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モンペ宣言から、その後…。

私は娘にモンペ宣言した。

『母、モンスターペアレントになるわ』
そう言う母に娘は黙って頷いた。

娘の最終的な出来事は
学年での音楽発表会の練習 だった。
娘は幼稚園の頃、2年間だけ
ピアノを習っていた時期がある。
たまたま発表会の演奏楽器を選ぶ時、
木琴を希望していたのが
じゃんけんで負けて
エレクトーンになってしまった。
娘としては
少しピアノ習った事があるから大丈夫かな、と
思ったらしい。

ところが楽曲は難しかった。
学校だけの練習ではついて行けず
家にある譲り物のエレクトーンで
毎晩毎晩土日も必死で、練習していた。

その日、練習中に娘は気が付いてしまう。
自分のエレクトーンだけ
電源コードが抜かれている事を。

自分が準備した時は
しっかりコードに繋いだのに…。
そう思って彼女は先生に言った。
『先生、私のコードが外れています』


返ってきた言葉は
『うまく弾けてないので外しています』
だったそうだ。

しかも続けて
『うまく弾けもしないのに、なぜエレクトーンを選んだのですか』と…。

帰宅して、娘から聞かされた時
"冷静な自分を保てた自分"を
今も誉めたいと思う。

心の中では
『子どもらが、うまく弾けて、それが貴様の満足で、評価基準かー!』と
がっつり胸ぐら掴んでいたから。

本当は今すぐにでも
走って学校に行って
一言言わねば気が済まないくらいに
グラグラ煮えたぎっていたけれど
娘の前では冷静を演じた。

『そかそか、悔しかったね。
たくさん練習したのに勝手にコード抜くのは
辛かったよね。
上手い下手も確かにあるけれど
努力してるのは、母、よく知ってるからね』


絞り出す様に
カスカスの声で
精一杯、いつもの母のままで
娘にはそう言って
彼女の止まらない涙を拭いた。
と、同じ日にまたクラスメイトのお母さんから
似た様な相談があり
私は腹を括った。

『モンスターペアレントになる』

先ずは主幹教諭に電話をした。
全てを話して
私の考えも伝えた。
娘の音は
確かに美しい音色の妨げかも知れない。
けれど小学校の発表会は
何を発表することが主旨なのか。
娘と同じように
上手く出来ない子どもたちを外し
頑張りを認めず
結果オーライだけを披露するものか。

主幹教諭の先生は
『あれからも保護者からの連絡は絶えずあり
指導も行き届かず申し訳無い』と言う様な
事だった。

私はモンスターペアレントになる宣言をした事も告げた。
娘に戦うと話した事も。

変な話、私は宣戦布告したのだ。

『夏休み前の保護者説明会の時に
口火を切ります』と言うと
主幹教諭の先生は
『分かりました』と静かに言われた。

当日の朝、娘は登校ギリギリまで
私に聞いていた。
『本当にお母さん、先生に言うの?』

散々2人で話した事だった。
母が言う事で、さらに先生の風当たりが
強くなるかも知れないリスクも話し合った。
『それでも良いから先生に言って欲しい』
娘も10歳ながら、腹を括っていた。
『市内には他にも小学校はある。転校だって出来る』
いろいろな想いで、私は学校の門をくぐった。

説明会は淡々と過ぎていった。
4年生ともなれば
夏休みごとき珍しくも何も無い。
保護者は休み中の安全な過ごし方やら
宿題の提出やら
注意して聞いてる人はいない。
ただ出席しましたよ、の帳面消しなのだ。

説明会の時間、
本来なら子どもたちは下校しているはずだった。
しかしその日は違った。
娘は母が先生と戦う事を朝一番で
クラスメイトに告げたのだと言う。
クラスのほとんどの子たちが残り、
廊下に座って目だけドアや窓から
中の様子を伺っていた。

