何を妥協するか?

よく、「家選びも結婚相手選びも、理想には出会えないので、妥協が大事」などと聞いたりします。結婚相手についてはここでは言及しません(笑)が、家選びについて、僕の友人(Dとします)とのやり取りがきっかけで、考えに変化があったため、今回はそれについて書いていきます。

Dは中学生来の友人で、母親同士も親しく、いわゆる「地元の友だち」です。そんなDが数年前に入籍し、東京の「市」のエリアで新築マンションを購入しました。そんなDの職場は東京の目黒区辺りで、通勤は満員電車を乗り継ぎ、2時間近く掛かると言っていました。何故、縁もゆかりもなく、職場からもかなり遠いその場所で新築マンションを購入したか尋ねると、「色々探したけど、自分の給料で買える新築マンションとなると、ここしかなかった。」と言っていました。

マンションを買った翌年、Dに念願の第一子が誕生しました。Dの仕事は非常に忙しく、通勤時間が長いことも相まって、「出勤時も帰宅時も、子どもと奥さんは寝ている。」と言っていました。そんなDが月~金までの労働を終え、「土曜の朝に子どもをあやそうとすると、「このおじさん誰?」みたいな感じで泣き出してしまう。」とぼやいていました。そして、土日を共に過ごすことで、「お父さん」と認識してもらうそうですが、翌週の土曜になると、また「知らないおじさん」へリセットされている。子どもが産まれたばかりの頃はそんな日々を過ごしていたそうです。

それから時は経ち、Dと久々に会話する機会があったのですが、3歳になったその子はさすがにDの顔を忘れることはなくなったものの、今では「「お父さんキモい」としょっちゅう言われる。」とぼやいていました。それを聞き、思春期ならまだしも、3歳の子がお父さんのことを日常的に「キモい」と言うなんて、「お母さん(Dの奥さん)が日常的にDのことを「キモい」と言っているんだろうな」ということが想像できました。一方で、Dがマンションを購入したことや子育てに奮闘していることをDの母から聞いた僕の母が、僕に対し、「D君は立派ね。」と言ってきました。僕が、「何とも言えない。」と返すと、「あんたはまだ‘おこちゃま’だからわからないのよ。一家の主はそういうものよ。」と皮肉交じりで返されました。それがきっかけで、漠然と、「幸せってなんだろう?」と考えるようになりました。

Dは、僕の親(世代の方々)からは「立派」と言われていますが、家では「キモい」と言われています。その原因を考えてみると、「ほとんど家にいないからではないか?」ということが想像できます。「3歳児神話」という言葉があるように、子どもにとって3歳までの期間は、後の人格形成などにおいて、非常に重要であることが一般的に言われています。Dの子からしたら、その期間のうち、5/7(1週間のうちの平日5日間)はお父さんと過ごしていない認識です。3年で換算すると、約2年分にも及びます。また、Dの奥さんからしたら、頑張って外で仕事しているDの姿は見えにくく、「育児、家事が最も大変な時期にほとんど家にいなくて、手伝ってくれなかった夫」という印象しか残っていないかもしれません。それが「キモい」という言葉に現れてしまっているのではないか?それほど失われた2年分は大きい気がします。先の言葉で表現するなら、僕は「おこちゃま」だからこそ、子どもの気持ちに共感できると思っています。自分だったら、「新築で広い家に住むことよりも、両親がいつも家にいて構ってくれることの方が幸せだ。」と感じると思います。そんな小さいうちは尚更。

僕の親やDの親世代からすると、「父親は家族に為に身を粉にして働くのが美徳」という価値観が未だに根付いていると感じます。そして、Dは子煩悩で家族想いです。また、真面目です。真面目で家族想いなDはそんな価値観を愚直に信じ、実践しているのかもしれません。しかし、その顛末が家族からの「キモい」では、報われないというか、不憫でなりませんでした。

ここでタイトルに戻りますが、家選びでは、何かしら妥協せざるを得ないのが現実です。特にDのように23区通勤の場合、通勤に便利な場所は金銭面で厳しくなる可能性が高く、通勤時間を妥協せざるを得ない気持ちもわかります。だからこそ僕の中で、「Dは無理して今家を買う必要があったのか?」という疑問が湧きました。もちろん、DやDの奥さんには二人の価値観があり、その価値観に基づき判断したのだから、外野の僕がとやかく言う話ではないです。しかし、Dの現状を見て、もし自分がDの立場だったら、「通勤時間」ではなく、違う部分を妥協した方が幸せかな?と感じてしまいました。例えば、「新築」を妥協する。「家を購入すること」を妥協する。「今買うこと」を妥協する(子どもがある程度大きくなってから購入する)。などなど。

そして、反面教師ではないですが、自分に当てはめてみました。当時、僕は家賃を抑えるため、職場から少し遠いところかつ、あまり住環境の良くない家を借りていました。しかし、考えてみると、抑えた家賃で浮いたお金は、「なんとなく将来不安だから」というふんわりとした思いで貯金していただけです。そして、家探し(分譲)もしていましたが、きっかけはこれまたふんわりとした思い(笑)でした。それがちょうど宙ぶらりんになっていて(「家探しで迷子になったら」)、当時起きたあれこれも、全て天からの思し召しかな?と都合良く解釈しました。そして、「目先のお金」ではなく、「自分にとっての幸せ」とか、「妥協すべきでないこと」を改めて考えてみると、「家庭」を何より大切にしたいという結論に至りました。そう思うと、通勤時間を短くして家族と一緒にいる時間を確保すべきではないか?それらを踏まえ、新たな気持ちで賃貸物件探しでもしよう!という気持ちになりました。(ここから前回の記事に繋がります。「賃貸でも家探しが難しい」

家探しにおいて、何を妥協するかというのは人それぞれ違うと思います。そんなとき、表面的なことではなく、「自分にとって幸せってなんだろう?」「どんな風に生きていきたいか?」という根っこの部分まで思い巡らせることができれば、自分に合った選択肢が見えてくるかも?と思いました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?