行だとか何だとかなんて、全然気にしていないくせに。

ペラリペラリとページをめくる彼女のスラリとした指を見つめながら、僕は手持ち無沙汰に自分の親指の爪を噛んで。大好きな人が目の前にいると言うのに、僕は一人のときよりもつまらなさを満喫する。
あれ? 僕は彼女の恋人じゃあなかったっけ?

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そんな誘い文句考えてたよ

夕焼けのオレンジ色を映して雲がぷかぷか浮いている。
カラスが山へと飛ぶのを見て、山に七つの子でもいるのかしらん?と彼が言った。

僕と彼は二人並んで寝そべっている。公園の芝生の上。砂場やブランコで遊んでいた子供たちは帰り支度をしていたと思ったが、気付けばもう皆いなくなっていた。

ざざっと風が吹いて、全てをさらってしまったかのような少しの静寂。
まるでこの世界に二人きりになってしまったみたいだと思

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