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セカンドブランドを立ち上げるまで

山廃未完成の「その先」

昨年Noteを新しく始め、今まで行ってきた白麹の取り組みや、山廃の取り組みについて書かせていただきました。「フクツカサ、山廃仕込み、未完成。」という商品名で発売した初めて仕込んだ山廃のお酒は、初年度という事もあり、話題性も高く多くの方々から高評価を頂き無事に完売。本当にありがとうございます。

「フクツカサ、山廃仕込み、未完成。」
元々この商品を発売する前から、セカンドブランドを立ち上げるというプロジェクトがあり、そのプロトタイプとして市場の開拓や社内の仕組みを整える目的を持ったのがこの商品でした。ここには私が今まで行ってきたことのある商品開発よりも壮大な、【ブランドの立ち上げ】というミッションがあり、デザインをお願いした株式会社WAKKAの小野寺さんに、未来の予測が困難なVUCA(ヴーカ)時代においてこれから先100年後まで残る酒蔵をという、私の考える方向性を説明、共感いただきプロジェクトがスタートしています。

プロトタイプとして「PRの要素を持たせた商品に」という事から商品名には経過途中であり、これから先があるような意味合いを含めた「未完成」を採用。デザインもあえてシンプルで先入観を与えないデザインに仕上げていただきました。

「フクツカサ、山廃仕込み、未完成。」原料米:吟風

大きな壁

 この時、既にブランドネームの候補も上がっており、【未完成】はそのブランド名につながるデザインにしてありました。ところが、【未完成】が完売後、セカンドブランドのデザインに取り掛かろうとした矢先に1つの問題が出てきます。それが商標です。福司に並ぶブランドを目指すのであれば、商標をとるべきであろうという話がになり、弁理士に商標登録の問い合わせをしたところ、「この候補のネーミングでは通過は難しい」という回答。これにより白紙へと戻ったのです。

 その後、ブランドネームを決めるにあたり、この「商標」の壁は大きく、スケジュールが三か月も遅れる事態となりました。音の響きや意味合い、ストーリー性などを踏まえて考えなくてはいけなく、商品の名前を考えるよりもさらに縛りが大きいため、今までで最も苦しい「ネーミング考案」期間となったのです。(まさかここまで苦労するとは思っていなかった。)

 なんとか年を越す前までには確定しておきたい。その裏には1月から始まる大吟醸酒の仕込みへ集中するという大きな任務があったのです。私の本業は酒を造ること。ブランディングに頭をとられていては本末転倒になってしまいます。
 考えられる言葉の候補は、すでに商標登録されているか、同音の言葉の登録がされており難しく、造語か文字数を増やす選択をすることにしました。熟考した結果、数種類の候補の中から、商標登録の可能性がある候補2つに絞り込みました。最後はどこにこだわり、何をこの名前に託すか。
最後の決め手にしたところをお話します。

蔵の壁

こだわり

私がブランド名を選考するに大事にしたことは下の4つです。
① 流行りすたりがないことば
② 優しい漢字を使う
③ ファーストブランドとのつながりのある事
④ 北海道や地域とのかかわりがある事

  • 昔から普通に使われている言葉や日常的に使う文字は、時がたっても古臭さが少ないように感じています。例えば「壱・弐・参」よりも「一、二、三」の方が日常的に親しみがあり、小学生でも意味が通じる。こういう言葉で作った方が視覚的にも優しいかなと思います。

  • 優しい漢字というのは難しい漢字ではなく、小学生で習う漢字で意味も分かりやすいものをという意味です。見慣れない文字のラベルを多く見ますが、その商品の想いや意味は調べなくてはわかりません。なんとなく意味が想像できそうな、ブランドの意味する世界観を誰もが想像できる方が優しいのではないかと考えました。

  • ファーストブランドとの繋がりは、会社として、商品として根源を忘れないようにという想いからです。自分たちが死んだ後も残るとしたら、そこに創業当時からの想いを結びつけておく必要があると思いました。

  • 北海道や地域との繋がりも、根源に近いものがありますが、これからの時代において地域性を大事にすることが強みとなると考えています。新たなブランドがここで生まれ、ここで育った意味を持たせる必要はあるだろうと思います。

 これらが私がセカンドブランドのネーミングでこだわった(大切にした)部分です。どこかに北海道らしさや、繋がり、この土地の物語を入れたかった!それがここで醸し外に向けて発信する意味ではなかろうか?

