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夏の終わり

何事もきちっとしないと気が済まない。
単行本は高さを揃えたいし、文庫本は出版社ごとに分けたい。
シャンプーなどのボトル類は口がおなじ向きになってないと嫌だし、
財布の中は、偉人の顔が整列してないと落ち着かないのだ。

持ち手のねじれを丁寧に手アイロンをかけると、会社での不愉快は少し薄れた。
手前をひとつ折り、向う側をひとつ折る。
けっこうな重さを幾度となく耐えたソレを、右から左へとキュッと折る。整えられた一直線。その右端にゴールはある。

今度は左から右へ大きく一回折る、それをまた半分に折る。
ここで不安になってきた。空気が入りすぎて形が崩れてきたのだ。
でもここで引き返すわけにはいかない。
だが勢いとは裏腹に、ゴール目前でしゅるしゅるとそれはだらしなくなった。

「エコバッグなんて適当に畳めばいいじゃないの」と母の声がする。
『適当さに慣れるとナメられるんだよ。自分に…』

ふたたび袋を広げると、まだスイカの匂いがした。



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