阿部美里|にじまる堂

棚主デビュー/ときどき一箱古本市出店/🐩🐈‍⬛🌈へ旅立ったけど永遠のしもべ/人生が珍道中

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マガジン

最近の記事

冬支度

もたつくと厄介なことになるのは経験済だ。 そうならないようにスッと引っ張りサッと切る。 後はふわりとかけるだけ。なんだけどなぁ……。 立冬を過ぎたのに千葉はあまり寒くない。 去年の今頃はファンヒーターをつけていたが、まだ押入に眠ったままだ。 そんなにあたたまりたいわけではないのだけど、 白か赤か悩んで、白いシチューにした。 焦げないようにかき混ぜながら、あの子の顔を思い浮かべる。 シチューを盛った皿の上には、あちこち折り重なった食品用のラップフィルム。こぼれはしないけど、

    • 秋の夕暮れ…

      今日は散々だった。 このところ職場も家庭もハプニングの連続で疲れきっていた。 スーパーに入った途端、失恋とワンセットの思い出の曲が流れていて、 まだ何も入っていないカゴを持ったまま立ち尽くす。 なんなの。いったい。 買ってきたばかりのその袋は、それなりの重さがあり、 使いやすいように中身を容器に分ける。 今までは袋を傾けて移していたけど、加減がわからなくていつも容器の外へこぼしていた。余計なため息を増やしたくないから、スプーンを使って分けることにした。 封を切る、そっとス

      • 秋の風にのって

        やらなきゃいけないことは山ほどあるのに、『なんだか天気はいいみたいだ』なんて思っただけで窓も開けずにずっと同じ場所にいる。僅かな気力でひとつ大きく深呼吸をすると、部屋の隅で寝っ転がってるソレを手に持ちカーペットの上であぐらをかいた。 筒に巻かれた紙の端っこを爪で少しめくって、点線にそって剥がす。だけのことなのに、いつものように点線からはみ出て斜めに切れていった。 そのままどこを見るでもなく、ソレを床に押しつけて腕を伸ばしたり縮めたりを繰り返した。紙が斜めに切れたから、そこを

        • 夏の終わり

          何事もきちっとしないと気が済まない。 単行本は高さを揃えたいし、文庫本は出版社ごとに分けたい。 シャンプーなどのボトル類は口がおなじ向きになってないと嫌だし、 財布の中は、偉人の顔が整列してないと落ち着かないのだ。 持ち手のねじれを丁寧に手アイロンをかけると、会社での不愉快は少し薄れた。 手前をひとつ折り、向う側をひとつ折る。 けっこうな重さを幾度となく耐えたソレを、右から左へとキュッと折る。整えられた一直線。その右端にゴールはある。 今度は左から右へ大きく一回折る、それ

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        • 400字の物語
          5本
        • 釣りに行きたい
          1本

        記事

          思い出の場所はもうない でも確かにココにあって すこし参った

          思い出の場所はもうない でも確かにココにあって すこし参った

          トビウオの背に乗って

          トビウオの背に乗って

          たそがれエスケープ

          二十年ぶりに自転車を買った。川のほとりにオープンした、とても小さな本屋さんに行くために。 目的地までは五キロほど。余裕だと思っていたのに、こぎはじめてすぐ鈴木雅之の「違う、違う、そうじゃない」のフレーズがくりかえし脳内再生された。長い坂を下りはじめるとスピードはぐんぐん加速し、小さな車輪はわずかな段差の衝撃をダイレクトに尻に伝えてくる。乗り心地は昭和のジェットコースターのようだった。秋の気配を感じながら訪ねる予定が、とんだ誤算である。 小さな本屋さんに辿り着くと、思いのほ

          たそがれエスケープ

          春の陽射しとアジのたたき

          すりおろす手がビビっている。生姜はみるみる小さくなって、指があのギザギザに触れる寸前だった。ここまでおろす必要はないのだが、ついついどこまでいけるかと不毛なスリルを味わってしまう。 刺身にするには小さいし、丸ごと唐揚げにするには、ちと大きい。 そんな中途半端な大きさのアジを1センチほどの短冊に切って皿に盛る。細かく刻んだネギと大葉、そしてすりたての生姜。この薬味たちをたっぷりと散らせば、アジのたたきの完成だ。 ざっくり混ぜ合わせたアジのたたきを醤油につけると、脂が小皿に広

