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「2人組をつくってください」

ずっと、だれかにとっての
いちばんになりたいと思っていた

教室のなかで、学校のなかで
だれかひとりを選ばなければいけないとき
わたしはいつも余っていた

体育の授業でつくる2人組
文化祭を一緒にみてまわる子
修学旅行の2人部屋

あらゆる場面で必要とされる2人組の相手を
わたしはいつも見つけられなかった

仲良しの子たちはある程度いたけれど、
2人組を必要とされたとき、その子たちが
真っ先に思い浮かべるのはわたしではないと
分かっているから声を掛けられなかった

高校生の頃のわたしにとって
教室は世界のすべてだったから、
ひとりでいることはゆるされないのだと
信じてやまなかったし、
2人組をつくる場面で余ってしまうたびに
ちょっと拗ねたり、この先の人生で
あと何回こんな気持ちになるんだろうと考えて
帰り道にこっそり泣いてしまったりしていた

🫧

高校を卒業して3年
同級生は就活の真っ只中だろうか
もうほとんど誰とも連絡をとっていない

わたしは、知り合いがひとりもいない
僻地にある大学に進学して、
2ヶ月通ったところで体調を崩して退学した

そこから受験勉強を再開して、
高校生の頃からずっと憧れだった大学に
1年遅れで合格を貰うことができた

そうして、いまの大学で迎える3回目の春

友達は相変わらず少ないし
お昼ごはんもほぼ毎回ひとりで食べている

高校生の頃から変わったことと言えば、
自分の意思でひとりでいるようになったことくらい

通学も授業も空きコマもお昼休みも全休の日も
ひとりで過ごすほうが気楽だと気付くのに
ずいぶんと長い時間がかかってしまった

でも不思議なもので、
ひとりでいることを好むようになって以来
ありがたいことに、いつも周りに誰かしらが
いてくれるようになった

同じ授業を取ろうと誘ってもらったり
一緒に教室を移動したり途中まで一緒に帰ったり
授業のない日に、会おうよと連絡をもらったり

あの頃ずっとほしかった言葉や時間を
溢れるくらいたくさん貰いながら過ごしている

ひとりでいることもだれかといることも選べる、
「2人組をつくってください」と言われるたびに
どうしようもない気持ちに陥っていたあの頃からは
考えられないほどぜいたくな環境に身を置いたいま
次に友達のことで困る機会が訪れるとすれば
結婚式のとき新婦側の友人が少なすぎるとか
それくらいのことであってほしいと願っている

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