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読書感想文「22歳の扉」青羽悠さん 《青春て何だろうね、酒と恋と本?》

僕は《青春小説》というジャンルが好きだ。
青羽悠さんの「22歳の扉」、青春小説の王道という感じでとてもよかった。
はじめからおわりまで、ずっとよかった。
「早く読みたい、先が気になる」という気持ちと、「まだ読み終わりたくない」という気持ちのせめぎあいを楽しみながら一気に読了した。

ネタバレにならない程度にあらすじを紹介すると、
・舞台は京都
・主人公の「朔くん」が大学に入学してから卒業するまでの話
・朔くんは、ひょんなことから学内にあるBARのマスターを任されることになる。そこでさまざまな人と出会い、友と語りあったり、恋をしたり、酒を飲んだり、煙草を吸ったり、モラトリアム全開で青春する話

主人公の「朔くん」をはじめとして、登場人物たちが魅力的だった。
そして、京都が見せる四季折々の鮮やかな情景が、物語の舞台としてとても映える。
また、行きたい街(歩きたい街)が増えてしまった。

僕も大学生のときにサークルの部室に入り浸っていたことを思い出した。もちろんBARではなかったけれど。

この作品を読みながら、僕は自分が通り過ぎてきた学生生活の甘酸っぱいところを追体験し、卒業からだいぶ経った今、「まぁたいして変わってないな」なんて思ったりする。 

さて、青春小説とは何であるのか。
それは、例えば僕のように少し時間が経ってから想い出に浸ることで幸福感を味わおうというものかもしれない。ただし、これになんら生産性はない。だけど、想い出は日々を幸せに生きるための燃料にはなる。
なんなら、人生の最後に残るのは想い出だけかもしれない。

または、今まさに10代後半から20代前半を過ごしている若者が読んで、ムチャクチャやっててもまぁ何とかなるよというふうに感じてもらうためのものかもしれない。
10代の終わりから20代の半ばまでを振り返ってみれば、無茶な行動に耐えられる身体と、瑞々しい感性と、時間はあるけどお金はあんまりないという環境がよかったのかなと思う。

人がさまざまな経験を通して成長することを青春と呼ぶならば、人は何度でもいつまでも青春を過ごし続けられるものだと信じている。
人生100年時代と言われるようになったので、なんなら80歳くらいまで青春でありたい。(老害にならないようにわきまえながら)

この「22歳の扉」という作品は、勇気をもって踏みだして楽しもうとしたら、あとはまわりの人やそのときの居場所がどうにかしてくれるよ、と教えてくれる。
もしかしたら、どうにもならないかもしれないけれど、それはそれでどうにかならないなりにどうにかなると思う。

*読み終えてからネットのレビューを眺めていると、「大学生じゃないと味わえないモラトリアムじゃないか、共感できない」というものを数件見かけた。
そうかもしれないと思いつつ、人が友と出会い、恋をして傷ついたり、場所に救われたりするのは普遍的なんじゃないかと思う。
若者の成長物語として素直に読めばよいのだ。

ちなみに、この本を読んでるときの脳内BGMは、
・今夜はブギー・バック(小沢健二とスチャダラパー)
・キレイな唄(阿部真央さん)
だった。

あとは、改めてBARに行ってみたいと思った。
お酒が弱いので、あまり楽しめないだろうなということもあり今まで縁のないBARという空間。
燃え殻さん原作のドラマ「すべて忘れてしまうから」を見ていたときも、BAR「灯台」にあこがれていたものの特に行動に移せなかった。
お酒が弱いし煙草も苦手な僕が楽しめるのかよくわからず、初心者にはハードル高く感じるBAR。
さて、どうしたものか。

とりあえず、京都・大阪に旅へ出たくなった。
川原で珈琲を片手に読書がしたい。

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