『以上で説明は終わりますが、質問はありませんか?』
そう聞く担任の先生。
もちろん質問も無く静まりきった中で
何もなければこれで…と先生が言いかけた時
私は手を挙げた。
『すみません。
夏休みの過ごし方ではありませんが、先生にどうしてもお話ししたい事、聞きたい事があります』と。

先生が頷いたのを確認し、私は一度立った。
自己紹介をし、椅子に座り直すと
よく通る大きな地声で口火を切った。


『先生は、子どもたちに"お前たちの事は信用信頼しないと言われたそうですが、その理由はなんでしょうか? 理由があったにせよ、教職者として子ども達への適切な声かけでは無いと私は思います。
また私の娘が、ある時、黒板に書かれた先生の字が間違えている事を指摘した際、
"人の粗探ししか出来ない人はロクな人にならないと言われたそうですが、その発言は娘の人格を著しく傷付けるものでした。
先生はその事にお気付きでしょうか。
また、音楽発表会のコードを、下手くそだからと本人に断りもなく勝手に外す事も、どう言う意図でしょうか?
正直に申し上げますが、私には全く先生の指導内容が理解できません。
先生は我が娘を含め、クラスの子ども達にどんなお気持ちや考えで接しておられるのか説明して頂けますか』

一瞬、教室は凍った様にしーんとなりました。
30人くらいいるはずなのに
カタンとも
息でさえ何も音がなくなりました。

先生はしどろもどろになりながら
『私の言葉が足りずすみません』を繰り返されるばかりでした。

『私がお聞きしたいのは、すみませんではなく…』と言いかけた時です。

教室の前の方にいたお母さんが立ち上がり
『うちの息子が家の鍵を無くした時、先生に相談したら"お前はいつもだらしないから仕方ない"と探してくれなかったそうですね』と
怒った様に言われました。

また違うお母さんが
『うちの子が提出したプリントが無いと言って、早く提出しなさいと怒ったそうですが、息子は確かに提出しました。嘘つき呼ばわりされたと家で泣いてました』と立ち上がって言われました。

またあるお母さんは
『娘の体操服が無くなった時、いじめかどうか相談しましたけど、学校で全く取り上げて貰えなかったそうですね』と悔しそうに言われました。

私が口火を切りましたが
次から次へと先生への問いかけが
止まりませんでした。

終始、先生はしどろもどろで
すいませんを繰り返されるだけ。

私はちらりと廊下を見ると
目を輝かせて見ている娘や
他の子ども達が、そこに居ました。

結局、担任の先生から
すいません以外の言葉はなく
説明会は終了しました。

その後、保護者が残り
今まで子ども達が掛けられた酷い言葉など
話し合い
今後も改善が無ければ、改めて学校側に
意見を出す事に決めました。

廊下で待っていた娘の開口一番は
『お母さん、本当にやっちゃったね』でした。

『母はやるって言ったらやるからねー』
そう言うと、娘は笑ってました。

その足で私は職員室へ行き
主幹教諭の先生に、今日のお礼を言いました。
『意見を出す機会を許して頂けてありがとうございます。問題を公にしてすみません』
と言うと
『クレームを言われる事はありますが、お礼や謝罪を言われる事はなかなかありません』と
逆に恐縮されました。
そして今後は学校内だけでなく
外部からも指導を入れていく事を約束して下さいました。


夏休み後、娘もクラスメイトも
180℃変わりました。
先生のせいで
個人個人が強くなっただけでなく
クラスの団結がさらに強くなったのです。
言われて泣くだけだった娘は
『今日も黒板、誤字だったわ。
国語力私たちが逆についちゃうわ』
とあっけらかんと話す様になりました。
クラスメイトが先生から、
理不尽な事を言われている時
クラス中で庇う言葉が飛び交う様になったそうです。
『〇〇さんは、そうじゃありません』と。


