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貴方と見る景色は他のどんな人と見る景色よりも美しいから


新しい家で暮らし始めて一週間が経った。

恋人の腕に包まれて、顔を埋めている時が一番好き。
あったかくていい匂いがして、離れたくなくなる。
好きだなぁ、って思う。

私が拗ねて外方を向いたら、悲しそうに私の名前を呼ぶから、思わず向き直って抱きしめてしまう。
狡いけど、そんなところも好きで。

自分の中で恋人の存在が、立ち位置が、少しずつ変わっているように感じた。ただ「好き」という感情だけじゃない、今まで抱いていたのとはまた別の安心感だったり、愛が芽生えてる。


生きていてくれるだけでいいと思った。
その心臓が動き続けてくれるなら、その目で私を見て笑いかけてくれるなら、それだけでいいと思った。
私は心の底からこの子のことを愛しているんだと、そう思った。

恋人の温もりに包まれていると安心して泣きそうになる。
いま私、この子に守られてる。
ずっと隣にいてね。
出来ることなら永遠に、貴方のそばに居たい。
この儚くて尊い命を、ずっと隣で守り続けたい。

無防備で無垢な寝顔を見ながら、こんな大それたことを考えているけれど、この溢れるほどの愛はこの子に全て伝わっているのかな。


いままではどちらかが飛行機に乗って会いに行って、数日後には帰らなければならなかったけれど、もうこれからは毎日隣にいられるんだ。

飛行機に乗って、生まれ育った地を離れた時、寂しさと会える嬉しさが混ざり合う中に、確かに覚悟があった。

単なる同居じゃない、恋人として、生涯を共にすると決めた相手との“同棲”。

たくさん考えた末の、“同棲する”ということに対する覚悟。
生まれ育った地を離れて恋人の元へ行く覚悟。
自分の命よりも大切な存在を、ずっと隣で支えていく覚悟。

ただ一人、飛行機の窓の外を見て、夜の東京の街を見下ろしながらたくさんの感情が渦巻いた。

東京の夜景、ちゃんと見たの初めてかもしれない


あの夜から一週間、自分の住む家に毎日恋人が帰ってくるのが嬉しくて幸せで、永遠に続いて欲しいと思う。


『同じ時間に同じ場所で同じものを見て、手を繋いで体温を共有する未来が欲しくてたまらなくて、それが許される長い未来を私たちにください』

以前そんなことを願った、いるかもわからない神様に懇願するように。
ただの遠距離じゃなかった、次いつ会えるのか、もしかしたらこれが最後かもしれないと会うたびに思いながらお互い過ごしていた。

だからこそ今の生活は奇跡みたいなもので、当たり前じゃないんだと、きっと周りの人たちよりもそう思いながら生きている。


お風呂から上がってリビングへ行くと、髪を乾かし終わった恋人がすやすやと寝ているのも
ご飯を食べる時、隣にいて欲しいとずっと思っていた存在が確かにそこにいることも
日常の一瞬一瞬が宝物のように輝いていて、大切で、幸せで。


離したくない、例え神様の悪戯で私の命よりも大切な存在が連れ去られそうになっても、私が手を離さなければ大丈夫だって、そんな絶対的な自信がある。
愛の力ってすごいんだから。


「〇〇は生きるわよ。人はね、どんなに悲しいことがあっても、どれほど絶望しても、ひとつの感動や、ひとつの喜びや、ひとつの恋で生きられるの」

生きてさえいれば/小坂流加

私の好きな小説の中にある言葉。


遠いところに住む出会うはずのなかった私たちが偶然出会ったように、きっとこれからも思わぬところで人生の行き先は変わって行くんだと思う。
それでも私たちならきっと乗り越えていけるはずだから。

これからもずっと、この幸せな日々が続きますように。


次東京に帰るときは一緒に帰りたいね。
私の見てきたものを片っ端から全部見せたい。
きっとあの子なら喜んでついてきてくれる気がする。











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