春桜

戻れない“いま”に後悔だけは残したくなくて

春桜

戻れない“いま”に後悔だけは残したくなくて

最近の記事

出逢ってくれてありがとうと思いたい

茂みに輝く紫陽花の花が美しいと思う 小さな丘を登って見えた夜景に心がふわっと浮いた気がした。 ちょうどいい、これくらいがいい。明るすぎず暗すぎない光の数。 24時までバイトをして、迎えにきてくれた恋人と夜の公園を散歩した。引っ越す前はよくこの公園で手を繋いで散歩したなぁ、懐かしいね、なんて言いながら。ふたりのお気に入りの曲を流しながら夜道に車を走らせた。深夜2時くらいだった。 きっと時間が経ってから思い出すのって、特別な日よりもこういう何気ない日常の方が先なんだろうと思う

    • 何度桜が散っても、君が隣で笑っていますように

       何かが物足りなくて、ずっと何かが足りないけど、また明日が今日になって昨日になってしまった。わからない時期だ。何に向かって走っているのかわからないけど走ってみてる。暖かくなってきたね、もう夏至だって。  これからまた昼の時間が短くなっていくなんて、まだ夏は始まったような始まってないようなそんな感じなのにもう終わったの?  木の葉がざわざわと音を立てて生温い風に揺られている。世界は雑音まみれだ、何も聞こえない見えない、煩い。  愛だとか恋だとかそんな明確なものじゃなくたってい

      • 狂おしいほど愛しかった

        _家を飛び出すと冬みたいな冷たい風が頬をかすめる。 昨日までの暖かい風はどこへ行ってしまったのだろう。今日が少しだけ特別な日に思えた。 ビルの立ち並ぶ都会に引っ越してどこか日々が無機質なものになった。駅に向かって歩きながらふと後ろを振り返ったら遠くのほうに山が1つだけ見えてほっとした、生きていて良かったと思った。 大学の図書館で勉強をして、あまりにもお腹が空いたから何か買おうと思って外に出た途端、自然の匂いが身体中を包み込んで少しだけ泣きそうになった。_  鳥のさえず

        • ああこれが愛なんだと、

          2024年、4月。  新年度になったというのに、いつもと変わらない感情と足取りで歩を進める朝。一ヶ月ほど前に東京に帰省した時は桜が咲き始めていたけれど、もう散る頃かな。こっちでは桜はまだ眠っているみたい。  旅行の思い出をお裾分け。小樽に行ってきました。とってもいい街。  幸せに満ち満ちた旅行でした。初めて誕生日サプライズされて初めて嬉し泣きしちゃった。人って嬉しすぎると本当に涙が出てくるんだ。自分の誕生日を祝ってくれる人がいるってすごく幸せだな、恵まれてるなと思った日

        出逢ってくれてありがとうと思いたい

          一輪の花

          深呼吸をする。 冬の澄んだ空気が全身を駆け巡った。 君が見ている世界はどんなに綺麗で美しいのだろう 君が見ていた世界を最後に一度だけ見てみたいって、そんな歌詞があった気がするけど、なんだったっけ。 私たちが出逢って恋をして、同じ世界を見ると決めた あの頃の君も感情も景色も、全てが愛おしくて全部抱えて抱きしめたくなるんだ 初めて会った日、雪が降っていた。 君の住む街へ、私が初めて降り立った日。時計の針がもうすぐ18時を指す頃、私の泊まっていたホテルの前に君が来た。 ちょ

          一輪の花

          夏の終わりに

          いくつもの「生」が街を行き交っている。お昼休憩なのであろう会社員のグループや、整えられたスーツに鞄を持ったサラリーマン、絶対にこの人は美容師だというような雰囲気を見に纏った女性、予備校を出入りする学生と、これから部活に行くはずの大学生たち。 みんなそれぞれの家族がいて、関わる人達がいて、生きてきた環境がある。誰一人としてそれらが全く同じだという人は居ない。 同じ日本なのに北と南と真ん中じゃ全く気候が違う、こんなにも。でも人々の口からは同じ「暑い」という言葉が出てくる。生まれ

          夏の終わりに

          好きなものはふたりじめがいい

          暑いねから始まる、庭のデッキに並んで座って好きな曲をかけながら食べるアイスは最高なの 私の好きな曲も好きなバンドも、知っているのはあの子だけで、これからもきっとずっとそう。 いままで好きなアーティストとか曲とか、誰にも言ったことはなかった。 好きなものは独り占めしたくなっちゃうから。 それにすごい有名って訳じゃないから尚更、私がこのバンドや曲たちに出会えたことも、そのバンドの曲を聴きまくったり歌詞の意味を考えていたりしていた時間も、簡単に誰かに持って行かれてしまうのが勿体

          好きなものはふたりじめがいい

          満天の初夏

          東京の風は生温かった。 こっちの風は、空気は、からっとしていてなんだか清々しい。 たくさんの人がいる室内で、東京の5月みたいな若干の暑さが身を纏う。たぶん、間違えて暖房でも入っているんだろう。 この程度の暑さなんて慣れっこだった。8月になれば息をするのも一苦労なほどの暑さが襲う東京で生きてきたんだ、これくらいどうってことない。 周りを見ればみんなハンカチで汗を拭ったり凄く暑そうにしていたり、自分が違う土地で、気候で、生きてきたのを突きつけられたような、でもそれが少し嬉しかっ

