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名前の由来

1988年の晩秋、未熟児で生まれた私に『まり』と名付けてくれたのは産んでくれた母だった。母は文豪家の森鴎外の娘 ”森茉莉さん” にちなんで名付けたのだと、かつて話してくれた。              

茉莉さんは森鴎外に溺愛され「お茉莉」と呼ばれていて、お茉莉、茉莉、茉莉さん……、母はその名前の響きが美しいとおもい、「茉莉」と名付けたかったらしいのだけど、姓名判断によると画数がよくなかったため平仮名となった。                

子どもの頃の私は、漢字の名前に憧れたし、名前に〇〇のような人に育ってほしい、と願いが込められていたらよかったのにな、と心細くおもうこともあったけれど、年齢を重ねるにつれて名前を褒めてもらえる機会が増えて、平仮名特有の柔らかさが気に入って、気がつけば心から自分の名前を好きだとおもえるようになっていた。            

数年前に読んでからずっと心に残っているエピソードがある。  

自分を愛することは、実は難しい。しかし、そのためにはとても簡単な方法がある。それは自分の名前を好きになること。そう説いたのは、わが国初の女性衆議員となり、園田直・元外相の妻としても存在感を示した園田天光光さんである。天光光。思わず由来を聞きたくなる名前だが、幼いころ光を一つ省き「天光」と書いたら、父に叱られたという。天は宇宙、光は宇宙創造の光、もう一つの光は「世の中の光となってくれ」という親の願い。だから名前は、その願いまでしっかり書くように、と。(2015年 中日新聞「中日春秋」)

天光光という名前に託された願い、深い愛情。なんて壮大なパワーに溢れているのだろう。          

自分自身を見失いそうになったとき、大切にできていないと気づいて落ち込んだとき、自分の名前のことをそっと好きになってみることから始める。その一歩を踏み出す。それはとても素敵なことだと私はおもうのです。


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