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大林宣彦監督『転校生』(1982/日)の映画パンフレットから、「原作者・山中 恒氏の評価」を引用 

「松竹映画版パンフ」掲載の山中 恒(やまなか・ひさし/1931-)氏の寄稿。


《_この原作を映画化させてほしいと森岡プロデューサーが私のところへ来たとき、私は、なにかの間違いではないかと思った。たまたま、私は家内の入院そして死亡という緊急事態にあったこともあり、半ば投げやりにそれを承知し、森岡さんに下駄をあずけた形になったが、一段落したあとで、かなり不安になった。_というのは、この『おれがあいつであいつがおれで』という作品は、私の一連のユーモア小説の中では『あばれはっちゃく』(読売新聞社刊)などの映像的なものと違って、いわゆる心理葛藤を中心に据えた、きわめて観念的な小説で、あまり映像的ではないからである。もちろん、児童読物のユーモアものとしては、私なりの思いをふんだんにたたき込んだ作品であるという自負のようなものはあったし、戦後の児童読物のユーモアもののジャンルでは最高水準を示す作品であろうとも思っていた。ただし、これは私が勝手にそう思っているだけで、日本の児童文学界は、まじめで上品な人たちが多いから、こんなものには、はなにひっかけない。_だが、これを映画にするとなると、どういうことになるのか、皆目、見当がつかなかった。_やがてシナリオの準備稿が手もとに届き、脚本家の剣持亘さんに会い、決定稿ができ、尾道でのロケ現場をのぞき、ほんのちょっぴりエキストラ出演しても、その半信半疑の状態は完全に解消はしなかった。ロケ先で大林宣彦監督に「すばらしい原作をもらいまして……」と挨拶され、「本当はこの人、おれをからかってるんじゃねえのかな?」と思ったりもした。しかし大林さんの人柄からも、そんなことをする人じゃない、第一、たくさんの金をかけてまで、わけのわからないものを作るはずもないと思った。_映画が完成したとき、私の熱烈なファンのひとりにこの話をしたら、「大林さんて、よっぽどのアホか、天才ね」といった。私はそれを見きわめるために、一見しおらしく、野次馬根性を秘めて、試写を見た。まぎれもなく、大林宣彦は天才であった。_確かに映画『転校生』は原作と肌合いの違うものであったが、心情的にはみごとに「愛」を描いていた。試写が終ったあと、私は顔をあげられなかった。涙が出てとまらないのである。「ああ、これなら、エキストラじゃなくて、ちゃんと役とセリフをもらって出演すりゃよかった」というくやし涙まで、おまけについた。大林さんみたいな人がいる限り、日本の映画もすてたものじゃない、できれば、また彼によって映画化してもらえるようなユーモア小説を書きたいと思った。》


■私の感想■
 ⇒『転校生』は、水野晴郎(みずの・はるお/1931-2008)が解説するテレビ『水曜ロードショー』で10代前半の時に観て凄く感動した。特に有名なラスト。そして数年後に『水曜ロードショー』で放送した時に再見して気付いたのが「初見時の感動を求めて再見しても〈初見時の感動〉を得ることはできない」という事実だった。主演が小林聡美(1965-)と尾美としのり(1965-)で、小林聡美の裸が現在では放送しにくいのか? 10代の時に観たきりですが、スケベな気持ちというよりは「見てはいけないものを見た」ような気まずさを感じた記憶があるけれど。家族と観ていたからかな?


===「映画」関連情報と「原作」小説===




★映画『転校生』の評価



※「海外での評価」が「ほぼ無い(公開されてない?)」のは、事情に疎いけれど、やはり撮影当時16歳?の少女の上半身のヌードがあるからだろうか。



★二種類の映画パンフレット


所有する「松竹映画版」のパンフレット
https://ameblo.jp/cine-ma/entry-11408318652.html
未所有の「ATG版」パンフレット。「松竹版」との異同は不明
https://order.mandarake.co.jp/order/detailPage/item?itemCode=1061900618



★「DVD」と「VHS」のジャケット写真


DVDのジャケット写真

https://order.mandarake.co.jp/order/detailPage/item?itemCode=1220753637


VHSビデオのジャケット写真

https://www.buyuru.com/item_963821_1.html
https://www.buyuru.com/item_1054195_1.html



★原作小説『おれがあいつであいつがおれで』(1980年)



書影

https://www.amazon.co.jp/dp/401069405X/


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