また週一回、担任の先生不在で
主幹教諭の先生が学活を開き
『楽しいクラスにする為には』など
みんなで話し合う場を設けてくださいました。

私のモンスターペアレント活動は
この1度きりです。

しかしこの事で
娘は何があっても母は一緒に戦ってくれると
分かったのか
怖がらなくなりました。
相変わらず適切で無い言葉は
残念ながらありましたが
スルー対応が出来るようになりました。
私は…と言うと
この一件で、授業参観やらに行くと
子ども達からの注目度が上がりました。
『あ、〇〇ちゃんのお母さんだ』と笑笑

また、お母さん達から相談を受ける事が
さらに増えました。

前記事にも書きましたが
私の子育ては常に自問自答の繰り返しです。

このモンペになった事も
よかったのか、はたまた
別の方法は無かったのかと考えていました。
当時の職場が教育委員会絡みでしたので
例えば、学校全体的な問題として
個人でなく
組織で動いてもらった方が良かったのか…。
個人的に一対一で話した方が良かったのか
考えればキリがありませんでした。


しばらく自問自答していたのですが
先生が原因で学校に行けなくなっていた友達が
また学校に通い始めたと聞き
少しモンペであった自分を認める事が
出来ました。
また学校の事を一切話さず
こんな問題があるなんて知らなかった、と言う
お母さんからは
『家でイライラしていた理由かも知れないと、何となく納得する事がある』と言われて
『話してくれなかったら分からなかった』と
言われました。


1番は、娘が
『お母さんはいつも味方だから安心する』と
言われた事で重荷を下ろす事が出来ました。
クラスメイトからは
『お母さん、スゲェな』と言われたそうですが
娘は笑い飛ばしたそうです(*´꒳`*)笑


モンスターペアレント活動も
意味があったなと、今は思えます。

子ども達は先生を選べません。
もちろん親も選べないのですが、
私は自問自答しながらも
子どもの人格や
個性、頑張り、いろんな凸凹を非難する人に対しては毅然とした態度で
これからもぶつかると思います。

それが子どもを甘やかしている、とか
俗に言う"モンスターペアレント"
"クレーマー"だと言われても
人として大切な"核"の部分は守りたい
そう思うし
守れる母で居たいと思います。

でも正直言って
モンスターペアレント活動は
もうしたくないかなぁ。
良い先生もたくさん世の中には
いらっしゃるから
出番が無い事が望ましいもん。
しかも、娘自身も
この経験を通しタフになりました。
5年生からは児童運営委員会に入り
積極的に挨拶運動や
全校集会の司会など
校内での取り組みに
2年間関わってきました。



あの時の音楽発表会ですが、
結局、コードは外されませんでしたが
両手で弾く事は難しいとして
却下されました。
どう頑張っても終盤で
少しテンポが遅れてしまうからです。
娘は当日まで両手で弾く事を目指し
頑張っていましたが
演奏は片手でした。

彼女は本当に悔しそうでした。
発表後も笑顔は全くありませんでした。

私は仕事を途中で抜けて見に行っていたのですが、彼女の悔しさや怒り、自分への不甲斐なさが彼女全体を包んでいました。

仕事中、ずっと
帰宅して彼女になんて声をかけようかと
考えていました。
いつものように車をガレージに停めると
娘が玄関を開けて待っててくれました。

『今日、見に行ったよー』と言うと
娘は『うん、直ぐに分かったよ』と。
私はそれだけで言葉に詰まってしまい
涙目になってしまいました。
『私より先に泣くかねぇ』と
娘は呆れた様に笑って
『片手ならノーミスで完璧やったよ』と
抱きついて笑いました。

親バカ全開ですが
娘は頑張っても頑張っても実らない努力がある事を知っていました。
母の私が言わなくても
"そんな事もある"と
既に乗り越えていたのです。


丁寧で真面目な保護者から
一回キリとは言えモンペになった私。
その後はPTAでしっかり奉仕活動してます✨
基本的には先生たちをリスペクトしてます。
( ´ ▽ ` )!!

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