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難波麻人
2024年7月15日 02:09
中学生の頃、クラスメイトに増田さんという生徒がいた。 ショートカットで大きな眼鏡をかけた増田さんは、授業中にいつも左手で眼鏡を抑え 、眉間に皺を寄せながら黒板の文字をノートに書き写していた。「眼鏡の度数がぜんぜん合ってないんやな」 それが増田さんに対して僕が初めて抱いた印象である。 同じクラスになったのは一年生の時だけで、大して仲良くもなく喋ることもあまりなかったが、そんな増田さんを
2021年5月5日 22:57
席替えの日は憂鬱だった。 学生にとって席替えは一大イベントであり、好きなあの子の隣になりたいとか、前から二列目までの席には絶対なりたくないとか、様々な感情が渦巻いているのだが、皆それを悟られまいと振る舞い教室は異様な静寂に包まれる。中には自分が望む席に座る為に不正を働き、学級委員長を懐柔する者まで現れるのだ。 もちろん僕だって好きな子の隣に座りたかったし、居眠りしていても見つかりにくい