昔書いていた作品など。主にショートショート。
日々のこと
君の家。君の部屋。君の机で。君の切ってくれた梨を僕は君と食べていた。 一切れつかんで、一かじり。じわりと口の中にたっぷりの水分と酸味が広がる。 (ああ、おいしい…
向かい合ってソファに座る君の強気なつり目がちの瞳に今、映されているのは僕――じゃなくて単なるファッション雑誌。そんな流行だとか何だとかなんて、全然気にしていない…
夕焼けのオレンジ色を映して雲がぷかぷか浮いている。 カラスが山へと飛ぶのを見て、山に七つの子でもいるのかしらん?と彼が言った。 僕と彼は二人並んで寝そべっている…
もうすぐ29歳。三十路も間近な私だが、この歳になって、過去最高に自分をめかしこむようになった。 *めかしこむ=お洒落すること。 私は小学生の頃から、服によるお洒落…
里帰りの話などを聞く度に、思う。 私は実家がほしい。 ねえ、あなたが思い描く実家とはどういうものだろう。 幼い頃に暮らした、輝く思い出も、悲しい思い出も、つまっ…