不登校の定義ってなに? #2
わざわざ2回に分ける必要があったのかはさて置き、前回の「統計上の不登校」ではない「不登校」をみていきましょう。今回は統計から離れて、法律上の定義になります。こちらの定義についても、それほど大きな違いがあるわけではありません。
まずは前回のおさらいです。
文部科学省が毎年行う「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」では、ざっくり言うと「「病気」や「経済的理由」、「新型コロナウイルスの感染回避」を除き、年間30日以上欠席した者」が「不登校」なのでしたね。詳しくは前回のnoteを参照してください。
法律上の定義
「法律で不登校が定義されているのか」と驚くかもしれませんが、実は定義されているんです。(私は法学の専門ではありませんので、その点はご了承願いたい)
2016年の12月に「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律確保法」(以下、教育機会確保法)[1]という法律が公布されました。
教育機会確保法は、主に不登校に対する教育機会を保障するための法律です。成立過程では紆余曲折ありましたが、結果的には、不登校支援として落ち着きました。
ご存じのように、日本では保護者に子の就学義務が課され、地方自治体には学校の設置義務が課されています。親は子を学校(いわゆる一条校[2])に通学させることによってその義務を履行します。
不登校となった場合、子どもが学校に登校しないのですから、親はその義務(就学義務)を果たしていないことになってしまいます。しかしながら、不登校支援に関する多くの通知が示すように、子どもが不登校である場合には、保護者は就学義務の不履行とはなりません[3]。
こうした不登校の子どもたちに対して義務教育に相当する学習機会を保障するものとして、教育機会確保法があります。
さて、本題に入って、教育機会確保法における不登校の定義を見てみましょう。ここでの定義を「法律上の定義」とでも呼ぶことにしておきます。
少し長いですが第二条をすべて引用します。
第二条では用語の意味を定めています。3項の「不登校児童生徒」が該当部分になります。
ここでは、「文部科学大臣が認める」ものを不登校とすることが記されています。
さて、文部科学大臣が認める状況とはどのようなものなのでしょうか。
教育機会確保法の交付後に、文部科学省が省令を出しています[5]。
文部科学大臣が定める状況とは、結局は、「統計上の定義」とほとんど同じ内容になっていることが分かります。
さて、ここで大事なのは、「統計上の定義」では年間30日以上という欠席日数も不登校の判断基準になっていましたが、「法律上の定義」では欠席にっすによらないという点です[5]。
そうなんです。この定義に従えば、年間の欠席日数が30日以上でも、未満でも、「不登校」として認められ得るということです。(不登校と認めるという行為自体の是非は別途検討する必要がありそうですが)
学校教育法第一条で定義される学校、すなわち、幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学、高等専門学校のことを指します。
滝沢潤(2021)「「就学」と「通学」の分離による普通教育機会保障制度の再構築」『教育学研究』第88巻(4)、pp.532-544
義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律第二条第三号の就学が困難である状況を定める省令(文部科学省令第二号)
文部科学省(2017)「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律第二条第三号の就学が困難である状況を定める省令について(通知)」
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