口下手・聞き下手な人に読んでほしい一冊
私は口下手でもあり、聞き下手でもある。
これは図書館司書としてかなり致命的だ。
私の勤務する図書館では、毎日のように利用者から本に関する相談が寄せられる。
そんな中、「利用者が抱えている疑問を上手く引き出し、その回答を分かりやすく伝える」ためには話し上手でもあり、聞き上手でもあることが必要と言える。
それができないと業務に支障をきたすので、仕事のときは意識することができているようなのだけれど、ことプライベートにおいては、急にコミュニーション能力の低下を感じる。
自分のことを口下手だと思っているからこそ、相手との会話が途切れた際の沈黙が怖かったり、何か面白いことを言わなきゃ、と焦ってしまう。
そして、言う必要のないことを言ってしまい、さらに場の空気を悪くするという負のスパイラルに陥る。
そんな私が、助けを求めるようにして手にしたこちらの本。
昨年4月に出版された本だが、今でも書店やAmazon・楽天ブックスなどの売上ランキングで取り上げられていることがある。
さらに、偶然にもこの記事を執筆している最中に結果発表のあった「読者が選ぶビジネス書グランプリ2024」では、ビジネス実務部門の第一位として本書が選ばれた。
世の中には口下手で悩んでいる人がたくさんいるんだな、と少し勇気づけられる。
『頭のいい人が話す前に考えていること』
なんと興味を惹かれるタイトルだろうか。
なれるものなら私も頭のいい人になりたい。
そもそも、本書で定義されている"頭のいい人"とはどういう人のことを指しているのか。
本文を引用してみる。
いや、それでは答えになってないのでは?と思われた方もいるかもしれない。
そこでもう一度この文章を読んでみる。
周りから「頭がよい」と認識されている人
というのがミソである。
周りから「頭がよい」と認識されるためには、まず「頭のよさは他人が決める」という前提に立つこと。
その上で、自分とは価値観の違う他者が理解できるように、論理的に話すことが重要だと筆者は述べる。
(本書も読み手が理解しやすいように、実に平易かつ論理的な文章で書かれているが、読み進めるにつれ、論理的に相手に伝えることの大切さを実感するとともに、著者の安達さん自身がまさに"頭のいい人"そのものであることが分かる)
また、「自分の考えが理解されないのは、相手の理解力がないせいだ」と勘違いしている人は本書で定義されているような"頭のいい人"とは言えない。
こういった考え方の人は、自らを頭のいい人間だと思い込んでいるが、実際のところ他者からはそうは思われていない可能性が高い。
大事なのは、話し始める前にいったん立ち止まって、
「この説明で相手が理解できるか」
「相手はどのような反応をするだろうか」
と想像することで、相手の立場になって話すことができるようになり、ひいては相手から"頭のいい人"だと認識される。
また、本書では「話す前に考えるべきこと」だけではなく、「話の聞き方」にも言及している。
どうも話し上手になるためには、聞き上手であることがポイントのようだ。
冒頭で私は「相手との会話が途切れた際の沈黙が怖い」と述べたが、"話が途切れたら、むしろ沈黙する"という教えは目から鱗だった。
さらに、自分が面白い話をすることに頭を使うのではなく、相手の話をしっかりと聞き「相手が言いたいことは何か」を理解することに頭を使う。
そのほうが、より心地よいコミュニケーションに繋がるのだという気づきを得られたことは大きい。
本書には"頭のいい人"になるためのノウハウがたくさん詰まっている。
だからといって、一度にすべてをマスターしようと気負う必要はない。
「コミュニケーションの主体は相手にある」ことを念頭に置いて、まずは「聞かれてもいないのに、相手の話を遮って自分の話をしない」といった、すぐに意識できそうなことから始めてみようと思う。
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