ヴァン・ヘイレンのお名前学
希代のギター・ヒーロー、エドワード・ヴァンヘイレンが天国へと旅立ってしまいました。
プロフィールのおさらい的な記事は専門家に任せるとして、このZINEではお名前とかコトバからふりかえってみたいと思います。
edward van halenはvanでわかるようにオランダ系の名前です。vanは意味的にはfromで英語人名の「Mc~」や「~son」、東欧の「~vic(ビッチ)」など同様、出自を表す部品です。
ハードロックファンにとってはオランダ人でVanというとヴァンデンバーグも有名ですが、Vandenbergも元々はvan den bergでfrom the mountainてな意味だったりします。ガッチャマンのベルクカッツェは山猫ということでしょうか。どこかのだれかがこれは和製独語だと力説してましたが、そうともいえません。bergkatzeはアンデスネコのドイツ名だからです。じゃないとしてもネーミングの作法としては少しも間違っていないので大変参考になりますね。
古くは蘭学、K-1などオランダは日本とゆかりが深い国ですね。エディも移民の子孫と思いきや、オランダ生まれだそうです。いつもへらへら笑ってんのでクスリきめてんぢゃねーか?とネタというか冗談交じりに突っ込まれたりしてましたが、オランダはマリファナ解禁先進国でもあります。あ、別に故人を揶揄するつもりはなく、当時も勿論日本では違法でしたし、芸能人も逮捕されたりしてましたが今ほど徹底的厳罰感はなく、西海岸のロッカーはきっとマリファナやコカインはやってるよねくらいに思ってましたから。マリファナはカンナビスというのですが、輸入もののお香でカンナビスというのがあってなんともまぎらわしい。でもこないだ見に行ったら消えてました。まさか世相を考えて自粛したのでしょうか?
大御所KISSのジーン・シモンズはやたらと「あいつは最初に俺が目をつけた」と吹聴する癖があるのだと昨日の荻上チキSessionでやっていましたが、エディのことをKISSに誘おうとしてたという噂もあったとか。
それを聞いたらタモリ倶楽部でもおなじみ演歌大好きギタリストのマーティ・フリードマンは悔しがるかもしれません。というのもマーティはKISSが好きすぎてエース・フレーリー脱退後のギタリスト募集に応募しようとしましたが身長180センチ以上という条件に引っかかり断念したからです。6footerという言葉があるくらいなので180センチは向こうでも大台なのでしょう。
キッスは商売上手のユダヤ人ジーン・シモンズによって完璧にイメージコントロールされたバンドなので大男たちがさらにヒールの高いいかつい特撮映画のようなブーツでステージ上を暴れまわるという演出は譲れないでしょう。
ところがエディはといえば172センチしかありません。噂が本当だったとすれば超特待生扱いです。ただエディにあってマーティにないものというとハードロックファン以外にも訴求するポップさです。ソロも速弾きのための速弾きにおわらず、メロディアスというのとは違うかもしれませんが非ヘビメタファンが聴いても「面白い!」と感じさせるポップみがあります。マイケル・ジャクソンの「Beat It」のソロしかりです。ちなみに同曲のイカしたカッティングはTOTOのスティーブ・ルカサーだったりします。まさに夢の共演ですね。
前出のようにジーン・シモンズはユダヤ人であることも商売上手であることにも誇りをもちインタビューでは
「あんたジョン・マクラフリンの曲を口ずさめるかい?」などと逆質問していました。つまりポップなものが売れるのさ…ってことです。ももクロちゃんを褒めていたのも単なるリップサービスではないかもしれませんね。
エディはタッピングばかりが注目されがちですが、ポップさという視点でいえば「パナマ」のイントロのキンコカキンコカというピッキングハーモニクスにその魅力が象徴されています。
それまでのピッキングハーモニクスといえば「出ちゃった感」満載でほぼほぼノイズでしたが、「パナマ」や「ユーリアリーガットミー」といった楽曲では、しっかりと譜面におこせる感じの存在感でメロディとして使われてます。
ちなみにライトハンド奏法は和声英語です。弦楽器は両手で弾くものですが、ギターの場合、あえて弾き手はどちらかといえば「つま弾く」右手でしょう。つまりギターはキホン、ライトハンド奏法ということになってしまいます。このネーミングには日本人らしさが集約されてます。ロジックに欠けるという点と、英語に強いはずのギョーカイ人をして、裏どりや取材などの情報収集が甘かったという点です。
以前「ローニン」という西海岸のバンドの名前について「マイ・フェイバリット・ディレクターのクロサワの作品からとったんだ」などと実際には誰も言っていないガセ発言を雑誌にのせてワディ・ワクテルというギタリストを激怒させるということがありました。日本の雑誌なんてガイジンは読んでねーよと油断したのかもしれませんが、日本人のことですから「黒沢監督が好きなんですか?」なんて必ずだれか聴きます。喜々として。
