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018



予定の倍の間隔を空けて
ようやくバスに運ばれる
診察を終えて  会計をして
薬局に行って  薬を貰って
帰りのバス停まで辿り着いて
なんとなく携帯の通知欄を引き降ろすと
不定期更新の続編に微笑まれたりだとか

何件ものおつかいを終えたころ
トートバッグのなかは十一割で
左肩捥げるぞーなんて笑っても
跳ね返りなど無く濃藍に溶けて
無性に声が聴きたくなった気がして
無意識に溢してみたそれもまた溶けて
とぼとぼと玄関の前まで帰還した瞬間
まさにその声を差し伸ばされたりだとか


そんな  ただの偶然でしかないことは
それが  ただの偶然でしかないということは

たとえば
透明な邂逅の無い輪郭を
吹いた風になぞられるように


沿うには硬くて  折るには柔くて
何の資材にもなれそうにないのに
勘違いを継いで  思込みを接いで
拾い集めた添木の裏に身を隠して
そうして守って  どうしてか守って
生きていようとしているのは  それは
死のうとしていることかなあ  どうだろう

死なせてほしいし
死なせてもらえなかったらいい
阻まれても効かないし 
叶わなくたって泣かないけれど

ちなみに 
いま出てきた死は  どれも別の意味であること
わざわざいうようなことでもないけれど









こわいね、ぜんぶが


たしかに信じているけれど
何を信じているのかはわからないし
ぜったいに大丈夫だけれど
何がどうと訊かれたらこたえられないし

好きな人になろうとしているうちは
好きな人になりたい人にしかならないし
好きな人の好きなものを真似たって
好きな人の好きなものの紛い物にしかならないし

できないことなんて一つもないのに
できないことしかないような気がしたり
どうだっていいし  どうなったっていいのに
どれもどうにもしないままでいたりしているのは

僕が弱いことに他ならないけれど
強くならなければならないけれど
その過程で離れるものが  性質を変えるものが
他の何を失ってでも守りたかったものだったら


何を犠牲にして  何を獲得すれば
生きていてよかったと思い続けられるんだろう


雨は止むし  嵐は過ぎるし 今が悪いなら次は良い
それはそうだけど  そういうんじゃないんだよな
幸せでいたいのでも  幸せになりたいのでも  ない
このしあわせを放さないでいたいんだおじさんは








愛したいものを愛せるよう目を離せないんだと
ぼこぼこに凹んだ背面も  攫われていった結晶も
合わせるだけで盾になる  間に置くだけで奪えない
それだけでいいんだけどな
それ  だけ  じゃないんだよな
何よりも尊いものは  何よりも遠いところに
そういうふうに出来ているんだろうなあ  きっと


叶わないに保たれる希望
天邪鬼じゃ済まない捻れ

汲まないでいい  察さないでいい
可哀想にはされてもされない
助けてあげるも  救ってあげるも
何本差し出されても掴まない

あの手この手で隠そうと足掻けど
見透かなくてもみえているをずっと
弱いのはどちらかわからないくらい
痛みになっても痛がらないをずっと

あるかもわからないものを望んで
待っていられずに歩き続けている
前がどっちかもわからないままに
止まれないからだけで歩いている

眠れない夜の布団の中
逃げ込んだ公園のブランコ
交わることのない額の向き
不整脈に乗って溢れる息  に乗る音  風


自分も天邪鬼だったのかもしれない  とか
薄々気付くような感覚に気付いてしまって以来
内側のもの  全部反転させる癖がつきそう
本人ごと騙す嘘は質が悪いので仲良くしたいな

上手く共生すると破茶目茶な魅力になること
知っているので  磨いてみようかなあ
ただの石かもしれんけれども
それなら最後は無くなるから
どっちにしても  素敵な未来しかない
うわあ  気付いちゃったな、、








生きたくて生きていることと
未来への未練を抱かないこと
纏めて飲み下したら吸収のおと
地を割った息吹は刹那かもしれなかった

気付かぬ間に植えられた種は
おこぼれで密かに育っていたんだな
もしかしてこれも  もしかしたらもっと
いいんだ  それでいい  次はそれがいいな

この歳を描くのはそんな色がいい
年末の歩道橋でこっそり浮かべた
欲を深めれば共謀者がほしいけれど
いないのはいないのでいいからなあ

勇気のない入れ物と  現実味のない内容物で
果たしてどこまで行かれようか
途中で拾った片手に収まる程度の愛とか希望とか
そのまま果て迄  そんなのだって  いいのだけれど








昨日にだってあった
不意の目覚めから二分以内
また届く  段ボール 
若しくは茶封筒などのそれ    (017)

アッシュブラウンみたいなチェックシャツ
ゆるっと柔らかく太め長め濃いめのデニム
見えない靴下の見えない三本線  四色展開
モノトーンと迷ってイエローを選んだのは

それは  
僕だけが憶えていればいいか  








生活を焚べて飛ぶ火花と揺蕩う煙
晴天にも曇天にも似合う声と匂いは夕立まで








おわり、


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眠れない夜に

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