貴方はユートピア
愛してるが生きている、嫌いだって生きている、言葉が生きているその距離で私達は生活し合っていたい。目を合わせるのも、呼吸の音が聴こえるのも、なんとなく同じことを思っているような気がして、すれ違うこともあって、そういうの全部生きているから産まれるのであって、それをきちんと尊いと思いながら生きていたい。貴方の存在が心から大切で、どれだけ素晴らしいか、それでいて貴方はいてもいなくても世界からは微々たるものかもしれなくて、それでも私は貴方に拘っていると一ミリの「ずれ」もなく伝えてしまいたい。けれども必ず「ずれ」は生じるもので、それを愛おしく思える関係値でいたい。全て理想郷、ユートピア。八月の風は好き?
大丈夫、は劇薬でわかっていてもその効用を止められず操ることなど出来ずに心の一欠片を救われたり滅ぼされたりしている。東武線に揺られながら蝉の鳴き声を聞いた私はひとりで旅の途中に取り残されている。あの夏の日、なんて言ってしまえばそれはもう過去で残像で、私は貴方さえも記憶の中に閉じ込めてしまうのか、そしてそれでも貴方は未来に歩いて行くのか、私の知らない顔で、知らない場所で、言葉をゆっくり吐いたり、書いたりするんだろうか。貴方がくれた世界と、貴方が教えてくれた心と、貴方そのものみたいな言葉を今日も抱えて、纏って、生きていく。過去にも現在にも未来にもならなくていいよ。思い出になんかしてあげないから、いつだって私を置き去りにして、そしてまた
貴方の世界は見るに美しく、そこに棲みたいという人は沢山いるけれど、これからも頑なにそれを拒んで生きていってね。私は貴方が美しくなくたって、紛うことなく愛しているのだから、それを糧に生きていくのだから。貴方はユートピア。いつか沈んでしまっても、貴方はひとり、私もひとり、お揃い、ね。果てまで行っていつかまた逢えたのなら、貴方がしたいことを夜が明けるまでしたい、それが私のユートピア。
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