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レトロな洋館巡りと港町

新緑のきらめく五月の中旬、横浜へ出掛けました。かつて開港の地として西洋文化の影響を受けた異国情緒溢れる街、その魅力を堪能したい。

・馬車道十番館

石造りの歴史を感じる建物が残る馬車道商店街、慣れない街に迷いながら道を一本入ると、レンガ張りの西洋風な建物、馬車道十番館に辿り着いた。

馬車道十番館は喫茶店とバーを併設したフレンチレストランで、建物は文明開化頃の洋館を再現しているそう。

当時、海沿いに建てられた外国の商館には番号が付けていたそうで、”十番館”という名称もそれに倣って付けられたもの。

今回は一階にある喫茶室へ。
鮮やかなステンドグラス、花形のランプ、赤い革張りの椅子、ファンが回る吹き抜けの空間には、心地よいクラシック音楽が流れている。

馬車道十番館ときいて私がまっさきに思い浮かべるのは、特徴的なまるい形に苺がふたつのったこのショートケーキ。
ふわふわとしたスポンジになめらかな生クリームがたっぷりと搾られていて、口いっぱいに頬張ると幸せな気分になる。

銘菓である「ビスカウト」も購入した。
1550年代に日本に伝わったとされる、厚みのあるビスケットで様々な味のクリームをサンドしたお菓子。馬車道が発祥のガス灯が描かれた、レトロなパッケージがかわいらしい。

・山手ROCHE

昼食は山手の丘を登ったところに店を構える、山手ROCHEへ。

1967年創業の洋食レストランで、入り口のショーケースにはオムライス、ビーフシチュー、ステーキと洋食店定番のメニューが並んでいる。

天井から吊り下げられた橙色の灯り、クロスの掛かったテーブル、レトロなデザインの窓からは厳かな外人墓地の門と、陽の光をいっぱいに浴びた新緑を見渡せた。

評判のビーフシチューハンバーグセットは、ハンバーグの上に牛すじが乗った贅沢な一皿。10日以上もかけて作り込んでいるというデミグラスソースはほのかに甘味があり、濃厚でやさしい口当たりで絶品…

ひと切れずつ丁寧に口へ運んでいく優雅な昼食、横浜に来たら絶対にこだわりの洋食を愉しみたいと思っていたので、念願が叶ってうれしい。

・港の見える丘公園

昼食の後は港の見える丘公園へ。

「イングリッシュローズの庭」と呼ばれる空間に入ると、異国に迷い込んでしまったのでは?と錯覚してしまうくらい色とりどりの薔薇が花開いていた。
庭の向こうには横浜市イギリス館という洋館が聳え、まさに英国の庭を訪れた気分になれる。

階段を降りていくと、「香りの庭」と名付けられた場所に行き着いた。
噴水を中心に、ダマスク、フルーツ、ティー、ミルラと香りの領域に分かれているそう。

数え切れないほどのバラが気高く咲き誇っていて圧倒された…

バラの回廊

・CAFÉ du la PRESSE

陽が傾きはじめた午後、休息のために日本大通りに密かに佇む、CAFÉ du la PRESSEへ。

この先にほんとうにカフェがあるのだろうか?と疑ってしまうような、重々しい雰囲気の階段をゆっくりと上がっていくと、小さなカフェスペースが現れる。
開放感のある空間と上品な色合い、パリに来てしまったかのようなクラシカルな内装に心ときめく。

CAFÉ du la PRESSEでは、パティシエが手掛ける本格派のフランス菓子を愉しめる。
談笑が響く店内は思いの外賑わっていて、どうやらこれはカフェを社交の場として捉える”パリのエスプリ”らしい。

ショーケースに並ぶスイーツは、宝石のような輝きを放っている

数多くあるメニューの中には「記者たちのカフェ」「弁護士たちのカフェ」とオリジナルのものも幾つかあり、迷ってしまう…
魅惑的な名前のカクテルも見つけたので、いつか日が暮れた頃に再訪したい。

この日はエモアという真っ赤なハート型のケーキと、アールグレイを注文した。

コーティングの内側は甘いチョコレートのムースで、その中に酸味の効いた苺ジュレが含まれている。淹れたての熱い紅茶からはベルガモットの華やかな香りが広がって、うっとりとする。

一階には生演奏を愉しめる美しいレストランAlte Liebeがあり、恋人と籍を入れる際には、互いに馴染み深い土地であるこの場所で食事をしようかと思案している。

・è più

最後に、別日に訪れたワインとジェラートの店、è piùを添えて。

ロゼワインと共に味わったジェラート、大人っぽい風味のアールグレイと蜂蜜、とろける甘さのチョコレートチップ、濃厚なミルク。
雰囲気のある照明の下で、ワインを飲みながらジェラートを味わう特別感に心が弾む。


爽やかな海沿いの道、西洋風の建物が並ぶ洗練された街並み、お洒落という表現がぴったりのカフェ、洋食店。
幼少の頃から何かと訪れていた街だけれど、溢れるほどの美しさをようやく知れた気がする。

何度も訪れてはそのたびに新しい魅力を見つける、きっとここはそんな場所だと思う。

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