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【書評エッセイ】異分野掛け算が最強。

経済を学ぼうとしていて、最初にどの本を手に取ったらいいか悩んでいる方には、この本をおすすめする。

まず、このページ数で経済の基礎がすべて網羅されているのが驚きだ。

不要な部分は大胆に削ぎ落とされている。

大切な太い幹の部分については、その周辺の物語が丁寧に語られ、究極に単純化された図と共に、非常に分かりやすく説明されている。

この幹をしっかり理解していれば、後で枝葉を付けるのは簡単だろう。

インフレーション、貨幣、国際通貨、貿易などについて記載されているのはもちろんだが、仮想通貨、ブロックチェーンもカバーしていて、その解説がすこぶる分かりやすい。

私はこの本で初めて仮想通貨、ブロックチェーンの仕組みを「本当に」理解できた。

それだけでもすでに価値のある本だと思う。

そして、最後には、哲学的な領域にまで踏み込んで、「資本主義の次」について考察している。

短期的欲望が肥大化してどうにもならなくなっている状態から脱却しなければならないと説く。

ここで筆者は囲碁の石を引き合いに出して、シンプルな図で示しながら、いかに「呼吸口」を増やすか、維持するかについて解説する。

そして、「繋がる」ことで呼吸口を、外側でなくて、内側に維持することを提言する。

このあたりは、是非本を手に取って、碁石の図を見ながら、じっくり味わって頂きたい。

「おわりに」を読んで、なぜ筆者が大胆にも「枝葉」を切り捨て、「幹」にフォーカスしながら、しかし関連するエピソードをしっかり盛り込み、このページ数で全てをわかりやすく説明できたかの謎が解けた。

筆者はもともと物理屋であって、経済学部の出身ではなく、経済の現場に身を置いたことも一度もない

この本は理系の人が書いた経済学の本だったのである。

もちろん経済について学びを深めることができたというのが、この本を読んだ意義である。

一方、それ以上に、物理学者が書いた経済学の本が、経済学者が書いた経済学の本よりわかりやすかったという事実が衝撃的だった。

私は常々「例えば数学者は歌人よりいい俳句を作れるのではないか?」と思っているひねくれものである。

この本を読んで異分野の掛け算が最強だと改めて感じた。

そして、この本は私の「雑読主義」の背中も押してくれた。

引き続きあっちこっちの分野を飛び回る雑読を続け、「脳内異分野掛け算」を広げて行こうと思う😎


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