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いつもの生活

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800字程度〜2000字ほどのショートエッセイ。 心の内側の覚えておきたい宝物のような瞬間を書いています。 誰かの心の内側に共鳴できますように。
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ラップの中身は

ラップの中身は

旦那は、ハンバーグが好きだ。
今日の夕飯のリクエストを聞くと、7割くらいの確率で
「ハンバーグ」と言う気がする。

一方の私はというと、
ハンバーグはまあ普通くらいに好きで、
ハンバーグを作るのは嫌いである。

・牛豚合いびき肉をこねこねするのは手が冷たい。
・こね終わったあとに手が油まみれになって、洗っても洗っても取れないのが嫌。
・分量通り作っているはずなのに、なぜか私のハンバーグはつなぎが緩

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我が家の食卓

我が家の食卓

一緒に住み始めた当初、彼に
「俺は毎日牛丼でも生きていける、それくらい食にこだわりがない。」

そう言われて、一緒に住んでいけるだろうかと不安になった。
その言葉は私が毎日ご飯をつくるのをねぎらう、彼なりの優しさだったのだが、
「え、じゃあ私の作るご飯ってなんなの?」
という密やかな不信感も私に植え付けた。

一緒に住み始めてすぐということもあって、
彼にはおいしくて健康なものをお腹いっぱい食べて

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「花は買わない。理由は枯れるから。」そう思っていた私が花を買う時のルール

「花は買わない。理由は枯れるから。」そう思っていた私が花を買う時のルール

花は買わない。枯れるから。
私はもっぱら、「そういう」派閥だった。

花屋を見かけると嬉しくなるし、
リボンがかかったブーケを見ると、
誰でもなく、自分に買ってあげたくなってしまったりする。

花束を持った男性を見ると意中の人に会いに行くのかな、と思うし、
花束の入った袋を下げた大学生に遭遇すると誰かの門出なのだろうとなんだかにっこりしてしまう、私。

花は好きだ。わくわくする。

でも自分に花は

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思い出の循環

思い出の循環

鈴の音。お経。今日も暑い。
今日は新しいお隣さんの地鎮祭。

「伊藤さんが、老人ホームに入った。」
そう聞いた時、びっくりした。

伊藤さんは、私たち家族のお隣さんだった。
物腰柔らかなおばあちゃんで、足腰もしっかりしていたから
90歳を超えているなんて知らなかった。

「もう90だから、いつあちらに行ってもおかしくないでしょう?」
あちらにはおじいちゃんもいるし怖くはないよ、と続けたあとで
「最

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「クリエイターになりたい。なりたすぎるよ」

「クリエイターになりたい。なりたすぎるよ」

「クリエイターになりたい。なりたすぎるよ」

この言葉にハートを押さざるえなかった。
普通の言葉なのに、不思議な引力を持っていたその人の言葉。

クリエイターになりたい。なりたすぎるよ。

就職活動の時に、私はそう思っていた。
けれども、ある程度の手堅さを求めてしまう性格の私が、
「クリエイター」を目指せるわけもなく。

普通の給料をもらいながら、どこかでクリエイターになれそうな会社に
「クリエイ

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ダイヤモンド

ダイヤモンド

友達に、ダイヤモンドを買った。

ダイヤモンドなんぞ、自分にも人にも、一生買わないと思っていた。
思い浮かべるダイヤモンドは何十カラットもある、ウン十万円の代物であったこともあるが、それ以上に私はありきたりが嫌いなのだ。
芸のあるプレゼントをしたい。

だが、ふらっと立ち寄ったアクセサリーショップでそのピアスを見た時、目が離せなくなった。
今ならお安くお買い求めいただけますよ、というセールストーク

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