          満天の初夏

          貴方と見る景色は他のどんな人と見る景色よりも美しいから

          新しい家で暮らし始めて一週間が経った。 恋人の腕に包まれて、顔を埋めている時が一番好き。 あったかくていい匂いがして、離れたくなくなる。 好きだなぁ、って思う。 私が拗ねて外方を向いたら、悲しそうに私の名前を呼ぶから、思わず向き直って抱きしめてしまう。 狡いけど、そんなところも好きで。 自分の中で恋人の存在が、立ち位置が、少しずつ変わっているように感じた。ただ「好き」という感情だけじゃない、今まで抱いていたのとはまた別の安心感だったり、愛が芽生えてる。 生きていてくれ

          貴方と見る景色は他のどんな人と見る景色よりも美しいから

          雪の降る街へ

          雪なんて滅多に降らなかった。 遊歩道の桜が綺麗だった。 何も音のない空間、耳を澄ましてみるとなんだか騒がしく感じる。 いろんな周波数の音が行き交っているような、そんな感じ。 私は今日、この街を離れる。 雪の降る街に行く。 きっとそこで見る桜はもっと綺麗なんだろう。 隣に最愛の人がいてくれるから。 来年も再来年もその先も、ずっと君の隣で見ていられたら。 それ以上は何も望まないから。 この街の最後を、一歩一歩踏みしめて歩いた。 もう一度訪れる日は来るのだろうか。 少しだ

          雪の降る街へ

          いつか過去になるいまを生きる

          新しい土地、新しい人、新しい匂い。 いろんな「新しい」が私を変えていっている、そんな確かな実感とともに目の前を通り過ぎていく風景が、ちょっとだけ名残惜しかったり。 桜、咲き始め。 久しぶりに会う友達と、久しぶりに訪れた場所で、今年初めての桜を見た。 上野公園、6年ぶりくらいに来た気がする。 平日なのにびっくりするほど多い人、人、人。 脇道に逸れて見つけた上野東照宮は別世界かのように穏やかだった。 『いいね静かで』 『いいねぇ』 『ほんとに19歳の会話かよ』 蕾っ

          いつか過去になるいまを生きる

          無音の街

          東京の夜は明るい。 灯りひとつない真っ暗闇に包まれることなんて、きっとこれから先ないだろう。永遠の平和があればの話。 夜9時の地下鉄は混んでいる。降りようとしたら前にいたおじさんがスマホゲームをしながらゆっくりホームに出ようとしていて、後ろ詰まってるんだから早く降りてくれよと思いながら足を踏み出した瞬間に意図せず思いっきり蹴っちゃって、あっ、と思ったけれど、まあお互い様だよななんて心の中だけど言ってしまった自分が治安悪すぎて呆れた。 何も考えずに歩いていたら前から突然現れた

          無音の街

          学校とか職場とか、そういう「集められた人たち」の中での出逢いじゃなくて、新幹線で隣の席になった人だとか、人見知りのくせに居酒屋で何の気の迷いか話しかけちゃった人だとか、一人旅してて旅先で言葉を交わした人だとか、そういう偶然と必然の巡り合わせで生まれたような出逢い、急募。行動しろ。

          学校とか職場とか、そういう「集められた人たち」の中での出逢いじゃなくて、新幹線で隣の席になった人だとか、人見知りのくせに居酒屋で何の気の迷いか話しかけちゃった人だとか、一人旅してて旅先で言葉を交わした人だとか、そういう偶然と必然の巡り合わせで生まれたような出逢い、急募。行動しろ。

          ミルクティーは部活終わりの味がする

          自販機に“あったか〜い”が追加されてた。 室内だし今は眠気とおさらばしたいから、そんなもの求めてないんだよなあ。 私が今求めてるのは冷たいコーヒー、、 なんであっためられちゃってんのよ、キミ。 飲みたかったものがあったか〜いに変身してるから、仕方なく別のものを探す。 飲んだことのあるものがほとんど温められていて、悩んだ末に選んだのがミニサイズの冷たいミルクティー。 無糖の紅茶を難なく飲めるせいか、ミルクティーのあの甘さが「あんた太るよ」って囁いてくるみたいで最近はほ

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          サンタクロースは今年も

          街がクリスマスを迎える準備を始めた。 まだハロウィンも終わってないのにな、なんて心の中で思いながら、店頭に出されたクリスマスグッズを眺める。 子供って狡い。 全てが新鮮で、わくわくどきどきの連続で。 まだ幼稚園の門を潜っていた頃、絵本の中の世界は夜のディズニーランドみたいにキラキラしてた。 どこかの国の男の子。窓の外を見れば雪が積もっていて、部屋には暖炉があって、赤と白の大きな靴下が吊り下げられている。 朝起きたら綺麗に包まれた大きなプレゼントがあって、目を輝かせる。そんな

          サンタクロースは今年も