囲炉裏

サビ猫と暮らす視野欠損率99%の視覚障害者。セラピスト育成を生業としており、残っている…

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サビ猫と暮らす視野欠損率99%の視覚障害者。セラピスト育成を生業としており、残っている視力で書籍を読み漁りながらヒトについて探求しています。真面目にふざけながら、さらっと読めて視点を変える‘追い風エッセイ’を中心に、詩・訓・論などを交え、清濁様々に表現していきます。

最近の記事

信頼はなぜ裏切られるのか

今年読んだ本の中で良かったなと思うのが、「信頼はなぜ裏切られるのか」です。2015年発売なのでやや古いのですが、最近読み終えて、面白かったですね。いろいろ腑に落ちました。 タイトル通り、信頼や裏切りについて、様々な実験結果をもとに解明し、論じている内容です。 別に誰かに裏切られてこの本に手を出したわけではありません。単純に興味です。ヒトにとって信頼とはどういうものなのかという興味。 それに、人がどういう状況で裏切りを発動させるのかが分かれば、それを避ければ人を裏切らずに

    • 二人ゆったり 浸り合ったり

      1番好きな言葉をあげろと言われたら迷います。そんな質問にビシッと答えられる人は軸があるようで素敵だなと思いますが。 そんな僕ですが、「浸る」という言葉は好きな言葉の1つです。それも結構上位にくる言葉。 「浸かる(つかる)」ではなく「浸る(ひたる)」です。 お風呂に浸かる、とはいいますが、お風呂に浸るとは言いません。 思い出に浸る、とはいいますが、思い出に浸かるとは言いません。 「浸る」が持つ、じんわりと染み入る感じ。馴染む感じ。無理なく、ほどよく、全身で、そんな心地

      • 挨拶くらいと言っちゃダメ

        仕事で出張に行くことがあります。白い杖をついて、新幹線に乗って。 出張は苦手です。不慣れな場所は気を張るので疲れるんですよね。 不慣れなエリアでの乗り換えは余裕がないと不安です。なんせ急ぐことができないので。だから段取りから実行までが普通以上に難しく感じます。 トイレにしてもそう。 トイレに行きたいなと思っても人よりも探すのに時間がかかります。案内表示もなかなか見つけられないし、トイレを見つけたと思っても、男子女子のマークがなかなか視野に入らずキョロキョロすることも少

        • 人の日記が開いていたら

          僕は視野の99%を失っています。向い合せの人の眉間に視線をおくと、相手がピアスをしているのかとか、何色の服をきているのかも見えていないくらいの狭さです。 見えている部分と見えていない部分の境界はすごく曖昧で、外側が黒や闇としてクッキリ「見えていない」と認識できるようなものではありません。何も認識されていないのです。よく簡単に、サランラップの芯を覗いているようなものと説明することもありますが、それは正確ではありません。 そんな僕ですが、もっと見えていた昔に比べて、人の目を見

        信頼はなぜ裏切られるのか

          その温もりに用がある

          慣れない土地で、電車の乗り換えのために白杖を手に歩いていた時のことです。僕は進むべき方向が分からなくなり、一人立ち往生していました。 その時そばで、 「Tasuketai」 と男性の声がしました。 声の方に目をやると、そこにいたのは中年のカナダ人男性(のちに判明)でした。 「Doko?Tasukeru」と彼。 「サンキュー」と答え、「◯◯ステーション」と伝えてみます。 「◯◯?」 どうやら彼はその駅を知らない様子。そして日本語はほとんど話せない様子。 慣れな

          その温もりに用がある

          選択

          選ぶのが苦手なんです。 コンビニにしろ、量販店にしろ、今朝の服装にしろ。何かの中から何かを選ぶのが億劫です。 スティーブ・ジョブズたちが毎日同じ服を着ていたことにすごく共感出来ます。もちろん僕は彼らほどの重要な選択を繰り返すわけではありませんが、選択がエネルギーを奪うということについては彼以上に実感しているだろうなということです。 例えば、みなさんが服屋さんにいったとして、ざっと見回した中でめぼしいところにフォーカスしていくと思いますが、僕にはそのざっと見ができないんで

          加湿器の雨

          冬の訪れとともに、乾燥を感じる日が増えてきた。 僕はそんなに乾燥に弱いタイプではないけど、それでも加湿器があればなんとなく安心する、くらいの人間。 加湿器の蒸気を眺めていると潤いという言葉が連想され、潤いという言葉はやはり心地よいものだ。 立ち上がる蒸気はすぐに見えなくなるけれど、それでもそれが見えているかのように、部屋が潤いで満たされる想像に浸る。 それは窓の僅かな隙間から溢れ出て、 空を上がり、 やがて雲、 そして雨になる。 蒸発して、 雲になり、 雨になる。

          加湿器の雨

          不満×不満=満足

          僕の住んでいるマンションの前には幅3.5mほどの歩道があり、 そこの歩道の端の方(建物より)には黄色い点字ブロックが並んでいるのですが。 残念ながらその点字ブロックの上には、しょっちゅう同じ車が駐車されているのです。 大きな不便はありませんが、不満には思います。 そして心のなかで思うのです。 「点字ブロックの上に駐車するなんてなんて奴だ」 そんな日々を繰り返していたある日、別の車が歩道の”ど真ん中”に車を止めていました。歩道のど真ん中とは、あまり記憶にない光景です。

