今見ている景色はどこに繋がっている。第二話〜小学校高学年〜
『On your mark Set』
バンッ!!!
鳴り響くスターターピストルの音とともに
スタートブロックを勢いよく蹴り
ゴールに向かって走り抜ける。
『ハァハァハァ・・・』
息を整える間もなく再びスタート地点に戻る。
すると聞こえてくる陸上部顧問、秋山先生の怒鳴り声。
『走ってもどる!』
100m走✖︎10本。
このメニューは、フルコースの最後に出てくるデザートの様なものだが、決して甘くはない。
時にはゲボを吐く事だってあるぐらいだ。
『あと3本!よっしゃぁー頑張るぞー!
ファイト!!』
声を掛け合う部員達。
ヘトヘトになりながらも
何とか今日もデザートを完食し家路につく。
もちろん、家までの道のりは
練習のフィールド。
ランドセルの肩の部分を両手で掴んで
とにかく、ダッシュ、ダッシュ、ダッシュ!
息を切らしながら家路に着くと
迎えてくれるペットの雑種犬、ポコ。
幼稚園に通っている時からカギっ子だった僕は
もちろん、小学生なってもカギっ子だ。
手から伝わる鍵の冷たい金属。
『ただいま』
誰もいない部屋。
しーんと静まり返った空間。
まるで、この世に僕しかいないような感覚は、この頃から感じるようになっていた。
ランドセルを置いて外にいるポコの所へ向かう。
そして、犬小屋に体を押し込めてポコと2人
両親の帰りを待つ。
オレンジ色の空が暗くなる頃
犬小屋を照らす車のヘッドライト。
『ポコ、帰ってきた』
あぁ、僕はこの世に1人じゃなかったんだ!
そう思える瞬間だった。
両親が帰ってきて
父親がお酒を飲み、酔いだした頃
それは始まる・・・。
To Be Continued
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?