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クールビューティーな彼女と、僕

向かい合ってソファに座る君の強気なつり目がちの瞳に今、映されているのは僕――じゃなくて単なるファッション雑誌。そんな流行だとか何だとかなんて、全然気にしていないくせに。

ペラリペラリとページをめくる彼女のスラリとした指を見つめながら、僕は手持ち無沙汰に自分の親指の爪を噛んで。大好きな人が目の前にいると言うのに、僕は一人のときよりもつまらなさを満喫する。
あれ? 僕は彼女の恋人じゃあなかったっけ? と不安にさえ駆られるぐらいに彼女は僕を放置するもんだから。
好き同士で二人っきりなら、もっとこう何かあってもいいもんじゃあないの? 不満だってタラタラだ。

じろりと恨めしそうに、僕は雑誌にさえ嫉妬する。だけれどスラリ、指が雑誌から離れて、隣に置かれたコーヒーカップへと移る瞬間。僕は今だとばかりにその手を取った。

本来なら今頃コーヒーカップの持ち手へとかかっていた君の指は僕の手の中。満悦の表情で指を撫でさする僕とは反対に、見るからに不機嫌そうな彼女の手は、次の瞬間には僕の手の中から華麗にも逃げ、しかも逃げ様にでこピンまでかまして、雑誌の元へと帰ってしまった。

実に気に食わないと頬を膨らませた僕は、更に実力行使に出た。彼女の座るソファの後ろへとさっと移動したなら、そこからガバッと彼女の両腕を取り、上へとあげる。彼女はそう、万歳のかたちになった。
僕の手により万歳なんていう、阿呆な格好でありながらも、彼女は口は開かず、僕を上目に睨みつけて責め立てる。クールビューティ、そんな言葉がよく似合う彼女の視線は今、ことさら冷たくて、それでも僕を見つめていた。

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