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コナカの読書記録

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読書記録の記事をまとめたものです。 感想や考察、関連する思考など諸々の健忘録。
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コナカの読書記録『陰影礼賛』

コナカの読書記録『陰影礼賛』

谷崎潤一郎薯『陰影礼賛』。

過ぎたるお盆休みの夜は(下書きを寝かせすぎた)、ページをめくり、谷崎の文体に惚れ惚れするのだった。

繰り返しで用いられる「くの字点」が、するっと流れるようでどこか引っかかりのあるリズムを生み出している。

谷崎は、日本建築における「かげり」の美を語る。障子で和らげられる灯り、うまれる暗がり。想像するだけで心が静まっていく感覚がたまらない・・・

うだるような暑さのな

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4. 『蜜蜂と遠雷』に寄せて

4. 『蜜蜂と遠雷』に寄せて

喉がきゅっと苦しくなる。
我に返り、呼吸を忘れていたと気づく。息を小さく吐き、呼吸を再開する。

恩田陸『蜜蜂と遠雷』(幻冬舎)からうける臨場感は、何とも形容しがたい。ピアノのコンクールを題材とした小説ということで、気になって購入。じっくり読みたいとの思いから、1年近く積読状態だったのだ。

今回のコナカの読書記録は『蜜蜂と遠雷』(わたしは文庫本で拝読した)によせて。主に私の感情のうつろいやその後

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麦茶をごくごく飲みながら。 『生まれた時からアルデンテ』

麦茶をごくごく飲みながら。 『生まれた時からアルデンテ』

コナカの読書記録、第3回。
平野紗季子『生まれた時からアルデンテ』(平凡社、2014年)

こちらは、書店の棚でタイトルと装丁に惹かれて購入した書籍だ。
文章のリズムが心地よく、何度も反芻して読みたくなる。
冒頭の食べ歩きダイアリーには、こどもの目線で、辛辣かつ素直な感想が書かれていて楽しい。

文字から、筆者の食に対する熱量が強烈に伝わってくる。熱量というか、執念のような、すさまじく渇望する何か

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国語の授業のお供。『檸檬』

国語の授業のお供。『檸檬』

今回は、梶井基次郎の『檸檬』の回。

高校の国語の教科書に載っていたことで出会った『檸檬』。一番好きな小説だ。

授業中にプリントをとき終えたり、なんだか退屈に感じたりすると、私は別のページを開き、小説を読んでいたのだった。あの時間は、なんとも至福のひととき。

高校のころはテスト勉強で必死だったなと思い、読み返してみた。

心身の不調や貧しいさまが、ぐさぐさと刺さってくる。そんななかどんよりと、

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1. 『考えの整頓 ベンチの足』

1. 『考えの整頓 ベンチの足』

本を読むなかで、とくに気になった文や考えたことを綴る回。
第一回は、はっとする気づきを与えてくれたこちら。

佐藤雅彦 著『考えの整頓 ベンチの足』

書店をふらふらしていたとき、デザイン関連の棚で見かけた一冊だ。タイトルに惹かれて購入した。時に言葉を検索しながら、表紙をめくってから本を閉じるまで、とっても濃い2時間だった。

まず、、佐藤さんがバザールでござーる、だんご三兄弟、ピタゴラスイッチに

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