今この本にハマっています②
前回こちらの記事で、"身近な疑問をテーマに、10代の子どもたちにノンフィクション読書を楽しむきっかけを与えてくれる本"として「ちくまQブックス」シリーズをご紹介した。
ここでは紹介しきれなかったが、ほかにもいくつか、若者世代の読書入門として、また大人の学び直しとしてもおすすめのシリーズがある。
河出書房新社の「14歳の世渡り術」シリーズは、さまざまな知識の入門として最適の本だ。
中高生などのヤングアダルト世代をターゲットにしているようではあるが、大人が読んでも非常にためになる。
私たちが知っているようで実はよく知らない、世の中のあれこれについての学び直しにうってつけのシリーズだ。
そんな「14歳の世渡り術」シリーズから、今回選んだのはこちら。
まず私が興味を惹かれたのは、このポップなカバーイラスト。
無論、どんなに良い内容の本でも手に取ってもらえなければ意味がない。
我々図書館司書も、読書に苦手意識を持っている子どもたちに対して、どのようにアプローチしたら本に興味を持ってもらえるか、という課題に頭を悩ませている。
特に若い世代に手に取ってもらおうと思うなら、やはり装丁は重要だ。
本の中身はというと、「スマホアプリ」「スタバ」「メルカリ」などの若者世代にも馴染みのある例えを使って、モノやサービスの売買のしくみを分かりやすく説明している。
そしてタイトルにもなっている、「スマホアプリはなぜ無料?」という問い。
これに即答できる大人たちがどのくらいいるだろうか。
「広告収入があるからでしょ?」となんとなく分かったような気になってはいるけれど、それを子どもたちにも理解できるように、かつ論理的に説明するのは案外難しい。
このように、なんとなく分かっているはずだけれど、聞かれると説明に困る事象が、本質的に理解できたように感じる。
またマーケティングについて知ることで、モノやサービスを提供する立場の人たちが、利用者の満足度を得るために大変な努力をしていることも実感できた。
ゆえに我々は、その巧みなマーケティングにのせられ、ついつい必要のないものを買ってしまうというわけか…と妙に納得してしまった。
そういうわけで、マーケティングは、モノやサービスを提供する立場の人たちだけではなく、消費者である我々も知っておくべきことなのだ。
本書の後半部分では「マーケティング×デジタル」へと話が及ぶ。
小さい頃からデジタルに慣れ親しみ、「デジタルネイティブ」とも呼ばれる若い世代が、よりデジタルを理解し、それをうまく使うことで、世の中に価値を生み出すことができると述べている。
『デジタルを使いこなせば、大人だって追い越せる!』
私はもう大人と呼ばれる年齢だけれど、そんな大人の私でさえ、この一文にときめきを感じる。
また近年大人たちがデジタルを学ぼうとしている動きを、「DX」(デジタル技術を活用してビジネスモデルを変革すること)や、「リスキリング」(ビジネスモデルの変化に対応するために新しい知識やスキルを学ぶこと)を例に出して説明している。
「DX」も「リスキリング」もまさに、我々図書館が属する行政でも近年盛んに言われ始めた動きだ。
本書でも指摘されている通り、「社会全体でデジタルの動きが強まっているから、とりあえず『DX』を取り入れよう」という人のなんと多いことか。
言葉の意味すら知らずに「なんとなくそういう時流があるから」と、言われるがまま取り組む人も私の周りには少なくないように感じる。
そうではなくて、「なぜデジタルを取り入れるのか」「そうすることでどのようなメリットがもたらされるのか」などという本質を捉えた上で取り組まなければ無意味である。
「自ら考え行動する」スキルを身につけ、そういう大人たちをどんどん追い抜いていって、自分たちの時代を作っていってほしい、というのが若い世代の人たちに対しての私の思いだ。
本書の終盤に書かれている、若者たちへのメッセージも素敵だった。
「情熱のために学び続ける」
「そうした情熱のために、人は何歳になっても学び続けるのです」
このメッセージは大人にこそ響くのではないだろうか。
「情熱とは?」と思った方、そして人生で「何かを成し遂げたい」と感じている方、「自分は何者なのか」と悩んでいる方。
そんな方たちにぜひ読んでもらえればと思う。前に進むためのヒントが見つかるかもしれない。
同じマーケティングについて書いてある本でも、大人向けの一般書のなかには「本当に入門書か?」と疑いたくなるほどの、何やら難しい語句や言い回しが並んでいるものがしばしば見受けられる。
私もこれまでそのような本に何度か遭遇し、途中で投げ出したくなったこともある。
その一方で、本書のように中高生向けに書かれているものは、子どもでも理解しやすいように平易で、ユーモアのある文章で書かれていることが多い。
かといって、決して幼稚な内容にとどまっているわけではなく、大人が読んでも学びになり、楽しみながらサクサク読み進めていくことができる。
私がなぜ、こういった若者向けの入門書にハマっているのか。
それは、取り上げられているテーマについての学びだけでなくて、より良く生きていくために大切なことも教えてもらうことができる、というのも大いにあると言える。
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