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カップ派の冒険

この歳になって気がついた事がある。
私の嫌いな事。

嫌いな事は沢山有るけれど、
この間友達と人気のジェラート屋に行った時、その場で上位に繰り上がった '' 嫌な事リスト''が1つある。

私がアイスを頼む時はコーンでは無くカップと決めている。

カップの方がメリットがあるという事よりも、コーンのデメリットの方が大きく上回るからだ。

そもそも安いコーンは金魚すくいのポイっぽくて貧乏臭い。折角の美味しいアイスが貧乏臭いのだ。

上のアイスを食べ終わり、そのままのミルキーな味で終わりたい口の中に、「勿体無い」と行き場を失ったコーンという名の金魚の餌を供養する。

そして極めつけは温度との戦い。
溶けてダラダラと垂れるアイスをベロでもってすくいあげなければならない。

野蛮だ。

が故に私はカップ派なのである。
美味しいアイスはスマートに食べたい。

***

-イタリアンジェラート ''Gelato Paradiso'' Laguna Beach, CA -

人の多さからして「間違いない」感を歩道の方まで出していたこの店。ちょっとしたディズニーランドのアトラクションくらいの待ち時間を経てようやく店内へ。

甘くていい匂い…

そう。ここは貧乏臭いコーンでは無く、自家製ワッフルコーンでのご提供である。
勿論カップもある。

その場でスタッフが丸い機械に液を流し入れ、待つこと1分。
ビッシリと格子状にプレスされたワッフルが出来上がった。

まだ熱いワッフルを型から取り出し今度は違う器具でクルクルと巻いていく。

断固としてカップ派の私の心は揺らいだ。

冷めて本来の形状になる迄カウンターに並ばされるコーン達はとても魅力的だった。

コーンにしてみよう。

思い切った。

ジョークだと思う程にこれでもかとコーンに積まれていくジェラート。
バランスの取れた3種のジェラートは落ちそうで落ちない。
そのスキルさえあればジェラート屋から左官屋に転職も悪くないぞ、兄ちゃん。

心の中で「も、もういい....」と嘆くも伝わるわけはない。

ジェラートを受け取った右手は既に自信をなくしていた。

「絶対に溶ける」

この量を溶ける前に平らげるなんて不可能だ。

私は店員に「もしも」の時のカップを貰った。
スプーンと紙ナプキンも備えた。

外観とも相まってインスタ映えするジェラート。

しかし写真を何枚も撮っている暇などない。
さぁ、早く食べないととんでもない事になる。


私が選んだのはチョコレート、ミントチップ、ピスタチオ。

先に親指に垂れたのはチョコレートだった。

ヤベェ

スプーンを使うも、追いつかない。
仕方なく親指の上をペロリ。

死角になっていた反対側のミントチップも親指以外の全ての指に線を垂らしていた。

ヤベェ…

コーンの周りを一周ペロリ。

野蛮だ。

混ざりに混ざった味がする。
「早く食べないと」
というストレスと
「溶けてしまう」
プレッシャー

ジェラートに脅迫されてどんどん野蛮になる私。

本当は座ってゆっくり味わいたい。
が、友達は夕日をみたいらしい。

指全体に溜まっていく利息。それを重なったジェラートが追い立ててくる。
トイチならまだマシだ。
こちとら秒で借金地獄だ。

とうとう私の野蛮も限界に達した。

バカバカしい!

立ち止まった。
夕日なんて明日見ればいい。

私は貰った空のカップにジェラートを躊躇なくひっくり返した。
ジェラートがコーンの帽子を被り、愛らしい。

くすんだ緑色が顔を出している。
コーンに近い部分ばかり庇って辿り着けなかったピスタチオにようやくスプーンが刺さる。

ぅんまぁぁ…

カップで食べるジェラートはなんて美味しいのだろう。
強迫観念から解放され思わず舌鼓を打つ。

数々の ''ピスタチオ味'' にガッカリさせられてきた私にとって、あそこのピスタチオは本物と言っても過言ではない。

私が食べる頃には出来たてのワッフルコーンはすっかりしなびていたけど。

まぁたまには嫌な事を自らリマインドさせる日があっても良いだろう。

さてと、私は今から食後のハーゲンダッツを頂くとするか。

え?フタを舐めるのかって?

当たり前だろ。

私は野蛮だ。





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