          不満×不満=満足

          人が向き合い 人が剥き合う 男女が向き合い 男女が剥き合う 剥く(むく) (中身とは違った状態の)薄い表面を本体から離して中身が現われるようにする。[新明解国語辞典より]

          人が向き合い 人が剥き合う 男女が向き合い 男女が剥き合う 剥く(むく) (中身とは違った状態の)薄い表面を本体から離して中身が現われるようにする。[新明解国語辞典より]

          けむくじゃらの嘘

          ふと「人類最初の嘘はなんだろう」ってことが気になって。 調べてみると旧約聖書でカインとアベルって兄弟を題材に人類最初の嘘が語られてるみたいだけど、そんなので納得できるわけもなく。 知能の違い、言葉の違い、様々な違いがあるのは承知の上て、というか無視をして、類人猿的なものがある程度の言葉っぽいものを使って会話をしながら生活している状況を想像。 自分なりに想像して辿り着いた人類最初の嘘は、 「食べてないよ」 になった。 まぁ、いろいろ迷ったけど単純に時代背景を想像すると

          けむくじゃらの嘘

          ライフ±ハンデ

          ハンディキャップって説明できますか? 僕自身、視覚障害を持ちながらも、なんとなく曖昧だったもんで調べてみました。 「三省堂 大辞林 第三版」によると、 ハンディキャップ [4] 【handicap】 ①不利な条件。また,それによって生じる不利益。ハンデ。 「 -を乗り越える」 ②機能障害(impairment),能力障害(disability)に対し,社会的不利。 ③競技や勝負事などで,優劣を平均するために,強い者に加える負担。ハンデ。 ④ゴルフにおいて,ゴルファーの技量

          ライフ±ハンデ

          傘を投げ捨てろ

          雨に濡れないように傘を差して歩く。なるべく濡れないように傘の角度をいじりながら。 子供の頃は今より雨に強かったような、、、。濡れることなんか怖がらず、水溜りにだって飛び込んでたり、なんなら傘が邪魔だったり。 あの頃に比べると、今ではずいぶん傘を差すのがうまくなった、なんて。 ずぶ濡れになることもなくなったし。 だけど、濡れるのを気にして窮屈になるのは事実なわけで。 そういえば、人付き合いにも天気がある。 しかもけっこう雨が降る。 今ではずいぶん傘を差すのがうまくなった

          傘を投げ捨てろ

          何か違う。何が違う?

          僕は丼物が大好きだ。カツ丼も好きだし、牛丼も、天丼も、海鮮丼も大好きだ。 どれか1つだけ選べと言われても選べない。 ルールだから選べと言うなら、カツ丼を選ぼう。だけど他の丼物への愛が消せるわけじゃない。ルールだからで感情が消えるわけじゃない。分かるでしょ?便宜上1つ選んだだけさ。 僕は女性が大好きだ、カツ子も好きだし、牛子も、天子も、海鮮子も大好きだ。 だれか1人だけ選べと言われても選べない。 ルールだから選べと言うなら、カツ子を選ぼう。だけど他の女性への愛が消せるわけじゃ

          何か違う。何が違う?

          あいまいないまいきいそいでいないかい

          例えば買い物の最中に電話がかかってきたら、 「今何しているの?」 「今?買い物」 みたいになるわけで。 例えば買い物の最中に久しぶりな人に出会ったら、 「今何しいるの?」 「今?ざっくり言えば健康業界かな」 みたいになるわけで。 ”今の幅”は違うけど、どちらも「今」に違いなく、相手によって変わるけど、どちらも「今」に違いない。 もし生まれ変わりがあったとして、そこに魂同士の会話みたいなものがあったとしたら、 「今、何してるの?」 「今?人間」 みたいに

          あいまいないまいきいそいでいないかい

          知らなきゃよかった

          僕は自画像を描いた 自画像を知っていたから 僕は彼女にキスをした キスを知っていたから 僕は自殺した 自殺を知っていたから もし僕が自画像を知らなかったら 僕は自画像を描いたのかな もし僕がキスを知らなかったら 僕は彼女にキスしたのかな もし僕が自殺を知らなかったら 知らなきゃよかった 知らなきゃよかった ☆PEACE☆

          知らなきゃよかった

          目玉焼き

          大きな学びをくれる本に出会うと、「もっと早くに読みたかった」と思うことがあります。 小説でも人文系でも古典でもなんでも。 まあ、「でも10年後に出会うよりは、今出会えたんだから良しとしよう」とすぐ切り替えるんですが。 反対に、早くに知ってしまったってことを残念に思うこともありまして。 その一つが『目玉焼き』 目玉焼きを初めて知ったのがいつなんて記憶にないですが、大人になってから知りたかったモノのひとつです。 「目玉焼き食べる?」 「えっ!?目玉焼き!?」 「う

          目玉焼き