そーいえばさっきちょっと出たK-1でもボブ・サップがNFLのスーパースターのウォーレン・サップのいとこだなどという大誤報をフジテレビがしていました。
ちなみにオランダは格闘技大国でもありK-1選手も多かった。エディは172センチでしたが、オランダの男子の平均身長は184センチと西欧諸国のなかでもダントツです。
アーネスト・ホーストってあまり大きくないイメージでしたが、実は189センチあります。他がデカすぎただけですね、
セーム・シュルト 211センチ
レミー・ボンヤスキー 192センチ
アリスター・オーフレイム 193センチ
ピーター・アーツ 192センチ
みなオランダ人です。
話をエディに戻しましょう。ヴァン・ヘイレンといえばやはり一番有名な曲は「ジャンプ」ですが、最初にあのシンセのイントロを聞いたときには正直「ダサっ」と思ってしまいました。エディはクラシックピアノの教育も受けてるらしいですが、生楽器の実力と電子楽器のカッコよさとは別の問題です。
なんかグラフィックソフトを買ったときについてる出来合いのグラデーションをそのまま使ってバレバレ状態みたいなノリといいますか。
電子楽器は音作りの段階で勝負は始まっているし、そこで終わりともいえます。まあ、今となっては慣れてしまいましたが、いや、だがしかし安っぽいとは思ってしまいます。
シンセサイザーはオーバーハイムというドイツっぽい名前のアメリカのメーカーのOB-Xaという機種で100万円以上の高級品です。8ボイスともなるとほぼ200万円。
8ボイスといわれても現代っ子は「???」てなもんでしょうが、シンセサイザーというのは元々は単音しかでないシロモノでしたが、完全ポリフォニックという製品が発売された時には「シンセサイザーが49台内臓されている!」というのがカタログのコピーでした。49は鍵盤の数です。これでなんとなく察してください(笑)。そしていまやスマホでも使えるソフトウェア・シンセというものの存在をモーレツに有り難がってください。
当時はシンセサイザーといえば日本製の数十万円台のコスパのいい製品群が海外アーチストにも浸透しつつありましたが、ヴァン・ヘイレンというバンドに日本製は皆無。
ギターはクレイマー、ドラムセットはラディックです。ちなみにほぼ独占状態のシンバルで有名なジルジャンは今はアメリカの会社ですが、元々はアルメニア人職人によるトルコの工房でした。アルメニアというとアゼルバイジャンとの交戦で今、まさに時事問題の中心にいますが、実はアルメニア人ロビーというのはアメリカ社会で多大なる影響力をもっているそうで、そういうことを頭に入れてニュースを見ると見え方が変わるかもしれません。
ところでヴァンヘイレンのベーシストであるマイケル・アンソニーのジャック・ダニエル・ベースをググるとヤマハが出てくるので「日本製やんけ」と思うかもしれませんが、初代はほぼオーダーメイドというか共同ハンドメイドのオリジナルのようで何代目かをヤマハが請け負ったようです。ブライアン・メイの父子工作ギターみたいなものでしょうか。初代のはやはりクレイマーのパーツが使われているようです。
ちなみに先述のキッスのジーン・シモンズの斧型ベースもクレイマーでしたね。
Kramerはドイツにルーツのある名前で旅商人という意味です。ここでピンときた人もいるかもしれませんが日本サッカーの父クラマーさんは綴りこそCramerですが、同ルーツのようです。「C」と「k」をいれかえても他の言語では同じ意味みたいな単語はしばしばあるのでネーミングのときの1つの手法としても使えますね。まあ、Kのほうがドイツ語っぽいですよね、
そーいえば、オランダ系アメリカ人でググるとエース・フレーリーもそうだったりします。エディが入っていたらオランダ系枠ってことになったでしょうか(笑)
オランダ&ネーミングネタをさらにダメ押すと今まさに宴たけなわのNBAファイナルでずが、おしくもイースタンカンファレンス12位のニューヨーク・ニックスはもとはニッカボッカーズといい、これはオランダ移民の子孫のことです。ガテン系のニッカボッカズボンと同源ですね、ニューヨークは旧名をニューアムステルダムといいました。オランダ移民が多かったんですね。
巻末のおまけとして
ツイツターでニックスのアイコンを表示させるためのハッシュタグを紹介しておきましょう。
#newyorkforever
需要があまりないでしょうから(苦笑)マイアミヒートとレイカーズのも
#heattwitter
#lakeshow
そういえばジーン・シモンズもイスラエル生まれです。移民の子孫ではなく移民だというのは象徴的。
移民は随分と外貨稼いでますよトランプさん。
【さんこう映像】
ビートイットのソロ部分
https://youtu.be/oRdxUFDoQe0?t=176
イートイットのソロ部分。
https://youtu.be/ZcJjMnHoIBI?t=143
こっちはリック・デリンジャー
それなりに大物です。
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