中継塔の画面は閉じ忘れで

昨日と今日を切り分ける 午前7時の光は春で
行く宛の無い シャドーブラウンの猫が眠る
いつか頭を撫でられると 期待し続けていた
待ち惚けの耳が落ちる 涙を忘れた無関心な双眸

すりガラスの水槽で 熱帯魚が滲み出す
極彩色の体躯の前に 僕の悩みは薄汚れた
この孤独に目が慣れた時 世界はどう見えるのか
押し固めた幻覚は紙粘土みたいに
遊び飽きた頃には 軽くなって 転がっていた

不自然な人形劇の糸を吐いて 蛹は羽化を待つ
飛び立つ空が 青いまま残っていますようにと
白々しい祈り 伸ばした翅に極上の光沢が踊る日
空想は補正 信じて救われた気になるだけ

芥子の花が 細い首を傾げて けらけら笑った
厚ぼったい黒い雲から 飛行機が滑り出して
僕の真上を 低く飛ぶ
唸る空 胸がざわめいて 喉が締まって 残像
無機質に明滅した 機体のライトに
幾千 幾万の 掠り傷が 染みて

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