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#5 「ホテル・ムンバイ」

皆さんこんにちは!私の映画備忘録シリーズが5作目となりました〜
今回は私が大好きなジャンル「ノンフィクション」「アクション・スリラー」からこちらをお届けします。

テロに対面した時、自分だったらどうするか」

本作は、2008年11月に起きたムンバイ同時多発テロを題材にした作品です。
「ホテル・ムンバイ」を観終わって、すごい映画を観てしまったなというのが率直な感想です。

自分がその場にいたら冷静でいられるだろうか、真っ先に殺されるんじゃないだろうか...そんなことを考えながら、終始緊張が漂っていてとても疲れながら観ました。これが実際に起きたなんてショックすぎます。(事件当時12歳でしたが記憶にない...)

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そして、テロの描き方に大きな特徴を持った作品でした。
まず、人質だけでなく、テロリスト側の事情も描いているのです。家族のために命をかけるホテルのゲストに対して、テロリストも貧しい家族のために戦っていることが示唆されています。ホテルの一流の食事を食べて喜んでいる姿も印象的でした。

そして、リアリズムです。出演者の表情が本当にテロの恐怖に怯えているように見えました。容赦ないテロリストの無慈悲な行動が、さらに作品の迫真性を高めています。観ている側も、いつの間にか占拠されたタージマハル・ホテルに身を置き、テロリストに見つからぬよう息を殺して隠れているような錯覚を覚えました。

今回はそのリアリティを追求した演出方法について迫っていきます。

ストーリー

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インドの巨大都市ムンバイに、臨月の妻と幼い娘と暮らす青年アルジュン(デヴ・パテル)は、街の象徴でもある五つ星ホテルの従業員であることに誇りを感じていた。
この日も、いつも通りのホテルの光景だったが、武装したテロリスト集団がホテルを占拠し、“楽園”は一瞬にして崩壊する。500人以上の宿泊客と従業員を、無慈悲な銃弾が襲う中、テロ殲滅部隊が到着するまでに数日かかるという絶望的な報せが届く。アルジュンら従業員は、「ここが私の家です」とホテルに残り、宿泊客を救う道を選ぶ。一方、赤ん坊を部屋に取り残されたアメリカ人建築家デヴィッド(アーミー・ハマー)は、ある命がけの決断をするのだが──。
公式HPより引用)

2008年に起きた「ムンバイ同時多発テロ」 

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2008年11月26日、ムンバイで同時多発的に発生した10件のテロ立てこもり事件。駅や旅行者に人気のレストラン、病院、映画館など複数の場所が、イスラーム過激派と見られる勢力に襲撃され、多数の犠牲者を出しました。その中の一つが本作の舞台、タージマハル・ホテルです。

29日に事態が終息するまで、死者は少なくとも172人、負傷者は239人にのぼっています。

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主演のデヴ・パテルは、『スラムドッグ・ミリオネア』『チャッピー』『LION』など名作映画に数多く出演するデヴ・バデル。デヴ・バデルは製作総指揮にも名を連ねており、本作への強い思いの表れが感じられます。

というのも、彼のデビュー作にして出世作の『スラムドッグ・ミリオネア』は、ムンバイを舞台にした作品でした。ラストはムンバイの駅で歌い踊るハッピーエンドで終わります。デヴ・パテルたちがラストシーンを撮影した数ヶ月後、その駅がテロリストの最初の標的となり、自動小銃による無差別殺戮が行われたのです。

リアリティを追求したロケーションと演出

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ロケーションはリアリティを追求する上で重要なポイント。
本作でもムンバイ同時多発テロを描き出すために実際の現場を多用しています。

襲撃された駅のシーンは、実際のCST(チャトラパティ・シヴァージー・ターミナス)駅で撮られました。冒頭で犯人たちが船に乗って到着するシーンも、実際に犯人が上陸した海辺の漁村でロケをしたそうです。

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そして最大の課題は、タージマハル・ホテルのシーンをどうやって撮影するかだったそうです。今でも営業しているホテルですから、貸し切りでの撮影は難しいでしょう。
外観は実際のホテルを使用し、屋内のいくつかのロケーションは監督の故郷オーストラリア、銃撃と爆破の大半が起きたホテルの正面ロビーはムンバイ近郊の大きな屋敷で撮影されました。

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さらにリアリティを追及するため、現場には巨大なスピーカーが設置され、突然、大きな銃声が流されたそうです。段取り通りの演技ではなく、本当に恐怖しているようは緊迫感が見えるのはこういうカラクリがあったのですね。
デヴ・パテルは「地獄だよ、それは。僕らはいつも不意打ちを食わされた。それによってどんなに緊張感がもたらされたか想像がつくだろう。僕は、『俳優としてではなく、偽りのない恐怖心で演技に臨むんだ』といつも自分に言い聞かせていたよ」と語っています。



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