夜の中にいる貴方へ。
「今から会いにきてくれる?」
随分弱った声だった。本当に珍しく泣いていた。
途端に私は悲しくなった。涙が出そうだった。
「大阪から向かうから、すぐには着かないけれど、今から向かうから、それまでは、着くまでは、このまま電話していよう?」
電車もなければバスもない。飛行機なんてもってのほかで、だけれどタクシーでもヒッチハイクでもして、どうにか行くしかないと思った。充電がどうとかお金がどうとか、現実「味」のあることはどうでもよかった。「貴方が悲しんでいる」ということだけが私の現実だった。
だから私は悲しくなったのだ。泣きながら走った。早く抱きしめたかった。二人だけの夜だった。
きっと着くのは昼間になるだろう。カーテンを閉めて、ベッドの上で抱きしめよう。朝から漏れてきた光なんて見なくていい。大丈夫。幸せだよ。おまじないをかけてあげる。ずーっと、かけ続けてあげる。幸せも愛も優しさも十分って言われてもあげる。
そんな美しい涙流さないで。貴方は何にでもなれる。世界が嫌いなら私が明日爆破予告を出すし、心が痛いなら触れられるところすべて癒してあげる。笑えるまで、笑うことが楽しいと思えるまで、私を抱きしめ返す力が生まれるまで、何もかも投げ売って側にいる。大丈夫、幸せだよ。足の先からつむじまで全部愛してる。
貴方に不幸なんてない。全部忘れていい。
幸せだったことは私がかならず思い出させてあげる。
夜の中にいる貴方へ。
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