桜ですらその青に染まる。

わざと好きになって
味わってみたかったから
未熟な林檎を齧って春に息を吹きかけた

心えぐられて
こぼれ出る赤い涙が
林檎を染めた

桜の色さえ青と言ってしまうほどの酸っぱさを失って
美しく咲いた桜は、甘く春の中を舞った。

日が落ちて空が桃に染まっていた。

然有琉 湊(さあり みなと)

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