あの頃確かに聴いた曲が 不意に流れてくるから なんの心の準備もないまま、曲に添えられた記憶たちが溢れてきた。 不思議だけれど、この感覚が懐かしくて あの頃に戻ったみたいで嬉しくて 夜中の3時にイヤホンから流れる過去たちに耳を傾けながら パソコンと向き合ったりなんかして。 “苦しい思い出は何年経っても覚えている。突然引き出しから顔を出しては、私に当時の感情や光景を映画のように見せつけてくる。一時停止できない、一方的な上映。それなのに幸せな思い出は、自分で引き出しを開けないと
何かが物足りなくて、ずっと何かが足りないけど、また明日が今日になって昨日になってしまった。わからない時期だ。何に向かって走っているのかわからないけど走ってみてる。暖かくなってきたね、もう夏至だって。 これからまた昼の時間が短くなっていくなんて、まだ夏は始まったような始まってないようなそんな感じなのにもう終わったの? 木の葉がざわざわと音を立てて生温い風に揺られている。世界は雑音まみれだ、何も聞こえない見えない、煩い。 愛だとか恋だとかそんな明確なものじゃなくたってい
深呼吸をする。 冬の澄んだ空気が全身を駆け巡った。 君が見ている世界はどんなに綺麗で美しいのだろう 君が見ていた世界を最後に一度だけ見てみたいって、そんな歌詞があった気がするけど、なんだったっけ。 私たちが出逢って恋をして、同じ世界を見ると決めた あの頃の君も感情も景色も、全てが愛おしくて全部抱えて抱きしめたくなるんだ 初めて会った日、雪が降っていた。 君の住む街へ、私が初めて降り立った日。時計の針がもうすぐ18時を指す頃、私の泊まっていたホテルの前に君が来た。 ちょ
東京の風は生温かった。 こっちの風は、空気は、からっとしていてなんだか清々しい。 たくさんの人がいる室内で、東京の5月みたいな若干の暑さが身を纏う。たぶん、間違えて暖房でも入っているんだろう。 この程度の暑さなんて慣れっこだった。8月になれば息をするのも一苦労なほどの暑さが襲う東京で生きてきたんだ、これくらいどうってことない。 周りを見ればみんなハンカチで汗を拭ったり凄く暑そうにしていたり、自分が違う土地で、気候で、生きてきたのを突きつけられたような、でもそれが少し嬉しかっ
新しい家で暮らし始めて一週間が経った。 恋人の腕に包まれて、顔を埋めている時が一番好き。 あったかくていい匂いがして、離れたくなくなる。 好きだなぁ、って思う。 私が拗ねて外方を向いたら、悲しそうに私の名前を呼ぶから、思わず向き直って抱きしめてしまう。 狡いけど、そんなところも好きで。 自分の中で恋人の存在が、立ち位置が、少しずつ変わっているように感じた。ただ「好き」という感情だけじゃない、今まで抱いていたのとはまた別の安心感だったり、愛が芽生えてる。 生きていてくれ
新しい土地、新しい人、新しい匂い。 いろんな「新しい」が私を変えていっている、そんな確かな実感とともに目の前を通り過ぎていく風景が、ちょっとだけ名残惜しかったり。 桜、咲き始め。 久しぶりに会う友達と、久しぶりに訪れた場所で、今年初めての桜を見た。 上野公園、6年ぶりくらいに来た気がする。 平日なのにびっくりするほど多い人、人、人。 脇道に逸れて見つけた上野東照宮は別世界かのように穏やかだった。 『いいね静かで』 『いいねぇ』 『ほんとに19歳の会話かよ』 蕾っ
東京の夜は明るい。 灯りひとつない真っ暗闇に包まれることなんて、きっとこれから先ないだろう。永遠の平和があればの話。 夜9時の地下鉄は混んでいる。降りようとしたら前にいたおじさんがスマホゲームをしながらゆっくりホームに出ようとしていて、後ろ詰まってるんだから早く降りてくれよと思いながら足を踏み出した瞬間に意図せず思いっきり蹴っちゃって、あっ、と思ったけれど、まあお互い様だよななんて心の中だけど言ってしまった自分が治安悪すぎて呆れた。 何も考えずに歩いていたら前から突然現れた