ブランド名の次

 やっと超えたネーミングの商標登録。これが大きな山場だったことは間違いない。ただの後も初めての経験が続く。今まで自分で開発してきた商品は自分でラベル作りをしてきました。(おかげで素人ながらソフトを使えるようにまでなった)しかし、今回はそんな素人のお粗末ラベルでは乗り切れない!ここで株式会社WAKKAの小野寺さんの出番だ。

 デザインの前にすべきこととして私の考えや想いをデザイナーに伝える必要がある。もちろんその想いは消費者の皆さんにも伝えたい。開発からネーミングの選考、私の想いは相当量の文章としてワードに打ち込まれているが、そのすべてを一言で表すと?と聞かれたら出てこない。
 想いは腐るほど持っている。その腐るだけの想いを一言で表せるはずがない。このnoteを読んでいてもお気づきだろう、思いが熱く長いのだ(笑)
そこで手を差し伸べてくれたのが函館でローカルメディア「IN&OUT(ハコダテとヒト)」の運営をしているライターの阿部さんだ。

 初めてお会いしたが、同じ世代でかなり話しやすく、福司が飲まれているその土地の空気を吸い、その歴史と街並みを感じたいとわざわざくしろまで足を運んでくれた。もうそれだけで信用できる(笑)函館から釧路は車だと8時間以上かかる。同じ北海道とは思えない距離・・・。直線距離では300km、車ではその倍の600km近くの距離があり6時間はかかる。
 そんな阿部さんに想いを伝える。製造部のメンバーとも話をして働いている人の言葉や想いも感じ取ってくれた。一緒に酒を飲みかわし、マチの店や人とも交流し、商品だけではなく街そのものを感じ取り、私の言葉を一言にまとめてくれた。

キャッチコピー

「仕込んでいるのは、100年先を思う地酒。」

 作っていただいたキャッチコピーには私たちの根源である「地酒」の文字が使われていた。そしてそのキャッチコピーを支えるボディーコピーがある。そのボディーコピーは私が長文でしか語れなかった想いの全てを入れてくれていると読んでいて思った。プロの力は偉大だ。

私たちの想い(ボディーコピー)

釧路で酒造りを始めて104年。これまで福司酒造は、釧路で唯一の酒蔵として地域の方々と共に歩みを進めてきました。

地酒は土地の風土と共にあり、人々の暮らしに寄り添うものだと思います。 だから、地酒を造ることは、飲む人の気持ちや時代の変化、そして地域の未来を考えることでもあるのです。

この先も釧路で酒造りを続けていくために、我々が今やるべきことは何なのか。 それは進化する北海道の食文化に相応しい地酒の在り方を追求し、地域の可能性を切り拓いていくことだと考えるようになりました。

従来の日本酒のイメージにとらわれることなく、柔軟な発想と技術で北海道ならではの地酒を造る。 次世代を担う造り手と、土地に根ざした酒の価値を育て、世界中から人がやって来るような地域を目指す。 そんなチャレンジの場として、福司酒造のセカンドラインとなるブランドを立ち上げます。

仕込んでいるのは、100年先を想う地酒。 飲む人、造る人、そして地域にとっても、新たな希望となるような取り組みにご期待ください。

 キャッチコピーとボディーコピーが出来上がり、ここからラベルの本格的な政策作業に入る。デザイナーに頼んでいたのはラベルのデザインの他、シンボルマークの作成だ。
 日本酒には銘柄の文字をロゴマークに使う蔵とシンボルマークを掲げる銘柄がる。ファーストブランドは前者で福司のひげ文字をロゴのマークとして使用している。この文字をロゴマークと使用すると読み方がわからないと認知度が下がるのではないかと感じている。例えば「男山」は読みやすいが全国に何社かある男山さんのどこの男山か?と困惑することはないだろうか?
福司の場合はロゴの文字自体読めなかった(私は・・・)こういった問題が気になっており、視覚的に分かりやすいシンボルマークの作成をお願いした。

 マークの作成の目的は大きく分けて対外的なものと対内的なものの2つ。
対外的なものはブランドの視覚的認知を上げること。対内は仕事に対するプライドを醸成することです。新たなブランドの発展と共に自分たちのお酒に対しての評価を誇りにしてほしい。

「仕込んでいる」とは?

「仕込んでいるのは 100年先を想う地酒。」がキャッチコピーですが、ここでいう【仕込んでいる】はお酒の話だけではありません。

仕込みとは、①下ごしらえや準備の意味②教え込むことや教育の意味があります。私たちのキャッチコピーに含まれているのもどちらの意味も含まれています。100年先まで続くために造り手を育てていく、これもある意味人材を育てるという【仕込み】なのです。

私たちのキャッチコピーは、今造っている酒が「100年先を思う地酒はこうでしょ!」という事ではなく、100年先を地酒を思いながら考え、日々作っていくという意味合いなのです。

私たちの蔵の仕込み風景

新しいブランドが立ち上がりました。詳しくはプレスリリースをご覧ください。次回はそのブランドの想いやストーリーをお話いたします。


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