          春の陽射しとアジのたたき

          春の訪れ

          そのしずくは何度も頬を流れた。 首筋にたどり着くころには体温であたたまり不快さが増す。 すぐに拭いたいがそうもいかない。 顔を上げたままその小さな穴を確認すると、 僕はもう一度、ふかく息を整えた。 もう失敗はしたくない。こんなことに時間を費やしていたくない。 少しずつ指に力を加えながら慎重に照準を定めると、 小さな穴から透明なしずくが、溢れ落ちようとしているのが見える。 もう少し。 もう少し。 しずくを逃すまいと、大きく目を見開く。 今度こそ。 今度こそ。 そ

          花が咲いたら、じゃんけんぽん

          ご無沙汰しすぎてます。にじまるです。 もうね、やりたい事がたくさんあって、にっちもさっちもどうにもブルドッグでワォ!なので、ひとつづつ目標をクリアしてから次いってみよう! という作戦でいこうと思ったのだ。 思ったのだ! 思ってたのだが、結局アレもコレも手を出してしまって、この浮気者!とか、私とのことアソビだったのね…。とか言われて 「本気だよ。キミの事も、キミの事も」 という節操のなさ。速攻でビンタが飛んできました。痛かったです。 ウソです。 冗談はさておき、わ

          花が咲いたら、じゃんけんぽん

          猫と酔っぱらいのブルース

          『からすみ』という食べ物がある。 ボラの卵巣を塩漬けして乾燥させたもので、これをちびちび食べながら、ちびちびと一杯やるのが、のんべえの愉しみなんだそうである。 わたしは焼き鳥かじってビールを一杯飲めばスッコーーンと眠れるタイプなので、”ちびちび” と “しみじみ”を杯で語るような時の過ごしかたを知らない。 ああ、美味しそうだ。 冷酒にしようか。白ワインにしようか。 しかし私は特別な時にしかお酒を飲まない。なぜなら、めっぽう弱いのだ。 いっぽう母は大酒飲みである。酒にまつわる

          猫と酔っぱらいのブルース

          読書飛行

          本を読む人の頭の中ってどうなってるんですか? 脱線したり、温泉したり、混線したり、混浴したり、しないのですか? 風はどうですか?空もそうですか? おしえてください。まっさん! なんてことをページをめくる手を止めて考えてしまう。 進まない、わたしの読書。 【女房の尻に敷かれて……。】なんて一文が出てくると、 『このあいだブロンコビリーで斜め前の席にいた年配のご夫婦。夫の細やかな気遣いに微笑むどころか鬼の形相feat.舌打ち!に、こっそりお父さんを応援し、荒ぶるお母さんに優しく

          気の向くまま、風の吹くまま

           改札を出ると、テレビでよく見かけるスクランブル交差点。どれくらいぶりだろう渋谷に来るのは。干支ひとまわりは過ぎてるとおもう。 「自由っていったいなんだい?」 「君は思うように生きているかい?」 尾崎豊の問いに答えながら信号待ちをしていたら、ハットを被った高齢の男性が、一輪の赤い薔薇を手に持ち、首からプレートを提げて微笑んでいた。プレートには【私と結婚して下さい】と書かれていた。 いい笑顔だったから、叶うと思う。知らんけど。    用事を済ませて、気になっていた店へ向

          気の向くまま、風の吹くまま

          愛し美しき少女たち

          先日、小さいお友だちからちょっと緊張するお誘いがありました。 「小学生活最後のバスケの試合だから観に来てほしい。」と。 会場まで車だとわりとすぐ着いてしまうので、あえて電車で遠回り。 コトンコトンと揺られながら、知らない町をポツポツと歩きながら、成長をゆっくりと思い浮かべて彼女のもとへ向かうと、わたしの感傷をよそにいつもどおりのはしゃぎっぷり。拍子抜けしちゃう。 おおきくなったなぁ。 あの頃はちいさくて、かわいくて。 心配ばかりかけて、かわいくて。 だんだん生意気になって、

          愛し美しき少女たち

          私は”私をしあわせにすること”に本気になるとキメた。

          『どうしよう。ドキドキしてる。 テ、テステス、ただいまマイクのテストちゅ……(キィーン)』 「はじめまして、にじまるです。寅年です。千里往ったら帰らない!」 日記も書いたことのない私が、このnoteを始めた理由は、 自分の中の何かを外に出す練習です。 あれ? それだとなんだか、力んでしまいそう。 そうではなく、もっと自然に、吸って~吐いて~ 自分の気持ちを、自分の言葉で伝える練習です。 じゃあ家で、ちょっといい手帳かノートに綴っておけばいいじゃない? って思ったけど、

          私は”私をしあわせにすること”に本気になるとキメた。